2020年ブレイク必至と目される大阪発5人組ロックバンド、Novelbrightのボーカル、竹中雄大

2020年の大ブレイクを最も期待されているミュージシャンが、大阪発5人組ロックバンド、Novelbright(以下、ノーベルブライト)だ。

昨年上半期までは無名のバンドだったにもかかわらず、昨秋にはSpotifyバイラルチャート(ストリーミング再生数やリスナーのシェア数を加味したランキング)で8週1位を獲得し、年始の『バズリズム02』(日本テレビ系)では2020年にブレイクするアーティストの1位に選ばれた(ちなみに昨年の1位は昨年末に、『NHK紅白歌合戦』に出場したKing Gnu[キングヌー])。

その躍進の起爆剤となったのは、SNS上で拡散された路上ライブの動画だった。

今まさにメジャーシーンに駆け上がろうと拠点を大阪から東京に移した彼ら。上京直後のボーカル・竹中雄大(ゆうだい)にその胸中と、世界チャンピオンに輝いたこともあるという「口笛」について話を聞いた。

■路上ライブで全国ツアーを敢行

──昨年7月から、快進撃を続けていますね。

雄大 この数ヵ月で見る見る状況が変わりました。ほんの1年前までは生活費はアルバイトで稼いでいましたし、200人キャパのライブハウスが半分埋まるかどうかでした。でも、今は渋谷クラブクアトロなどの大型の箱がチケット販売開始数十秒で即完売するようになり、街で声をかけていただくことも増えてきて驚いています。

ここ半年くらい、ほんまに忙しいですけど、「今日バイトで疲れた」って感覚とは疲労感の質が全然違いますからね。ありがたい限りです。

──転機となったのは路上ライブとのことですが、そもそもなぜ始めたんですか?

雄大 もともとは2013年の結成以来、関西中心にライブハウスを回って地道に活動していました。お客さんは徐々に増えていたけど、もっとたくさんの人に知ってもらえるきっかけを探していた。

曲さえ聴いてもらえれば自分たちの音楽ってもっと多くの人に刺さるはずだって自信はあったので、2019年3月、思い立って路上で歌ってみることにしたんです。

実は、当時路上ライブをやるバンドってほとんどいなかったんですよ。ソロのシンガーさんがやるもので、バンドでやるものじゃないって空気があって。

──メンバーの皆さんも含め、抵抗はなかったんですか?

雄大 まったく! 僕らの音楽を聴いてもらえるならきっかけはなんだってよかった。カッコつけたことなんて言っていられない状況でしたし。

──開始当初からたくさんの人が集まったんですか?

雄大 いえ、最初は数人でしたよ。その頃の僕のツイッターのフォロワーは2500人くらい。「今から路上ライブやりまーす」ってつぶやいたって、たかが知れてます。

でも昨年3月、路上ライブであいみょんさんの『マリーゴールド』をカバーしている動画が、ツイッター上でめちゃくちゃバズったんです。その人生初バズりから、路上ライブのお客さんもフォロワーもどんどん増えていきました。

──この反響は狙いどおりだったんですか?

雄大 僕のアイデアではないんですが、ベースの圭吾が考えてくれました。実は、バズったきっかけのツイートって、圭吾がわざと他人行儀にアップしたものなんです。それは彼なりの作戦だったみたいで、ファンの方たちの中で伝説化してるみたいです(笑)。

──昨夏には路上ライブのツアーもしたとか。

雄大 そうなんです。そもそも路上ライブでツアーってなんやねんって感じですよね(笑)。

もともとは9月にミニアルバムのリリースが決まっていたので、対バンとかスリーマンのツアーをやろうと思っていました。でもマネジャーが突然「路上ライブで全国回ってワンマンツアーやってみたら?」って言いだしたんです。

当然バイトはできなくなり、路上ライブの売り上げと投げ銭で生活するしかないので、本当に崖っぷちでした(笑)。しかも僕、初日にいきなり財布落としてしまって、出だしは最悪でしたね。

──前途多難なスタートですね(笑)。結果はどうでした?

雄大 最初はまばらな客足だったんですが、ツアー中にSNS上で路上ライブの動画が拡散されて、お客さんがどんどん増えていきました。もともとはメジャー曲をカバーして認知度を上げたので、"カバーの人"だと思われていたと思います。

でも、ツアー3都市目の仙台にいた7月頃から、カバーではなくオリジナル曲のほうがSNS上でバズるようになりました。ストリーミングのチャートにランクインするようになったのもこの頃ですね。SNSのフォロワーもグッと増えました。

──では路上ライブの売り上げも?

雄大 結果としてバイト代よりも稼げてしまいました。

そこからは路上ライブツアーの動画がTikTokとツイッターでバズって止まらなくて、3日で3万人フォロワーが増えるとか、TikTokのおすすめ動画がノーベルブライトだらけになるとか、自分たちでも不思議なくらいの連鎖が起こりました。

この時期に新宿で路上ライブをすると告知したら、人が集まりすぎちゃって通行人が道を歩けなくなったので、1曲で撤収することになり、これを機に路上ライブは卒業しました。何時間もかけて来てくれたファンもいたと聞き、申し訳なく感じましたね。

■今年は音楽番組にもっと出たい

──TikTokきっかけでこれほど火がついたアーティストは今までいなかったのでは?

雄大 ありがたいことですよね。TikTokは、ひとつの動画がバズると、関連動画がどんどんリコメンドされる構造なんです。だから、1曲聴いてくれた人がほかの曲も聴いてくれやすいのがよかった。

特に10~20代の方には僕らの歌がSNS伝いで届いたようで、若いファンの方に「私の大学で知らない人はいない」みたいに言ってもらえることもあるんですよ。

──今でこそここまで注目を集めましたが、もっと早く売れたかったという思いはあったんじゃないですか。

雄大 根拠のない自信は昔からあったから、確かに歯がゆい時期は長かったです。でも6年間の蓄積があったからこそ今があるのかなとも思います。数年前のライブ映像なんて、ヘタすぎて見てられないですからね。まだまだ未熟ですけど、今だからチャンスがつかめたのかなって思っています。

──一気に売れすぎて、ライブをしようにも曲が足りないのでは?

雄大 そうですね、だから今は必死に曲作りをしています。ふとメロディが浮かぶタイプではないから、「あかん、作らな!」っていって作ってますよ(笑)。せっかく上京したけれど、まだ全然遊びに行けていないですね。

──影響を受けたアーティストはいますか?

雄大 ゆずさんです。とてもキャッチーなメロディで、歌詞が刺さり心にスッと入ってくる。僕は、聴いた人に真っすぐに気持ちを届けたいと思って楽曲を作っていますが、その姿勢はゆずさんの影響だと思いますね。

そういえば、高校のときに地元の駅の近くでやった人生初の路上ライブはゆず縛りでした。友達がいっぱい来てくれて楽しかったのを覚えています。バンドで路上ライブをやることにまったく抵抗がなかったのは、今思えばゆずさんへの憧れがあったからかもしれないですね。

──なるほど。話は変わりますが、雄大さんは口笛で過去2回世界一になったという異色の経歴もお持ちです。

雄大 小さい頃から「僕、口笛うまいんちゃうかな」と思って練習してたんです。口笛の世界大会があると知り中学1年生と高校3年生のときに出場して、優勝した経験があります。

──口笛って、どういう基準で審査するんですか?

雄大 音域とか表現力とかですね。音域でいうと、僕は3オクターブ以上出せます。自信があるのは表現力で、さながらミュージカルみたいに、身ぶり手ぶりで表現しながら吹きます。

あとは、技があるんです。例えばウォーブリングっていう、階段状に音程を変化させる奏法。これは中1のときに、口笛界のレジェンドで口笛奏者のヒールトシャトローに頼み込んで教えてもらいました。

──口笛はバンド活動にも生きていますか?

雄大 ギターフレーズを口笛で考えるとか、曲のイントロに口笛を入れるとか、あれこれ活用できていると思います。

──では最後に、今後の目標は?

雄大 「2020年一番活躍するバンド」になりたいです。2019年は、Official髭男dismさんやKing Gnuさんが大ブレイクして、『紅白歌合戦』にも出ました。

今年は僕らの年にしたい。子供の頃から見ていたような音楽番組にたくさん出て、もっと多くの人にノーベルブライトの曲を聴いてもらいたいと思っています。このままのスピードでもっと上を目指したいです。

それから、口笛も優勝してからブランクがあるので、そろそろ再挑戦したいところです。ただ、次の世界大会はライブと重なってて出られないことが決まってます!(笑)

●竹中雄大(たけなか・ゆうだい)
Novelbright・ボーカル、作詞・作曲を担当。1995年生まれ、兵庫県出身。高い歌唱力とハイトーンボイスが魅力。口笛の世界大会で2度の優勝経験があり(2009年、2013年)、2019年も準優勝

■Novelbright(ノーベルブライト)
大阪発5人組ロックバンド。2013年大阪で結成、2019年に現メンバーとなる。昨年SNS上で路上ライブ動画が拡散される。代表曲は『Walking with you』。5月に初となるフルアルバムのリリースが決定!