俳優と写真家。撮られることと、撮ること。夫婦の間に流れる川。この当たり前の写真行為は終わりのない旅、みたいなものかもしれない――。

週プレのグラビアを飾り続けて20余年。妻であり、母であり、安達祐実(あだち・ゆみ)であり続ける彼女が、10月12日(月)発売『週刊プレイボーイ43号』のグラビアに、夫であり写真家の桑島智輝(くわじま・ともき)氏とのセッションで登場。

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最近、現場で夫の桑島(智輝)さんと一緒になることも多く、仕事だから「こういう写真を撮ってほしい」っていう媒体の要望に沿って撮るじゃないですか。だから、純粋にふたりの世界観で写真を撮る機会が少なかったんですよね。でも、今回のグラビアはふたりで自由に撮れたので、とてもうれしかったです。リラックスした、いい空気感で。

最後の座ってる写真は「思うままに歌を歌ってくれ」って桑島さんから頼まれて、歌いながら撮ったんです。おかしな要求や指示が桑島さんらしくて、自由な環境が与えられたときに、ふたりで写真を楽しむことができるようになったことを実感できました。

グラビアには10代の頃からお世話になってます。最初は戸惑いがあったというか、水着になることはなんとも思っていませんでしたが、見てくれる人の気持ちを心配していました。私が子役だった頃のイメージを持ったままの人がグラビアを見ると、抵抗感があるだろうな、という自覚があったので。

また、子役出身だと俳優として大成しないといわれるなかで、なんとかして大人にならないといけない。そんな思春期の葛藤も強くありました。だけど17歳の頃、カメラマンの橋本雅司さんが撮ってくれたとき、「そのままでいいんだよ」と言ってくれて。その言葉に本当に救われて、ありのままの自分でいられるグラビアという場所が大好きになりました。

グラビアの撮影は楽しさがあるのと同時に、切なさもありました。特に10代の頃は、撮られているときは素の自分のままでいていいのに、撮影が終わると、またみんなが思う「安達祐実」に戻らないといけないみたいな切なさが、撮られている間もずっとあったんですよね。撮影が終わったら「あぁ終わっちゃったー。明日からどうやって生きていこうかなぁー」みたいな(笑)。だからその頃は、よく自分のグラビアを見返していました。

当時は必ず本番前のテストでポラロイドを撮っていたんですけど、カメラマンさんがそのポラロイドをアルバムにまとめてくれたことがありました。それをずっと見返していましたね。安心感というか、写真というものは昔から自分に一番近い存在だったのかもしれません。 

年齢を重ねるにつれて、子役のイメージとのギャップに悩むこともありました。世間が思う幼い自分と、大人になった自分の狭間で、どう振る舞えばいいんだろうって。ただ、20代になる頃には、少しずつ「子役の安達祐実」のイメージから離れたひとりの女性として、ここにいてもいいんだと思えるようになった気がします。

そのきっかけのひとつがグラビアです。大人の女性として「安達祐実」を表現することができ、さらにそれが受け入れられていると実感できたので、グラビアはやっぱり特別な場所でしたね。

とはいえ、なかなか思うように仕事ができずに悩んだ時期も長くありました。そして、ちょうど30代に突入する頃、芸能生活30周年の節目を迎えるタイミングでもあったので、思い切って「今までとは違う自分を見せたい」と考えていました。

そのとき、知り合いのメイクさんが、「せっかくだし、今の祐実ちゃんを写真に残しておいたほうがいいんじゃない」って。そこで桑島さんに撮影をお願いして、撮ってもらったのが写真集『私生活』(集英社、2013年)。

この当時は、モデルルームみたいに何もない部屋で暮らしていて、ご飯もちゃんと食べていなかったし、気分の上がり下がりも激しい時期でした。現場に来て、何もしゃべらず、写真だけ撮って帰っていく。桑島さんも、よく付き合ってくれましたよね。

『私生活』の冒頭に、「私はカメラの前に立って、生きていることを許されている気がするのです」と言葉を綴っているんですけど、当時はカメラの前に立つときって、私なんだけど私じゃない誰かであったり、安達祐実を撮っているんだけど作られた安達祐実だったり、そういうことがほとんどだったんです。

でも、桑島さんのカメラの前に立つときだけは、本当の私でいられたんだと思うんですよね。それは今でも変わっていません。 

昨年、発売された写真集『我我』(青幻舎)は、『私生活』に比べて食にまつわる写真が多いんですけど、桑島さん、私が食べているのを見ると安心するらしいです。よく食べるようになったなぁって(笑)。

食べるのが楽しいな、というのは桑島さんと出会って感じたことなので、私たちなりの夫婦の形がしっかり刻まれた写真を残せたはずです。

そして新作の『我旅我行』を見たとき、「ノロケのような甘い部分がなくなったな。乾いたな、私たち」って率直に感じました。『我旅我行』では夫婦として、男女として、ふたりとして、その関係性や距離感が近くなっているのに乾いていってるというのが、私たちにとっていいことだと感じます。

『我我』も『我旅我行』も、桑島さんの写真集であって、安達祐実の写真集じゃないからいい。特に、旅行の写真がメインになっている『我旅我行』では、見知らぬ土地に写る私が、安達祐実ではない誰かに見えるような感じがして、不思議なんですよね。

『私生活』と『我我』、そして『我旅我行』と3冊そろった桑島さんの作品を見ていると、いろんな過去の瞬間を写真集として残せていることが、単純にすてきなことだなって。

今は「私」「我」と続いていますが、この先はどこへ向かうんでしょうね。もしかしたら今後「彼岸」に向かうかもしれない(笑)。ただ、人生において写真の存在がずっと近くにあるのは、私にとって本当に幸せなことだなと思います。

(スタイリング/牧野香子 ヘア&メイク/岡田知子)

●安達祐実(あだち・ゆみ) 
1981年9月14日生まれ 東京都出身 
○2歳で雑誌モデルとして芸能界デビュー後、子役から30年以上にわたって俳優として活躍。4~7月に放送されたドラマ『捨ててよ、安達さん。』(テレビ東京)のDVD-BOXが好評発売中です。
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