『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

7月13日より放送開始となるドラマ『サレタガワのブルー』で不倫悪女・藍子を熱演する女優の堀未央奈さんが登場!

■『バタリアン』でホラー映画好きに!

――子供の頃に見て、好きだった作品はありますか?

 私、ホラー映画がすごく好きなんです。

――えー! 意外です!

 そのきっかけになった作品が『バタリアン』(1985年)で、小学生の頃にビデオで見ました。ただ怖いだけじゃなくて、コミカルで笑えるんですよね。

――ちなみに、今のお仕事を始めるきっかけになった作品はありますか?

 間違いなく、『魔女の宅急便』(1989年)ですね。ジブリはどの作品も好きなんですけど、ひとりで上京してお仕事を始めたばかりだった中学、高校の頃の自分には『魔女宅』が一番刺さりました。

――まさにキキですね。

 そうですね(笑)。ファンタジーのなかに現実世界の話もあって、そのバランスがすごく好きなんです。『魔女宅』は何回も見ていて、すべてのセリフを言えるくらい(笑)。当時はおうちでつぶやいたりしてたんですけど、「セリフを暗記して自分なりに言うのって楽しいな」って思ったりして。お芝居にも自然と興味を持つようになりましたね。

――乃木坂46の頃に見て、印象的だった作品は?

 いっぱいあるんですけど、今回、『サレタガワのブルー』に出ることが決まったときにふと思い出したのは、『イニシエーション・ラブ』(2015年)でしたね。前田敦子さん演じる小悪魔的な主人公のお話ですけど、男性視点と女性視点とで見え方が全然違うと思うんですよ。私は女性視点で見て、すごく面白かったんです。「いいぞ、もっとやれ」と思ったり(笑)。

――今日イチで怖いです(笑)。

 『サレタガワのブルー』で悪女役をやる上で、もう一回見直しました。「悪女って楽しいなあ」と思いながら(笑)。もちろん、現実にいたら大変だけど、作品としてはすごく面白いんですよね。

――ホラーとはまた違いますが、怖い作品が好き?

 私、見た後に強烈なものを残してくれる刺激的な作品のほうが好きなんです。普通の人が「これはグロいから無理」「気持ち悪いから無理」というようなものでも、むしろ、それこそが作品なのかなって。強烈で、ほかの人がやっていないことをやっているからこそ、目立っているというか。

それに、明るい作品を見るよりもダークな作品やバッドエンドの作品を見るほうが、今の自分により感謝できるような気がするんです。「平凡な毎日に感謝しないとな」と思えるというか。そういう非現実的な怖い世界を見てこそ、リアルな自分の世界を感じられるんじゃないですかね。

――エンタメの本質的なことを突いてますね。

 やっぱり、見たことがないものをつくり上げるというのが、第一線で活躍する人の条件だと思うので、そこはすごくリスペクトしています。

――ちなみに、最近面白かったホラー映画はあります?

 『トリハダ』シリーズですね。オムニバス形式なのでギュッと詰まっていて見やすいんですよ。人間しか出てないのに、あれだけ後味の悪い怖さを出せるのはすごい。結論、一番怖いのって人間だなって思いました。ゾンビだって元は人間ですし。

あとは『勝手にふるえてろ』(2017年)も面白かったです。私、『アメリ』(2001年)も好きなんですけど、女性目線で自分の世界を描く感じが、「日本版アメリ」だなと思いました。私も、私の周りの女のコの友達もみんな好きな作品です。


■"アンチが増える悪女"藍子はハマリ役!

――『サレタガワのブルー』では、不倫をする小悪魔的な主人公・田川藍子を演じていますが、いかがでしたか?

 藍子という役が強烈なので、最初に台本と原作マンガを読んだときは「演じたらアンチが増えるんじゃないかな?」ってちょっと思いました(笑)。あんまり見たことがないタイプの悪女なので。でも、そういう気持ち以上に、怖さを持ち合わせたキャラクターを演じさせてもらえることがうれしかったです。

――リアルでは経験できないから殺人犯の役をやってみたい、という俳優さんもいたりしますもんね。

 現実離れしたものへの憧れがあるから、不倫モノやサスペンスが人気なんでしょうね。現実世界でも救急車が止まっていたら気になって見に行く人も多いですし、人間って、危険なものに興味がある生き物だと思うんです。この作品も怖いもの見たさで見てもらえたらうれしいですね。

――藍子を演じるのは難しかったですか?

 常にかわいくいなきゃいけないというのは意識しましたね。声や表情も愛嬌(あいきょう)がないといけないし、怖いことを言っていても、それがかわいく聞こえないといけないので。

素の私はかわいく思われたいという考えがゼロなので、けっこうズバッと言っちゃうし、興味がなかったらすぐ顔に出ちゃうタイプなんですけど、藍子はすごく女性的で小悪魔っぽい人なので、とにかく愛嬌を意識しました。

――演じながら演じてるわけですね。それってなかなか大変じゃないですか?

 でも、撮影中はずっと楽しかったです。藍子は話が噛(か)み合わない人で、自分の都合のいいように話すので、セリフもぶっ飛んでるんです。だから、カットがかかった瞬間に、藍子の夫ののぶ君(田川暢[のぶる])を演じている犬飼貴丈(あつひろ)さんと「今のセリフは面白かったね」って言い合ったりしてました(笑)。

悪女だとは知りつつも、結局、現場のみんなは藍子に翻弄(ほんろう)されていて。「藍子にはかなわない」「僕は藍子派です」って言われたりすると、しめしめと思ってましたね(笑)。

――堀さん、絶対ハマリ役ですね!(笑)

 どんな反響があるかわからないですけど、役ごとにまったく違う人に見せたいんですよね。どれが素の私かわかってもらわなくていいので。

――それ、女優さんが本来持ってる悪女性みたいなものを感じますね。

 『ホットギミック ガールミーツボーイ』(2019年)に出させてもらったときに「本当に意志の弱いコなんじゃないか?」と思われたことがあって。「本当は違うのにな」という気持ちと、「ちゃんと役と重なってたんだな」という気持ちだったんですね。

そういう経験をしてみて、「素の堀未央奈はいったい誰に近いんだろう?」って思われるくらい、役に入り込んだ演技が理想ですね。

●堀未央奈(Miona HORI)
1996年生まれ、岐阜県出身。2013年に第2期生として乃木坂46に加入し、7thシングル『バレッタ』で初選抜&センターに。2017年より女性ファッション誌『ar』のレギュラーモデル。2021年3月28日の「9th YEAR BIRTHDAY LIVE ~2期生ライブ~」をもって乃木坂46を卒業し、現在は女優業を中心に活動

■MBS/TBSドラマイズム『サレタガワのブルー』7月13日(火)より放送開始(MBS、毎週火曜24:59~)(TBS、毎週火曜25:28~)

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