今年は「仮面ライダー生誕50周年」。そこで9月13日に発売された『週刊プレイボーイ39&40号』では「仮面ライダーヒロイン集結」と題し、歴代の仮面ライダーヒロインたちが登場。最新水着グラビアをはじめ、インタビューなどで仮面ライダーシリーズへの愛を見せてくれている。

そんな特集から、歴代ヒロイン5人のインタビューを最新撮り下ろしとともに連続掲載。第2回は『仮面ライダー電王』(2007~2008)に出演した松本若菜さんが登場。彼女が演じた野上愛理は、電王に変身する主人公・野上良太郎の姉。カフェを経営し、良太郎を優しく見守るが、物語が進むにつれ、劇中で描かれる過去・現在・未来の秘密を解く鍵を握る存在に。松本さんが、当時を語る。

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──『仮面ライダー 電王』は松本さんの記念すべきデビュー作です。

松本 そうですね。オーディションを受けること自体も初めてで、当日はバイト先の鰻屋さんから駆けつけたんです。そしたら、「え!? バイト先から直行?」って、審査する方が驚かれて。そこから、一気に場が和みました(笑)。なので、初めてのオーディションだったのに、バイトの後、おしゃべりをしに行った感じがして、すごく楽しかったです(笑)。

──愛理役に決まったあとは、どんな心境でしたか?

松本 出演作が決まってうれしいという気持ちは、もちろんありました。それ以上に感じたのが、『仮面ライダー』シリーズの大きさです。家族や地元の同級生から、「あの『仮面ライダー』シリーズに出演するの?」という声をもらって、ことの大きさに気づき始めました。正直、それまでは『仮面ライダー』シリーズにそこまで馴染みがなくて、その大きさを理解していなかったので。

松本若菜さんが演じた野上愛理(©石森プロ・東映)

──電王に変身する主人公・野上良太郎を優しく見守る姉・野上愛理という役には、どのようにアプローチを?

松本 しゃべり方は、いとこをヒントにしました。ちょっとだけ裏声っぽくて、ゆっくり話すんですよ。あと一番最初のプロットには、「野上愛理は星が好きで、カフェを経営している。大のコーヒー好きだが、過去の記憶を失ってしまっている」と書かれていたんですが、それだけなんです(笑)。

そこから、撮影直前に新しい台本が出来上がってくるたびに、愛理という人物の背景が明らかになっていって、自分もそれを同時進行で理解しながら演じていった感じです。今思うと、だからいつも新鮮な気持ちで演じられたのかなと思うし、物語や役柄の全貌が見えていないからこそ、その瞬間その瞬間で『仮面ライダー 電王』の世界の今を生きられたんだと思います。実際にはコーヒーが飲めなかったので、コーヒー豆を挽くシーンでは所作に苦戦したことも、今はいい思い出です。

──『仮面ライダー 電王』は、今も見返したりされますか?

松本 当時の演技は、顔から火が出て今は見られないです(笑)。特に第1話の演技とか、「嘘でしょ!」って感じですね(笑)。そんな私の転機になったのは、それまでは穏やかでやさしいキャラクターだった愛理が、激しい感情を露わにするシーン。なかなか監督さんからオッケーをもらえず、何度もテイクを重ねたんですけど、そこで女優としての感情の作り方を学ばせていただきました。そういう意味でも、今の私の原点は『電王』なんだと思います。

──『電王』に出演したことが、今につながっているなと感じることも多いですか?

松本 多いですね。当時からずっと私のことを応援してくださっているファンの方も多いですし、少し前に地方ロケに行ったときは、子ども連れのお母さんに「子どもの頃、『電王』を見ていました!」と声をかけていただきました。

それと、つい最近なんですけど、全然違う2つの現場でふたりの若手女優さんに「実は私、『電王』世代で、今回の作品のキャストに松本さんの名前を見つけて、すごくうれしくて」って言われたんです。私も本当にうれしかったんですが、時の流れを感じて不思議な感覚にもなりました。『電王』を見ていた女のコたちが、自分と同じ女優になっているんだなって。

──『電王』は、過去と現在、未来を行き来しながら物語が展開されていきます。松本さん自身も過去と現在、さらに未来はつながっているなと感じることは?

松本 仕事でもプライベートでも、経験してきたことはいいことも悪いことも自分の糧になっていると、私はすごく思っていますね。過去の自分からヒントをもらうこともありますし、演技における感情で過去に似た部分がある役を演じていたら、その記憶を手繰り寄せるときもあります。そのときは本当に苦しかったり悔しかったりする経験でも、そういう経験をしていたからこの役に巡り会えたのかもしれないと思うこともありますし。

──『電王』の中で、印象に残っているシーンは

松本 たくさんありますけど、今思ったのは、残念ながらお蔵入りになってしまった最終回のラスト。愛理と良太郎の幻のシーンです。

──幻のシーン!? そんなものがあったんですね。実際に放送されたのは、"イマジン"と呼ばれる敵たちとの戦いを終えた良太郎が自転車に乗りながら、走り去るゼロライナー(電王とともに戦った、仮面ライダー ゼロノスの専用列車)を見送るシーンでした

松本 あのラストシーンも、さわやかで素敵でしたよね。それとは別に、実はもうひとつのラストシーンも撮影されていて、それが愛理と良太郎、ふたりだけのシーンだったんです。イマジンとの戦いを終えた良太郎が、普通の弟に戻って愛理が経営する喫茶店「ミルクディッパー」に帰ってくる。そして、私が「おかえり」って声をかけて、良太郎が「ただいま」って応える。それもすごくいいシーンだったなって思います。

初めてのオーディションで初めての役をいただいて、1年間にわたって愛理という役を演じさせてもらって、その最後で愛する弟をやさしく迎え入れる。1年間の撮影では大変なこともあったし、その最初から最後までを姉と弟という関係で苦楽をともにした良太郎とふたりだったからこそ、特別な思いが込み上げました。放送はされなかったけど、今も自分の中で強く印象に残っています。

──仮面ライダーシリーズは、今年50周年を迎えましたが、松本さんにとって『仮面ライダー 電王』という作品、野上愛理という役をひと言で表すと?

松本 私にとっての『仮面ライダー 電王』という作品、愛理という役をひと言で表すと、覚悟です。実は、『電王』の放映中に視聴者のお父さんからお手紙をいただいたんですよ。そこには「『電王』が好きで、愛理さんのように育ってほしくて、娘を愛理と命名しました」と書いてありました。

そのときに、私は覚悟と責任を持って愛理という役をまっとうしないといけない、この先も女優として、そして人としてしっかり生きていかなきゃいけないという覚悟が生まれたんです。その女のコは、もう中学生になっていますよね。

──愛理は星を見るのが好きで、コーヒーを愛していましたが、松本さんご自身は?

松本 実は、撮影当時はコーヒーが嫌いで、ファンの方に「ショックです」って言われたりしていたんです(笑)。でもここ最近はコーヒーが大好きになって、自分で豆を挽いて、ホットもアイスもブラックで飲んでいます。そこは、今になってやっと愛理と自分がシンクロしました(笑)。星には、まだ興味がないかなー。コーヒーが好きになったみたいに、今後はわからないですけど。

■松本若菜(まつもと・わかな)
1984年2月25日生まれ 鳥取県出身 〇劇場版『ポルノグラファー~プレイバック』Blu-ray&DVDがリリース&レンタル中。主演映画『マリッジカウンセラー 結衣の決意』がU-NEXTで独占配信中。出演映画『ハザードランプ』(榊英雄監督)が2022年春公開予定。公式Instagram【@ma.wakana】、公式Twitter【@wakana_ma】