加藤歩とのコンビ「ザブングル」で芸人として活動し、2021年に引退した松尾陽介の対談シリーズがスタート。対談のテーマは「40代からのセカンドキャリア」について。40代ならではの仕事や家庭、健康の悩みから、今後の人生の歩み方を考える。1人目のゲストは、ピン芸人のスギちゃん。「ワイルドキャラ」でブレイクしたスギちゃんは、生き方もワイルドなのか? 松尾陽介45歳とスギちゃん48歳、ゴリゴリの中年同士の対談はどうなる? (全3回の2回目/1回目を読む)

■「ザブングル」という芸人を辞めた理由

スギちゃん 「メカドッグ」(スギちゃんが以前に組んでいたコンビ)で事務所を辞めた時に、このコンビで違う事務所を探すのは、俺の中でちょっと違うなと思った。だから「コンビを解散しよう」と。(元相方の)沢原に、ピン芸人でやって駄目やったら俺も辞めるから、勝負かけさせてくれってお願いして。そうしたら、ピンで1発目に出たライブの反響で『エンタの神様』とか、深夜の『イツザイ』っていう番組からどんどんお声がかかって。

松尾 それが「ワイルド・スギちゃん」ですか?

スギちゃん いや、その時は「おっぱい先生」(笑)。深夜番組で準レギュラーに取り上げられて、CDまで出してもらって。ダンスミュージックに合わせて「アイ・マイ・ミーおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい」。

松尾 誰ですか、その企画持ってきたやつ(笑)。スギちゃんのネタと真逆ですよね。だいぶシュールな笑いというか。

スギちゃん シュールやったな。そこで俺は思ったんだよ。笑いが起きるのにムラがありすぎると。

松尾 でしょうね(笑)。 

スギちゃん ウケる時とウケない時の差が激しいなって悩んでたんだな。そこでフリートークをネタにできたらいいなと思って、「アイドル・スギちゃん」が生まれたの。

松尾 なるほど。

スギちゃん トシちゃんのパロディで「アイドル・スギちゃん」。で、そこから短い尺でポンポン笑いが取れるような何か無いかな?と考えて、ワイルドキャラが生まれたわけ。そしたら、その日のライブからムチャクチャウケた。

松尾 へえ~。

スギちゃん これは行けるなと思った。ライブの袖に芸人が集まることがあるじゃない? あれが起きたんだよ。「ワイルドだろ~?」、ドカーン。「コーラのキャップ捨ててやったぜ」、ドカーン。

松尾 発明しましたね。

スギちゃん 今では「キャップ捨ててやったぜ」「ああ、そうですか」だけど(笑)。

松尾 それでも今も楽しそうですね。

スギちゃん 好きなんだろうね、自分が。だからロケなんかでも、毎回編集されようが何しようが全力でボケまくるんだよね。カットされまくってるのを見ると、悲しい気持ちになるよね。目の前に来た木の葉っぱとか泥だらけになってバクーッて食って、「今日の一食終わったぜ」みたいなことをやってるのよ。面白いのに全然放送されない(笑)。

松尾 自分が出てる番組チェックする派なんですね。

スギちゃん する派。だから、「結構頑張ったのにな」っていう番組とか、オンエア見るとショックを受ける。

松尾 でも、傾向と対策になるんじゃないですか? 

スギちゃん いや、俺はそれでも反省しないで絶対に全部やる。やったうえで奇跡起きろ!と思っちゃう。結局全部カットされて、何もやってないで終わる時いっぱいあるよ。でもしょうがないんだよ、そこと戦ってるから。妥協してやめちゃったりしたら、絶対負けだからさ。

松尾 「ワイルド・スギちゃん」の次の展開っていうのは考えないんですか?

スギちゃん いろいろ悩みはしたけど、ワイルドしか俺はないんだから。今、小っちゃい子なんて俺のこと知らないんだよ、だから同じことやったっていいんだよ。

松尾 杉山さんのお子さんはおいくつ?

スギちゃん 3歳と1歳。今CMやらせてもらったりして、「お父さん出てるよ」って言ったって、全然見ないんだから。自分の子どもが、親が出てるのに見ないってショックだぜ。「お父さんを見ろ」っていっても、号泣して「ヒカキンが見たい! ワイルド嫌い!」(笑)。まあ、また「スギちゃんはすごい」っていうのを子どもに見せるために頑張ってるからな。目標が生まれたというか。

松尾 家族ができたことによってね。でも、人によっては家族ができたことで芸人はあきらめなきゃ、と思う人もいるかもしれないですよね。

スギちゃん それはあるよね。お金がない時に子どもができたとか、好きな人が出来て結婚したいとかなったら、芸人辞めるきっかけかもしれないね。松尾が、辞めるきっかけは何だったの?

松尾 僕のできることや、いいところを考えた時に、あんまりテレビで活きてる気がしなかったんですよ。僕がやりたいことをやってますよっていう感じでやってなかったんです。

スギちゃん ツッコミやしな。

松尾 ツッコミに関して不満があったとかではないんですけど、自分の勝負できる舞台が芸人じゃないんじゃないのかな、と思ったのが一番のきっかけかもしれないですね。芸人に向いてないんじゃないかとか思い出したんですよね。

スギちゃん 芸人に向いてる、向いてないって何だろうね。

松尾 難しいんですけど。それで解散っていうのを考えたんですよ。自分一人で何かに挑戦しないまま死ぬのもアレだなって思っちゃって。

スギちゃん 一回勝負してもいいな、と思うよね。

松尾 ピン芸人になるっていうのが、杉山さんの中では勝負だったと思うんですけど、僕は芸人以外のことをやってみようかな、だったわけですよ。

スギちゃん なるほど。芸人になる前は何かやってたの?

松尾 大学生です。

スギちゃん 俺は1回就職してるのよ。だからもうその頃に戻りたくないの。

松尾 何やってたんでしたっけ。

スギちゃん 結婚式場で働いてた。当時の日報がこの前出てきて、読んでみたらとんでもないヤベえやつだぜ。式場でマネキンに衣装を着せたりするんだけど、「マネキンを脱がしたりして興奮した」って書いてるんだよ。イカレてるだろ(笑)。

松尾 杉山さんは、すごいしゃべりやすくてありがたいんですけど、今回の対談のテーマには向いてないですね。ただただ「芸人続けます!」の人ですもんね。やっぱり売れる人はすごいですね。

3回目の記事へ続く

★この対談の様子は、前編を週刊プレイボーイの公式YouTubeチャンネル後編をOMATSURIチャンネルで配信中!


松尾陽介(まつお・ようすけ)
1977年1月28日生まれ。1999年に加藤歩と「ザブングル」を結成。『アメトーーク!』の「運動神経悪い芸人」では「ガチ王」「水神さま」の異名を持つ。2021年に芸人を引退。現在は(株)OMATSURIの代表取締役社長

スギちゃん
1973年8月24日生まれ。1995年に芸人としてデビュー。その後、「メカドック」というコンビを経て、2008年よりピン芸人として活動。2010年に「ワイルドだろ~」のフレーズで「自他ともに認める大ブレイク」を果たす