映画やドラマで輝きを放つ若手女優たちの中から、今注目の4名をインタビュー。

第1回は、次世代女優として注目を集めている鳴海唯さん。2018年に女優デビューすると、翌年には連続テレビ小説『なつぞら』で主人公の妹役に抜擢(ばってき)。その後も出演作が続き、昨年12月に公開され、現在ロングラン上映中の映画『偽りのないhappy end』では、映画初主演を果たした。

主演作の映画『偽りのないhappy end』は、東京で暮らす主人公・エイミ(鳴海唯)が地元に残っていた妹・ユウ(河合優実)に、東京で一緒に暮らすことを提案するところから物語は始まる。ユウは上京してくるも、一緒に生活を始めて早々行方不明に。そんなユウをエイミが探し始めるところから大きく動き出す物語を描いたミステリー作品となっている。

今回、鳴海さんには初映画主演作『偽りのないhappy end』の話を中心に、思い出深かった撮影現場についてや、今後の目標まで聞いた。

――映画『偽りのないhappy end』ですが、予想のつかないストーリーや衝撃的な結末など、とても刺激的な作品でした。

鳴海 この作品、実は2年前に撮った作品なんです。最初に台本を読ませてもらった時は、何とも言えない余韻というか、「何だこの作品は?」って衝撃を受けたのを覚えています。

お芝居を初めて1年目くらいの時だったので、自分のお芝居の引き出しにはまったくないシリアスな役柄に、「これは本当に私にできるのか?」っていう不安もありました。でも、この作品を撮り終えたころには絶対自分は、ひとつ役者としてパワーアップできるなって思い全力で演じさせていただきました。

――物語にも驚かされましたが、もうひとつ本作で驚かされたのが、27歳のOLという役を、当時21歳の鳴海さんがすごく自然に演じていたことです。役作りは相当大変だったのでは?

鳴海 そうですね。そもそも私は、基本的に実年齢よりは低く見られがちなので、まずは見た目から変えないといけないと思って、髪を伸ばしました。映画を観終わった後のインタビューで印象が違い過ぎて、すごく驚かれましたね(笑)。

あと、エイミはお姉ちゃんで、実際の私は妹。お姉ちゃんの立場っていうものがあんまりわからなかったので、その部分もどうやってアプローチをしようか悩みました。自分なりに普段しゃべっている明るいテンションよりは落とし目にしたりとか、試行錯誤して役に合わせていった感じです。

――そんなエイミは物語が進むにつれて精神的に追い詰められていき、演技もよりシリアスなものとなっています。

鳴海 あそこまで精神的に落ちていく役も初めてだったし、今まで生きていてあそこまで落ちるっていう経験をしたことがないので、自分が持っていない気持ちを引き出してお芝居をしなくてはいけなかったのがとても難しかったです。

事前にシリアスな作品を観て、ほかの役者さんはどのようにアプローチをかけているのかなっていうのを勉強して、ちょっとずつ参考にしながら作り上げていました。演技とはいえ、演じているうちに私の精神も役の影響を喰らってしまって、本当にやばかったです。

――たしかに、終盤にエイミが見せた虚ろな瞳はとても印象的でした。鳴海さんから見た本作の見どころをひと言で表すと?

鳴海 一番はやっぱり、2転3転していくストーリーの緊張感ですね。あと、結局最後まで直接的に明言されないことがあるのもいいなって思います。観てくださる方によっては、それぞれの解釈や感想があるんじゃないかなって。そういう、余韻というか、ある種受け手に委ねる部分があるのはすごく面白いと思いますね。

――ありがとうございます。ほかの出演作品についてもお聞かせいただきたいのですが、鳴海さん的に思い出深い作品はありますか?

鳴海 たくさんあってキリがないですが、昨年放送されたドラマ『ムショぼけ』は、いろいろな意味でとても思い出に残っている作品です。私、地元が兵庫県なんですけど、撮影の舞台になった尼崎は、実家から通える距離だったんです。

――では実家から通っていたんですか?

鳴海 はい、実家から通っていました(笑)。いつか地元でお仕事をしたいというのは、ひそかにあった夢だったので、こんなに早く実現できたのはすごくうれしかったなって。

あと、親孝行になったかは分からないですけど、スタッフの方に「両親を呼んでいいよ」って言っていただけて、撮影現場に両親を呼ぶことができたんです。その際に撮影していた海は、母が小さいころから遊んでいた場所で。そういう特別な思い出のある場所での撮影に両親を呼べたのは親孝行になったのかなぁって思います。

――それは、最高の親孝行だと思いますよ!

鳴海 だといいなぁ。あと、主演の北村有起哉さんと共演できたことも本当にうれしい思い出です。お仕事をさせていただく前からすごく憧れていた俳優さんだったので、共演が決まった時から、「絶対にお芝居を勉強させていただこう!」という強い気持ちで臨みました。実際に撮影が始まってからは、ずっと背中を見て演技を学ばせていただいて、役者としても成長できたかなという現場だったので、思い出深いですね。

――ところで、さまざまな役を見事に演じられている鳴海さんですが、役作りをする際にいつも心がけていることはありますか?

鳴海 元々は、役に合わせて計画を立ててお芝居をするタイプだったんですが、『偽りのないhappy end』の撮影で監督の松尾大輔さんが、「現場で生まれた感情を大切にしてほしい」と、演出をしてくださったんです。その演出方法を経験させていただいてからは、割と現場で生まれたリアルな感情を大切にするようになりました。

――まさに、『偽りのないhappy end』はターニングポイントでもあったんですね。ちなみに鳴海さんは演じている時は、その人になりきるタイプですか?

鳴海 半分ですね。演じている自分を俯瞰している自分もいるし、役に入りきっている自分もいて、半々でバランスをとってやっていくという感じです。だけど、私はひとつの作品の撮影が終わったら、すぐにコロッと気持ちが切り替わるタイプですね。終わったら終わりって感じで、ずっと役を引きずっちゃったりはしません。



――今後、演じてみたい役はありますか?

鳴海 刑事さんの役がやってみたいです。自分が憧れた作品に、そういう作品が多くて。凸凹コンビじゃないですけど、おじさん俳優が演じると先輩と、それについていく後輩みたいな。なんかもう説明台詞とかを長々と言いたいです。「刑法何条において~、逮捕します!」みたいな(笑)。だって普通に生きてて、そんな台詞を言うことってないじゃないですか。そういう、普通ではできない経験を演技で体感できるのも役者の魅力だな~って思うので。

――刑事さんの役とても似合いそうですね! 最後にそんな鳴海さんの目標を教えてください!

鳴海 ひとりでも多くの方に、面白いコが出てきたなって思ってもらえるように、いただいたお仕事をひとつひとつ丁寧に感謝しながら取り組みたいです。

あと、具体的な目標でいうとコメディ作品に出たいです! 個人的には、コメディがどのジャンルよりも演じるのが一番難しいなって思うんです。だからこそ挑戦したい。ありがたいことに、コメディ作品に関わらせていただくことは、これまでもあったのですが、今年はもっとTHE喜劇というような作品にも出てみたいですね。

(スタイリング/李靖華 ヘアメイク/坂本志穂)

●鳴海唯(なるみ・ゆい)
1998年5月16日生まれ、兵庫県出身。2018年に映画『P子の空』で女優デビュー。その後は、NHK連続テレビ小説『なつぞら』、ドラマ『ムショぼけ』などに出演。昨年12月には、『偽りのないhappy end』で映画初主演を果たした。
公式Instagram【@narumi_05】