歴史的名作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977)の放送以降、長きにわたり親しまれているスーパー戦隊シリーズ。その最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が革新的な作品として話題を呼んでいる。3月19日に発売された『週刊プレイボーイ14号』で
は「素顔のスーパー戦隊ヒロイン大集結」と題し、歴代のスーパー戦隊ヒロインたちが登場。最新水着グラビアだけでなくインタビューなども収録し、スーパー戦隊シリーズへの愛を見せてくれている。

その特集から、歴代ヒロイン4名のインタビューを最新撮り下ろしとともに連続掲載。今回はシリーズ第32作『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008~2009)で、ケガレシアを演じた及川奈央さんが登場。ケガレシアは、汚染された環境を好む悪の機械生命体・蛮機族ガイアークの害水大臣。水を使った蛮機獣を製造し、ゴーオンジャーと戦った。当時の心境や秘蔵エピソードなどを通じて、作品の魅力を語る。

***

――まずケガレシア役を演じることになった経緯を教えてください。

及川 以前、出演させていただいた『ULTRASEVEN X』(2007年)のデザイナー・酉澤(安施)さんが『ゴーオンジャー』のキャラクターデザインを担当されていて、ケガレシアを私のイメージで描いてくれたらしいんです。そこからお話をいただきました。

私は小さい頃から特撮ドラマが大好きなんです。弟と『光戦隊マスクマン』(1987~88年)のヒーローショーを観に行って、握手してもらったこともあります。だからめちゃくちゃ嬉しかったです。

――ケガレシアは汚染された環境を好む、悪の機械生命体・蛮機族ガイアークの害水大臣。害地大臣・ヨゴシュタイン、害気大臣・キタネイダスとともに地球を汚染しようと企て、ゴーオンジャーと戦います。どんな意気込みで撮影に臨みましたか?

及川 最初、プロデューサーさんからは「悪役だから石を投げられる覚悟で演じて欲しい」と言われたんです。なので子供に怖がられるくらい冷酷な悪に徹しようって。でもすぐ変わっていきました。

――というと?

及川 第4話(『炎神トラブル』)のゴーオンジャーと対峙するシーンで「おばさん!」って呼ばれるんです。そこで子供にもわかりやすいように頭から湯気を出し、真っ赤な顔で怒る演出があって。それがすごく評判だったんです。また語尾に「~おじゃる」をつける口癖もあり、コミカルなキャラクターになっていきました。私もいつかはヨゴシュタイン、キタネイダスとともに『ヤッターマン』の"ドロンジョ一味"みたいにやれたらと思っていたので、気負わず、楽しく演じるようになりました。

及川奈央さんが演じたケガレシア(©東映)

――スーパー戦隊の現場は、その撮影内容や時間など非常にハードだと聞きます。及川さん自身、大変だったことはありました?

及川 私は申し訳ないくらいすべてが楽しかったですね。いろんなことをさせていただきました。やけ酒ならぬ"やけオイル"を片手にくだを巻く定番シーンをはじめ(笑)、女侠客となって丁半博打のツボ振りをしたり、保健室の先生に扮したり、温泉に入ったり。スタッフさんが、ケガレシアというキャラクターで遊んでくださいました。ただ大変だったといえば、体型かな。

――体型、ですか?

及川 はい。ケガレシアって、機械生命体なんです。だから太ったり痩せたりしないでくれと言われていて。当時、やけ酒ではないけど(笑)、日本酒が好きでよく飲んでいたので、お腹まわりはいつも気にしていましたね。

――及川さんの中で、特に印象に残っているエピソードは?

及川 「汚石冷奈」(けがいしれな)って人間に変身した回ですね(第14話『毎日ドキドキ』)。人間の力の秘密を探るため、精神鍛錬の道場に潜入するんですけど、普通のメイクで「おじゃる」ってセリフを言うのがやたら恥ずかしくて(笑)。あとはイエローの逢沢りなちゃん、シルバーの杉本有美ちゃんとアイドルユニットを結成した回です。

――第31話『歌姫(アイドル)デビュー』ですね。2人と「G3プリンセス」を結成。美しいアイドルソングを歌って、雑音を吸収し巨大化する怪物に対抗しました。

及川 2人とは歳が離れているし、恥ずかしいので、最初は辞退したんです。でもやりだしたら、すごく楽しくて。自分で髪の毛をおさげにして昭和風アイドルを装ったり、ダンスの振り付けで「L・O・V・E」ってハンドサインを提案したり。もしかしたら私が一番張り切っていたかもしれません(笑)。

――観ていない方のため詳細は省きますが、物語の大詰めでケガレシアは最期を迎えます。

及川 最初、監督さんから相談されたんですよ。「どんな風に終わりたい?」って。ここまで愛されるとは思ってなかったので、殺しづらくなったって。「悪役なので幸せな形で終わってはいけないです。潔く散るべきです」と言いました。ここは悪の美学に徹したいなって。

撮影中、ケガレシアは泣いちゃいけないって言われていたんですけど、芝居の最後は泣いちゃいました。セットチェンジの間もずっと涙が止まらなかったですね。

――放送終了から10年経ち、物語の10年後を描いた『炎神戦隊ゴーオンジャー10 YEARS GRANDPRIX』(2018年)が製作されました。あれはキャスト陣からの発信で企画がスタートしたそうですね。

及川 グループラインで連絡を取り合って、やりたいねって話になったんです。それで私がA4の紙にやりたいことをまとめて、ブルーの片山(信和)くんと、ゴールドの徳山(秀典)さんと3人でプレゼンしに行きました。会議室の中、プロデューサーさん方々がズラッと並ぶ前で、「私たちはやりたいという気持ちがひとつになっております」って。緊張しましたね(苦笑)。

――劇中ではケガレシアがゴーオンイエローに変身するというサプライズがありました。あれは及川さんのリクエストですか?

及川 いえいえ。台本を見たら「メットオンでおじゃる!」という、変身時の掛け声のセリフがあって。びっくりしましたよ。当時みんな10代~20代前半でしたから、10年後の撮影の時は、ずいぶんと大人になって、すごく頼もしかったです。いまも時々、連絡を取り合っていますね。

――それにしてもゴーオンジャーにご出演されるまで、及川さんはクールでセクシーなイメージでしたが、ずいぶんと変わられました。

及川 そうですね。自分でもよくここまでの三枚目キャラを演じられたなと思います。それまで大人っぽい役ばかりで、プライベートでもクールに振る舞っていましたから。作品を通じ、なにより普段からよく笑うようになり、性格も明るくなりました。

ケガレシアって、ゴーオンジャーにいくらやられても「次こそは!」ってまた戦いに挑む。決してへこたれないんですよね。その不屈な精神に引っ張られたというか。ケガレシアは自分の中にいた、前向きな自分を発見させてくれました。

――TVシリーズ放送以降も、スーパー戦隊シリーズの映画でケガレシアは度々、復活を果たしました。今後もあるかもしれませんね。

及川 本当にあるといいですね。私自身は、いつかガイアーク三大臣によるスピンオフ作品をやりたいんです。また企画書を持っていこうかなと思ったりして(笑)。あと、オンエア中のシリーズ最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』でもケガレシアの出番がないかなーとか"あわよくば"という気持ちを抱いたりしています(笑)。

――どちらも実現したらファンは大喜びしますね。

及川 ただ、もし本当に実現できるなら、なるべく早いといいなって思うんです。というのも、ケガレシアは機械生命体だから歳をとっちゃいけないわけで。それがちょっと。美容と健康に気を遣い、いつかやって来るその日に向けて頑張ろうと思っています(笑)。

●及川奈央(おいかわ・なお)
1981年4月21日生まれ、広島県出身。女優として活動するほか、YouTubeチャンネル『なおチャンネル』で動画をアップしている