カメラマン、Takeo Dec.氏のルーツとは?

いつもはあまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく連載コラム『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』が、『週プレ プラス!』にて好評連載中だ。

"カメラマン側から見た視点"が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4話にわたってお送りする。

第5回目のゲストは、浅倉唯のデビューグラビア『かわいいが渋滞中!!』のほか、武田玲奈1st写真集『short』川崎あや引退写真集『ジャパニーズ グラビア』など、ヤングジャンプでの撮り下ろしも数多く務めるTakeo Dec.(たけお・でぃっせんばー)氏。笑顔溢れる"明るいグラビア"にこだわる理由や、各作品の思い出を語ってもらった。

* * *

――まずは、Takeoさんがカメラに興味を持つまでのお話を聞かせてください。

Takeo わりと子どもの頃から、カメラには興味があったように思います。というのも、小学3年生のとき、親から「成績が良かったらカメラを買ってあげる」と言われて、猛勉強した記憶があるんですよね。よく野球観戦に行っていた子どもだったので、球場で写真が撮れる望遠カメラがほしくて。それで買ってもらったのが、僕がいちばん最初に手にしたカメラだったんです。

――野球がお好きで、写真を撮る方に意識が向くのは面白いですね。

Takeo 珍しいですよね(笑)。「カメラマンになりたい」とまでは思いませんでしたけど、なぜか写真を撮ってみたい気持ちになって。一応、中学生くらいまで少年野球チームにも入っていましたよ。ただ、途中で自分の身体能力の限界に気付いて辞めちゃって。そのタイミングで、自然とカメラへの興味も薄れていきましたね。

――子どもの頃のカメラへの興味は、かなり一時的なものだったんですね。その後、何かにハマることは?

Takeo 特になかったです。本当に無気力な人間でした(笑)。将来何になりたいかを考えることもなく、ダラダラと過ごしていましたね。普通に高校に進学して、高校卒業後は大学に行くこともなく、適当にアルバイトをしながら生活して。

「これからどうしようかなぁ」とボンヤリ思っていた矢先、誕生日プレゼントか何かで、知り合いから写真集をもらったんです。タイトルは忘れてしまいましたが、モノクロで撮られた外国人のスナップ写真集でした。

なぜ知り合いが、僕にその写真集をプレゼントしてくれたのかは分かりません。でも、それを見たときに「あぁ、なんか写真っていいなぁ」と、再び写真に対する興味が湧いてきて。この写真集をプレゼントされていなかったら、今頃、カメラマンになっていなかったかもしれないと思うと、僕にとっては、無くてはならない偶然でしたね。

――言ってしまえば、Takeoさんの人生を変えた一冊でもあるわけですよね。どんな写真集だったのか、ものすごく気になります。その写真集のどんなところに惹かれたのか、覚えていらっしゃいますか?

Takeo 間違いなく人生を変えた一冊ではあるんですけど、写真集の内容が良かったというよりは、「カメラマンになって、写真を撮る仕事ができたら楽しそうだなぁ」くらいの感覚で見ていましたね。特にやりたいこともなかったですし。

そこから、洋書屋でいろんな写真集を見て、いろんなカメラマンを知って。写真の専門学校にも通いはじめました。ただ、こんなことを言っちゃアレですが、専門学校で学んだことは特にないですね(笑)。

――あれっ、そうなんですか? あまり授業に熱中できなかったとか......?

Takeo 教わる内容がイマイチ自分のなかに入ってこなかったんですね。実際にライティングを組んで、授業に来られた女性の被写体の方を撮影させてもらう実習でも、フィルム一本分を撮り切るのが辛くてしょうがなかったです(笑)。「36枚も撮れねぇよ」って。正直なところ、そんな気持ちで通っていました。

――そうだったんですね。逆に、専門学校在学中にプライベートで写真を撮られることは?

Takeo 大判カメラを持って、よくスナップを撮りに行っていました。例えば、曇り空の海岸とか、色のない景色をあえてカラー写真で撮って楽しんでいましたよ。完全に自己満です(笑)。どんなカメラマンになりたいか、ハッキリとした目標はなかったですが、それでも何となく、自分のなかでこだわりを持って、写真と向き合おうとはしていたんでしょうね。

――なるほど。専門学校をご卒業された後は?

Takeo スタジオに就職しました。それこそ、週プレや少年マガジンなどの撮影で使われるような白ホリのスタジオだったので、タレントさんも多くいらっしゃっていましたね。まさか自分が、週プレやマガジンで撮らせてもらうようになるなんて考えることもなく、「タレントさん、みんなかわいいなぁ」とか思いながら、撮影をお手伝いさせてもらっていましたね(笑)。

――そんな偶然もあったんですね(笑)! とはいえ、Takeoさんがカメラマンに興味を持たれた最初のきっかけはモノクロのスナップ。グラビアとは、また違った写真表現でしたよね。

Takeo はい。スタジオを卒業した後、写真家のホンマタカシさんに弟子入りさせてもらうのですが、当時憧れていたのも、やはり師匠であるホンマさんが撮られるようなスナップ写真でしたから。過酷なアシスタント業務を億劫に感じる僕ですら、師匠のアシスタントだったら喜んで付きたいと思えるくらい、今も変わらず、尊敬しているカメラマンのひとりです。

――ホンマさんと言えば、1998年に写真集「TOKYO SUBURBIA 東京郊外」と写真展「東京郊外」で木村伊兵衛賞(1975年に創設された新人を対象とする写真賞。写真界の「芥川賞」とも呼ばれる)を受賞された写真家。比較的クールな写真という印象で、今のTakeoさんの作風とはどこかギャップも感じられますが、そもそもどういう経緯で弟子入りされることになったんですか?

Takeo 僕が勤めていたスタジオに、師匠がよく撮影に来られていたんですよね。そこで師匠の写真を見て、「僕もこんな写真を撮りたいなぁ」と感化されたのがきっかけで、アシスタントにつかせてほしいと直接声をかけさせてもらったんです。アシスタントを募集されていたわけでもなかったので、既存のアシスタントさんが卒業されるまで、1年ほど待っての弟子入りでした。

でもおっしゃる通り、作風のギャップはありますよね。師匠の現場に同行すると、もちろん学びはたくさんあったのですが、結局は「師匠のようには撮れないな」と痛感するばかりでした。

――それはなぜだったんでしょう?

Takeo サッと撮れちゃう人なんですよ、師匠って。人を撮るにしても、その人が表情を構える前に撮り終えてしまうんです。それでひとつの作品として成立させられるのは、師匠の技量やものを見る感性があってこそ。撮り方だけを真似したって、同じようにはなりません。逆に、"師匠の真似をして撮っちゃダメだ"って意識を強く持たされたアシスタント期間でしたね(笑)。

――サッと撮るからこそ、ホンマさんの感性が写真に表れるわけですもんね。ほかの人が真似をしても、ただただ軽い写真にしかならない気がします。ちなみに、ホンマさんのアシスタントを務められたあとは、どうグラビア業界に足を踏み入れることになるのでしょうか。

Takeo 師匠から「女、撮ってみれば?」と助言をいただいたのがきっかけでしたね。僕自身、カメラマンになるにしても"グラビアを撮る"という発想にはなかなか至らなかったですし、畑の違う師匠がそう言われたのも意外で、すごくビックリしました。

――何か理由があって勧められたんでしょうか?

Takeo 恐らく、僕がグラビアをやられているアイドルの方に詳しかったから、だと思いますね。僕からすれば、特別詳しいというより、「みんな知っているだろう」くらいの感覚でしたけど。

例えば、ロケの合間に入った飲食店にオールナイターズ(1983年~1991年放送の深夜番組『オールナイトフジ』に出演していた女子高生たち)の子たちのサインが飾ってあるのを見て、「あ、あれ誰々だよね」なんて言うと、「何でそんなに詳しいんだよ」ってツッコまれることが多々あって。多分、人一倍よくテレビを見ていただけなんですけどね(笑)。

それに加えて、アシスタントを卒業する約束だった3年目の頃、撮り溜めたスナップを師匠に見ていただいたのですが、どうも微妙な反応をされちゃって。師匠の弟子に付いた後、広告やファッション系のカメラマンになっていかれる人はたくさんいましたし、スナップが微妙なんだったら、みんなと違う道に進んだ方が面白いんじゃないかと。そんな理由もあったと思います。

事実、後にも先にも、師匠のもとから独立してグラビアを撮っているカメラマンは、僕だけなんですよね。

――運命的な導きを感じる話ですね。先見の明でグラビアを勧められたホンマさんも、急な方向転換に順応して現にグラビア業界での活躍を手にされたTakeoさんも、スゴいです。

Takeo 当初は「グラビアかぁ。一回やってみるかなぁ」くらいの気持ちでしたよ。スナップやファッションに対する未練も残っていましたしね。「女、撮ってみれば?」と言われはしたものの、女友達も少ないし、どうしたらいいか分からず周りに相談したら、「風俗に行って声かけたらいいじゃん」と言われて(笑)。

実際に、風俗で知り合った女の子を撮らせてもらったこともありましたね。"導き"というと聞こえがいいですけど、ただ流されるがままの人生でしたよ。

Takeo Dec.氏

●Takeo Dec.(たけお・でぃっせんばー)
写真家。1970年生まれ、埼玉県出身。
趣味=無趣味すぎなので流行りのキャンプ始めてみました
写真家・ホンマタカシ氏に師事し、1999年に独立。
週刊プレイボーイのほか、週刊ヤングジャンプ、週刊ヤングマガジン、週刊少年サンデーなど、各誌でグラビアを撮り下ろす。主な作品は、成海璃子『12歳』、佐々木希『nozomi』、前田敦子『あっちゃん』、武田玲奈『short』、篠田麻里子『Memories』(桑島智輝氏と共著)、山田南実『みなみと』、川崎あや『ジャパニーズグラビア』、十味『とーみにこ』、沢口愛華『背伸び』、柏木由紀『Experience』、田村保乃『一歩目』など。明るく笑顔を捉えた写真が特徴で、タレントからの支持も多く集めている

★第二話配信中!「笑顔を撮るカメラマンでありたい。その原点は、女優・佐々木希との出会い。」(第二話以降は『週プレ プラス!』にて、会員限定でお読みいただけます)

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