上智大学を卒業し、IT業界からホストへ転身。デビュー2年目で年間1億2千万円以上を売り上げたビューティー遠坂氏。プログラマー出身という異色の経歴でトップホストにまで上り詰めた彼が歌舞伎町ホストの最新事情を語ってくれた。
――経歴がユニークですが、前職って現在に活きていますか?
遠坂 コンピュータ・プログラムを書いていたので、物事を筋道立てて考えるのが得意なんですよね。だから本(『それってビューティー足りてる? 恋もお金も思いのままになる魔法の技術』)を書いたときは、例えば、「女性がどうしたらいい人と結婚できる」のテーマだったら、恋愛と仕事と運気、美容の4つが大事だなと思って。そこから恋愛について、20個ぐらい必要な項目を並べて、それぞれ文章を書いていくようにしました。
SEO(検索エンジン最適化)の考えも大事だと思います。例えば記事だったら、キャッチーな題名にしないと見てもらえないじゃないですか。同様にホストだったら、注目を集めて、認知度を高めることが、ちゃんと集客できるか、継続して来てくれるかにつながりますよね。
ホストは基本的に「集客」と「継続」と「どれぐらいお金を使ってくれるか」が大事なんですね。姫(女性の顧客)が月に何人来店するか、どれぐらいリピートするか、いくら使ってくれるか。僕はそれを月ごとに点数化していて、その3つの中で何が足りないかを常に考えています。だからこの世界に入ってから早く売れたんだと思います。
――ものすごく考えてらっしゃるんですね。
遠坂 それにお客さんの1年間の、ライフタイムバリューも計算して。だから焦ってシャンパンとか入れてもらわない。年間トータルで売上が高くなるように考えています。売れるには心理学にビジネス的なフレームワークを取り入れるのが大事ですね。
――今はそこまで考えなきゃダメな時代なんですか?
遠坂 昔ってとりあえずイケメンなだけで売れたんですよ。そもそもホストの人数が少なかったし、イケメンで押しが強かったら大丈夫だった。でも今の時代って、めっちゃ優秀なヤツが多くなってきている。この間、現役東大生でホストをしているコと会ったんですけど、そいつは1回の会計で姫様に500万円とか使ってもらってる。ざっくりした話ですが、月1000万円売ったらホストには半分の500万円入る。1年で6000万円じゃないですか。一般企業で上司にガミガミ言われながら月30万円の給料で働くより、ホストやったほうが割が良いんですよね。
数年前、僕が学生時代に起業した頃は、ベンチャーキャピタルが投資してくれたりして、景気もそこまで悪くなかったんだけど、今は冷え込んでると思うんですよね。だったら今、起業したいヤツは、まずホストで稼いで金を貯めてから始めるというやり方もありますよね。
──東大生ホストもいるってことですが、高学歴化が進んでるイメージありますか?
遠坂 僕の知り合いで年間1億2000万円売り上げているのも早稲田大学出身ですし、『Leo』ってお店の社長は慶應大学出身です。頭が良くないと相手の気持ちがわかんないと思うんですよね。姫だって頭がいいやつにお金を出したいし。有利だとは思います。
──ホストクラブって、男性からするとどんな場所かイメージしづらいんですが。
遠坂 承認欲求、つまり「他人から認めてもらいたい、評価されたい」という欲求を満たす場所なんじゃないかって思いますね。だからホストは、女性には「可愛いですね」とか、男性になら、「ここでお金使える(くらい偉い)んですね」とか、相手を「認める」言葉をかける。お客様がシャンパンやブランデーを入れてくれるのは、「(自分は)これだけのお金を使えますよ」って見せて、承認欲求を満たしたいからです。
そこを褒めてあげるのがホストの仕事なんですよ。で、ホストも1位を取って承認欲求を満たすし、オーナーも、この店はすごいって評判が立って承認欲求が満たされる。全ての人が承認欲求を満たせる場所なんです。しかも、イケメンが承認してくれる場所、承認屋とでも言いますか(笑)。
でも、承認欲求を満たしたいって思うだけのヤツは稼げないんですよ。自分の承認欲求を満たそうとして、来てくれた女のコに無理させちゃったりすると、長続きしないから。じゃなくて、女のコの承認欲求を満たしてあげて、ホストクラブの価値を上げようするのが大事。そうすると女のコからの指名が続くし、店では出世するし。
――遠坂さんの周りで、最近、起きた話を聞きたいです。
遠坂 初指名で300万円使ってくれた方とかいましたね。SNSをずっと見ていたらしく、ある日、「頑張ってるから応援したい」って、DM(ダイレクトメッセージ)が来て。
――SNSの効果って大きいんですね。
遠坂 コロナでSNSの力がさらに強くなりましたね。ホストは現金を持ってるんで、SNS制作にめっちゃ金をかけられるんですよ。しかも芸能人ほどコンプライアンスを細かく気にしなくていいし、バズる動画を作りやすい。
――ちなみにYou Tube、TikTokとか、いろいろありますが、何が効果ありますか?
遠坂 You Tubeはコンテンツを置いとくだけでずっと回り続けるんで、予算があるならYou Tubeが1番強いですね。インスタは写真だけでいいからラクかな。TikTokも姫の悩みに答えてとか、接客を見せるとか、ある程度形が決まってるからラクですね。Twitterは文章を書く才能が必要なんで1番難しいなと思います。まあ僕は文章書くのが好きだから気になんないですけど。
――撮影でどのアプリ使うとかあるんですか。
遠坂 ノーマルカメラで撮って、「Meitu(メイツ)」で加工するのが人気ですね。
――やっぱりSNSは大事なんですね。
遠坂 でもSNSは色々ある集客手段の一部でしかないですよ。それよりかは姫を継続して来店させる方が大事ですね。会社の営業とかもそうじゃないですか? 新規も必要ですけど、既存の客を大事にしないと。そこから新たな客を紹介してもらることもあるし。
ずっと来てくれているコを満足させて、単価を上げてもらうほうが売上げは大きくなります。トップクラスのビジネスマンも、ホストもたぶん考えは同じですよ。今のお客さんを上客にするのも自分自身。そこって昼職も変わんないんですよね。
――最近は海外からの観光客が増えてますが、ホストクラブにも来るんですか?
遠坂 うちの店には結構来ますね。英語が喋れるホストもいるので。円安でお得感が高いんじゃないですか? 100万円ぐらいの会計で「安い」って言う人もいるし、特に中国の方にはめっちゃ使う人いますね。月800万円使ったお客さんも。資産家の娘さんで、留学で日本に来ているコらしい。アニメ好きなんですが、アニメキャラとホストってちょっとカブるみたいですよね。
――いろんな人が来るんですね。
遠坂 お客さんが多様化しましたね。昔ながらに、会社社長とか風俗関係で働いてるコがストレス発散に来ることも多いけど、今だったらインフルエンサーのコの使いっぷりが派手です。女のコが手に入れた新しい「稼ぎ方」ですよね。夜の仕事よりもはるかに稼げるコが出てきています。
――ホスト同士の格差はどうなんですか?
遠坂 大きいです。美女と遊んで、豪華な食事をして、超高級マンションに住んで、毎月500万円とか稼ぐヤツもいれば月収10万円で女のコに飛ばれて借金漬けというヤツの噂も聞く。ホストクラブ自体の格差もすごいですね。資金力があるホストクラブって、内装に億のお金をかける。やっぱいい店で働きたいじゃないですか。そういうところに人材も集まるし、客もどんどん来る。すべてに二極化が進んでいるように感じますね。
――コロナの影響はどうだったんですか?
遠坂 やはり二極化ですね。ホストもホステスも、大きく落ちこんだ人と変わらず稼げた人とに分かれた。当初はともかく、最終的には人気があるホストにはそれほど影響なかったようです。僕も正直売り上げは変わらなかったです。
でも落ち着いたことで、伸び具合がすごいです。去年ぐらいまでは上半期で2億円売り上げた人なんてほぼいなかったけど、今年はいるし、1億円に到達したホストは、めちゃくちゃ多いです。今の若者はみんなホストやった方がいいんじゃないですか?
まあ夜の世界が盛り上がっているのは、不景気もあると思っていて、最低賃金も上がってないから、女のコとか夜職やっちゃうじゃないですか。それでホストに来るコが増えてるなっていうのも感じますね。昼の会社価値が下がってるせいで、相対的にホストやキャバクラが強くなってるなって感じます。
――遠坂さんが最近、テンションのあがった買い物ってありますか?
遠坂 自転車を買い換えたぐらいですね。タクシー代を考えたら、自転車が安上がりかな、と思いまして。あとはパソコンも新品にしました。
――意外と地味ですね。
遠坂 今どきのホストって高級車とか買わないです。稼いだ金をパッと使おうぜとかしなくなった。それより投資したりして資産を増やす。2年連続1億円売った友人のホストも、出勤は自転車だし、株式投資で稼いでます。ロレックスは買うけど投資の対象。僕もほとんど貯めています。「貯金を残して死ぬやつはバカ」って言うみたいだけど、別にいいと思うんですよ。僕は、通帳を見てると気持ちが落ち着きます。
今のZ世代って、時計や車が欲しいんじゃなくて、他人からの承認が欲しいんだと思います。心のフォロワー数が欲しいんですよ。心の寂しさを埋めたい。目に見えないものの価値が上がったんだと思いますね。200万円でカルティエを買うより、200万円ホストクラブで使ってホストに承認されたいし、愛されたい。
――コロナを通じて、よりそれが進んだ。
遠坂 そうですね。感情がお金になる時代になった。結局人って感情でモノを買うんで、その感情を動かせたらお金を得られるし、無駄に感情を動かされちゃう人はお金を稼げない。SNSとかもそうですよ。自分は冷静にいいコンテンツを作って、人の感情を動かさなきゃいけない。お金持ちは感情を動かすのが上手くて、お金持ちじゃないやつは感情を動かされやすいっていう、もうシンプルな流れだと思うんです。
ホストクラブがそう。泣いてしまう女のコがいれば、泣くホストもいるし、めっちゃ喜ぶホストがいるし。そういうドラマが40坪ぐらいの空間で起きている。頑張って稼いで、泣いて笑ってっていう、その感情の流れを感じる空間がホストクラブ。そこにお金が発生する時代になったと感じます。
――面白いですね。みんなホストをやるべきかも。
遠坂 まあでもぶっちゃけ、本当に優秀な人材はホストクラブで働いちゃいけないですよ。新しい産業を作るべき。でも稼げないからこっちに来ちゃう。国の問題じゃないですかね? 若いヤツに給料を払わないせいでしょう。ホストクラブって、ある意味社会の縮図ですね。
●ビューティー遠坂(びゅーてぃーとおさか)
2011年上智大学入学、在学中にIT関連で起業し、事業譲渡などを経てホストの世界へ。
1400人以上が在籍する日本最大級のホストクラブブランド『L's collection(エルコレ)』に入り、1年目から月間最高売上3000万円を超える成績を上げる。現在、株式会社Gilgamesh代表として経営コンサルティング、電子出版、タレントプロデュース業なども手がける。
著書『それってビューティー足りてる? 恋もお金も思いのままになる魔法の技術』が好評発売中!
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