マジメにバリバリ仕事をしていても、ある日突然、襲われるかもしれない病気やケガといった不測の事態。

病状の不安に加え、高額な医療費の支払い、そして来月からの収入はどうなるのか―? そんなときに頼りになるのが社会保障の制度だ。

例えば、プライベートでの病気やケガでも、社会保険に加入していれば「傷病手当金」がもらえることを存知だろうか?

これは、標準報酬日額の3分の2を受給できる制度。仕事を休んで療養した期間が3日以上継続した場合は、有給や公休で給料をもらっていても、4日目から手当金が支給される。期間は最長で1年6ヵ月だ。

正社員以外、契約社員や派遣社員はもとより、アルバイトの場合でも会社の健康保険に入っているともらえる場合がある。まずは、給料から「社会保険」が天引きされているか、毎月の明細を確認してみよう。

では、仕事中や通勤中にケガをしたり病気になったときはどうか? この場合は、労災保険の「療養(補償)給付」の適用となり、医療費は全額労災保険が負担してくれる。

このとき気をつけたいのは、病院の窓口で健康保険証を出してはダメだということ。健康保険証で診察を受けたら自己負担は3割。健康保険証を出すと、無駄に医療費を自腹払いすることになるのだ。

休業4日目から日給の約80%が支給

もうひとつ注意したいのは、“労災指定医療機関”に行って「労災保険対象のケガや病気」だと言うこと。これで後ほど申請の書類を病院に提出するだけで、窓口で医療費を支払わずに治療を受けられる。

労災指定病院以外で受診した場合も給付されるが、自分で全額を支払った後に請求、払い戻しとタイムラグがあるため、医療費が高額で貯蓄に不安があると苦しくなる場合も。まず行くのは労災指定病院、と覚えておくべし!

また、「療養補償」を給付されている状態であれば、そのために働くことができないはず。その上で、賃金が支払われていない場合は、労災保険による「休業(補償)給付」の対象になる。

支給額は休業1日につき<給付基礎日額60%+特別支給金20%>と、ほぼ日給の80%で非課税。給付開始は休業4日目からだが、休業3日目までは事業主が給付前の賃金(休業前までの給料)の一日平均の60%を支払うことが労働基準法で決まっている。労災保険からの支給期間は日数制限がなく、一定期間が過ぎて完治せずに症状が一定の状態にあると、さらに手厚い補償まである。

これらの労災保険の給付は、派遣社員やアルバイトなど雇用状況にかかわらず労働者全員が適用される。逆に、労働者をひとりでも使用する企業は労災保険に加入していなければならない(個人経営の農業や林業、条件に満たない水産業は除く)。

ただ、残念ながら明らかな労災案件でも、あえて使えることを言わなかったり、制度そのものをよく知らない事業主がいる。労働者の正当な権利なので、自分から申し出て交渉するか、らちが明かない場合は労働基準監督署に相談しよう。

(取材・文/渡邉裕美)