日本では虫歯に次いで罹患者の多い“痔”。なんと、成人の3人に1人は“痔主”という説もあるほどだ。

しかもその痔は、今まさにこの時期、春から夏にかけてがもっとも発症しやすいことをご存知だったろうか?

まずは痔の基礎知識を、親子3代にわたり痔の治療に携わってきた、平田肛門科医院の平田雅彦院長に解説してもらった。

「痔には大きく分けて3種類あります。イボ状の腫れができる『イボ痔(痔核)』、肛門の皮膚が切れる『切れ痔(裂肛)』、膿(うみ)がたまって肛門付近に穴が開く『痔ろう』です」

ではなぜ、この季節に発症しやすいのか。平田院長が続ける。

「最近多い症例は新入社員の痔ろう。ストレスと疲労から免疫力が下がり、肛門の抵抗力が弱まったところに下痢を繰り返し、発症しているようです。特に春先は寒暖差もあり誰もが免疫力を下げやすいし、夏も冷房で腸が冷えて異常便を引き起こしやすい。つまり、日本人全員が痔にかかりやすい季節がやって来るのです」

“痔主”にその症例を聞くと寒気がするものばかり。ピリッと肛門が切れる、座布団が真っ赤に染まったる(切れ痔)、肛門から飛び出たビー玉大のイボの接触する痛みで座れなくなる(イボ痔)など散々。

さらに“キングオブ痔”といわれる痔ろうともなれば、治療中、排便物が垂れ流しになるため、生理用ナプキンが必須なんだそうだ。

もはや想像するだけでもげんなり。そうならないためにも、前出の平田院長に痔の予防策を聞いた。

「少なくとも2日に1回は排便をし、トイレに長居しない。排便後は肛門を洗い流して清潔に保つことです。そして、デスクワーク中は1時間に1回は立ち上がり数歩でいいので歩きましょう。酒や香辛料などの多量摂取は控え、なるべく疲労やストレスをためないことですね。痔の気がなくても検診を行なえば痔が見つかる場合もあります。どうか健康な生活習慣を身につけ、痔にならない、痔を繰り返さない人生を送ってください」

まさに“国民病”ともいえる痔。地獄の苦しみを味わいたくなければ、まず予防だ。

(取材/河合桃子)