マツダが満を持してコンパクトSUV市場に投入したCX-3

マツダが満を持してコンパクトSUV市場に投入した「CX-3」は、他メーカーの同車種と比較してもデザイン・スペックともに遜色ない1台だ。では、肝心の走りはどうか?

やはり、CX-3の走りはマツダファンの期待を裏切らない。素手と路面が直結されたような濃厚かつ正確なステアリングフィールは、さすがマツダ。

オタク的にいうと、ブレーキングでジワッと絶妙に鼻先を沈めて、適度にロールしながら四輪がきれいに接地したコーナリング姿勢に「この瞬間がマツダだね!」と思わずうなる。

このクラスは各国のメーカーがカッコよさや独自の走り論を競うグローバル激戦区なので、同タイプの日産「ジューク」やホンダ「ヴェゼル」の走りだって悪くはない。ただ、最後発(=最新)にして屈指のオタク作品のCX-3と比較すると、ヴェゼルは全体的にカキカキと硬すぎて潤いが不足気味…、ジュークは腰高でドタバタが目立ってしまう。

また、今やマツダのキラーアイテムであるディーゼルエンジンは、始動直後や発進加速で「ガラガラ」という特有の騒音がよくも悪くも目立つ。これが生理的に嫌いという人も少なくない。

そこで、CX-3では「ナチュラルサウンドスムーザー」という新機軸を放り込んできた。なんか仰々しいネーミングだが、モノ自体はエンジン内部のピストンピンに組み込まれたオモリ。このオモリが特定の振動周波数を打ち消す働きをして、前記のディーゼル特有の騒音を軽減するというのだ。

実際、これを組み込んだCX-3はアイドルストップからの再始動や発進では明らかに静かで滑らかになる。オモリひとつで…とは、まさに目からウロコの技術ではあるんだが、その効果はあくまで車速40キロ前後未満に限定されるので、ディーゼル嫌いが改心するほどではない。

「削り残し」みたいな部分は是正されるはず!

今、圧倒的に新しいカッコよさと、それに負けない高級感を持つマツダ「CX-3」

しかも、ナチュラルサウンドスムーザーは回生充電システムと抱き合わせのオプション(6万4800円)なので、わざわざ選ぶ価値があるかどうかビミョー。ディーゼルサウンドは好きな人には頼もしくて心地いいものだし、こういうものは全車標準化が理想だが、それなりに高価なのか、現時点では様子見っぽい感じだ。

まあ、発売ホヤホヤのCX-3は、改良・熟成された兄貴分のCX-5やアテンザ、あるいはアクセラと比較すると「もうひと声!」と言いたくなる部分もなくはない。

例えば、FFと4WDで乗り心地の差が大きい(FFのほうが明らかに軽快で快適)。それに整備された高速道路では滑るような乗り心地なのに、四輪バラバラに揺すられる荒れた路面ではグレードを問わずにユッサユッサしたり、主力の18インチタイヤ車が圧倒的にカッコいいが、走ると安価な16インチ車のほうが明らかに優秀だったり…と。

もちろんマツダのことだから、こういう「削り残し」みたいなところはすぐに是正されるはず。

ただ、今のところは4WDよりFF、オートマよりマニュアル、18インチより16インチのほう…つまり、大ざっぱにいうと安価な仕様のほうが乗り心地もパリッと軽快な走りも完成度が高い。

…といった重箱のスミはあっても、カッコよさ、高級感、存在感、クオリティ、一度体験したらやみつきになる理想のドラポジ、マニアックな走り、そして充実した安全装備…と、総合力ではCX-3が国産コンパクトSUVのトップと断言していい。

ディーゼル一本のCX-3が、販売台数でヴェゼルを超えられるかは不透明。しかし、マツダ以外の全メーカーがCX-3に「ヤべッ!」と危機感を抱いていることはまず間違いない。

(取材/佐野弘宗 撮影/有高唯之)