これがレ・マシーン・ド・リルにある機械仕掛けの象です! 胸のあたりに操縦席があります
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。フランスに旅した彼女が、現代美術の街・ナントでオススメしたいスポットとはー?

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先日、ドイツのヴッパタールという街に行ったときのことをお話ししました。お目当ての「ヴッパタール空中鉄道」には乗れなかったわけですが......。その後、ずっと行きたかったフランスのとある街も回ってきました。

それが、フランス西部に位置するロワール地方最大の都市、ナントです。世界史的にも「ナントの勅令」で知られる街ですが、有名な「ブルターニュ大公城」という国内屈指の観光スポットもあり、"フランス人が住みたい街ナンバーワン"にも選ばれたことがあるそうです。映画が好きな方は、「ナント三大陸映画祭」が開かれる街としてもご存じかもしれませんね。

そんなナントですが、近年は現代アートの街としても発展しています。街中の至る所にパブリックアートが設置されていて、夏になると大規模な芸術祭も開かれます。

そんなナントの現代アートの中でも国際的に有名なのが「レ・マシーン・ド・リル」という施設。ナントを拠点に活動するラ・マシンというクリエイター集団が造ったもので、遊園地と美術館が合体したような他に類を見ない場所です。

その一番のウリになっているのが全長12m、体重50tの機械仕掛けの"象"。木と鉄でできているんですが、最大50人近くの人間を乗せて街中を歩き回るんです。

しかも、滑らかに鼻を揺らしながら目をぱちくりとさせるなど、細部まで精巧に作り込まれた機構は間近で見れば見るほどよくできています。思わず、関節部分ばかり写真を撮ってしまいました。

実はナントは"SFの父"と呼ばれるジュール・ヴェルヌの故郷で、かつては工業地帯として栄えた都市です。そのSFと工業都市の世界観にレオナルド・ダ・ヴィンチの機械工学の要素をプラスしたのが、このレ・マシーン・ド・リルなんです。全体的にスチームパンクの趣があって、私の大好きな世界でした。

象のほかにも、ギャラリーと呼ばれる区画には巨大な昆虫や人を乗せて飛ぶフェニックス、はては機械でできた植物など、さまざまな作品が展示されていました。そのどれもがただの置物ではなく、動いたり乗れたりするというところがすごいですよね。

さらに、象に次ぐウリになっているのがメリーゴーラウンド。3階建てのこれまた巨大な構造物なんですが、そこで回っているのは馬や馬車ではなく、巨大な深海生物、カメレオン、ガイコツなどグロめな生き物(?)ばかりなんです。とてもカッコいいんですが、怖がって乗ろうとしない子供もいましたね(笑)。

そんなレ・マシーン・ド・リルのほかにも、街を歩いていると現代的ですごくカッコいい建物を見つけたので調べてみたら、フランスを代表する建築家、ジャン・ヌーヴェルが設計した裁判所だったりして驚きました。

こういうふうに言葉で説明してもイメージするのが難しいと思うんですが、とにかく見どころがたっぷりある街です。パリからTGV(高速鉄道)で2時間半くらいで行けるので、日帰りも可能。ただし、レ・マシーン・ド・リルに関してはシーズンオフは午後からしか開いていなかったりするので、一応調べてから行ってくださいね。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J‐WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。私が"銀釜"に乗ったというコラムを読んでホリプロの南田裕介さんがうらやましがっていたという話を編集部の方から聞きましたが、企画を出せば乗れると思いますよ

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!