これが西武鉄道の新型特急「ラビュー」の顔です!

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は鉄道マニアの彼女が、西武鉄道の新型特急車両「ラビュー」の魅力を語ってくれた。

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今年3月、西武鉄道の新型特急車両「ラビュー」がデビューしました。レッドアローに続く西武のフラッグシップトレインになります。私も先日、やっと乗ることができました。

まず、目を引かれるのが未来感のあるデザイン。運転席の窓には3次元曲面ガラスが使用されていて、球面のような外観をしています。実際に横から見ると、大きな弾丸か、あるいは昔の宇宙服のようでびっくりしました。新しいジャンルの電車の顔ですね。

アルミ素材にシルバーの塗装を施した外装は、周りの景色を反射して、風景に溶け込むように設計されています。ただ、一緒に行った母親は「反射で写真が撮りづらい」とぼやいていたので、撮り鉄には厄介な車両なのかもしれません(苦笑)。

もうひとつの特徴は、客席の窓が縦1.35m×横1.58mと、とても大きいこと。肘掛けの下までガラス張りなので、まるで椅子だけで走っているような感覚になりました。市街地からだんだん離れ、森の中に入っていく西武秩父線の沿線の景色を大パノラマで味わうことができます。

乗り心地もほんとに滑らかで、驚くくらい静か。レッドアローと比べると、同じレールの上を走っているとは思えないくらいです。

内装は、日本の電車では珍しい黄色を基調とした明るい空間になっています。もともと西武といえば黄色い車両のイメージがあるので、それを生かしてデザインしたそうです。

座席の表面は、ベロアとタオル地の間のようなモコモコ感のある素材で、70年代の家具のようなレトロな味わいがあります。体をしっかり包み込む形状が、若干Zガンダムっぽさも感じさせますね。

また、窓にカーテンがついていたり、床にカーペットが敷かれていたりと、まるでリビングにいるかのような感覚にさせてくれます。このラビューは、建築家の妹島和世さんの監修の下、建築や建物の内装に関わるデザイナーの方々が手がけているので、今までの電車の工業デザインとはかなり雰囲気が違います。

車内にはWi-Fiやコンセントもあり、至れり尽くせりのこの新型特急。ぜひ皆さんにも乗ってほしいんですが......。ひとつモヤモヤしていることがあります。

途中の飯能駅では、スイッチバックが行なわれます。ここで車両の走る向きが逆になるのですが、椅子を回転させるかどうかは乗客任せ。今回、乗車した際は、私の後ろの人たち含め誰も席を回さなかったので、私も周りに合わせてそのまま座っていました。

しかし、後から乗ってきた夫婦が、私の前の席を回転させて座ってしまったんです! 結果、まるで家族のようにその夫婦と向かい合わせに過ごすという、不思議な時間を味わいました。

実は、前にも飯能で同じ目に遭っている人を目撃したことがあります。やっぱり車内の空気に任せていると、こういうことが起こりうるんだな、と思いました。

この際、車内放送で「声をかけ合って席を回転させてください」とアナウンスし、椅子を進行方向に合わせるという決まりにするのはどうでしょうか。そうすれば、知らない家族の一員みたいにされた私のような悲劇は免れられると思います。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21時~)などにレギュラー出演中。ニューレッドアローのヘッドレストには「NRA」という頭文字が書かれているが、これは「全米ライフル協会」の略称でもあるので、アメリカ人はドキッとしてしまう

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!