カウチサーフィンで地元の人と旅人たちが出会った!?

引き続き「#おうちたび」ということで、昨年のスペイン旅をお届けしたいと思います。

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サン・セバスチャンから北スペインをぐるりと周り、ビルバオまでやってきた。

ビルバオはバスク地方の中心都市。かつては鉄鋼と造船で栄えた工業都市だったが、1980年代に衰退。深刻な不況に見舞われたが、現在は開発が進みアートにより街が再生し注目を浴びている。

ビルバオの中心部を流れるネルビオン川

サルベ橋から見えるユニークな建築はビルバオ一番の観光名所「グッゲンハイム美術館」

バスで到着したターミナルから宿までは2kmあり、ろくにご飯を食べていなかった私はスーパーでグラノーラを買って、お行儀悪く歩きながら貪り食べた。そんな舐めた調子で歩いていたが、都市になるとこれまでの治安の良い小さな村や街とは少し様子が違った。

ビルバオの街中。漢字の看板も見える

歩く途中ポツポツと移民を目にしたが、そこは「サンフランシスコ通り」と言って治安が悪いことで知られ、私の宿はまさにそこにあった。家賃の問題であろうか、安宿というのは大体そのようなところにある。中華系の店が並び、コワモテの移民系男子たちがタムロして、こちらを睨んでいる。ちょっとイタリアのナポリを思い出した。

「ああ、久々のこの感じ。怖い......」

私は身の周りの貴重品に意識を置き、リュックのハーネスをギュっと握った。耳がピーンと立つような感覚。ここの様子をカメラに納めたい思いもあるが、そんなリスキーなことをしている場合ではない。一刻も早く宿に着こう。私は早歩きで男たちの視線の中を通り過ぎた。

無事に宿に着き一呼吸。そして今夜の寝床である6人部屋のドアを開けると、そこにはまさかのケイトがいた。

ケイトは3つ前の街、パンプローナで出会ったロシア人の巡礼者。私がバスでやってきた道を歩いてきたかと思うとなんだか感動。しかも同じ部屋で隣のベッドってすごい偶然じゃない!?

私たちはワインで再会の乾杯をすると、ケイトはまだ疲れている様子で部屋に戻っていった。そりゃそうだ。歩きすぎているもの。

巡礼中のケイトと偶然の再会!

私はというと、ここで久々にカウチサーフィン(旅人と現地の人がつながるコミュニティーアプリ)を利用。面白そうなイベントでもないかと検索したら、「フライデーズサマーミートアップ」というものを見つけ、すでに数人の参加者が確認できた。

「なになに、20時から旧市街のバルでピンチョスを食べたり飲んだりしようって」

私はそのイベントの参加をポチり、宿を出た。旧市街はなかなか規模が大きくたくさんのレストランやバルがあり、賑わっている。待ち合わせは新広場の「Charly」というバルだった。

待ち合わせ場所のバル「Charly」

主催者はエイドリアンという現地人で、参加者も半分以上は地元の人。そこに私のような旅人が数人、日本人やオランダ人、イギリス人などが集まった。

時間はみんなバラバラに集まるのがヨーロッパっぽい。遅れてくる人もいれば、雰囲気になじめずいなくなる人など、入れ替わり立ち替わり。ビールを片手に自己紹介や雑談を楽しんだ。

バルでのミートアップは良い。各々が好きなピンチョスやビールを買って、その場でお会計。「一杯おごるよ」的なことも気軽にできるのは便利で(全部はおごれないけど......ってときも、スマートに使えていい)、日本にもバルのようなシステムのお店が流行ればいいのにとよく思う。

ビールのサイズも様々でありがたい! はしごするかもだから小さいのにしたよ!

とりあえず、最初にそろったみんなで乾杯!

そして時間によって参加者が入れ変わり、店をはしごする途中には地元のロシという女子が街案内もしてくれた。

「これは1727年に建てられたジョン宮殿。ベゴニャの聖母子像が祀られてるでしょう。そして対面にあるレストラン『Amarena』の角に立つと、建物の隙間からベゴニャ教会が見えるのよ!」

レストランの角の足元には星のようなマークがあり、言われた通りそこに立つと、遠くの丘の上にある美しい「ベゴニャ教会」が見えるという仕掛けになっていた。観光客もあまり知らないのだろうか、混み合うこともなく、私は教会を眺めることができた。

またそのレストランの壁には「1983年8月26日の洪水でここまで水が達した」と記されたプレートや、ビルバオの慈善団体に寄付ができるコイン投入口もあった。

ジョン宮殿。指を指しているところに小さくベゴニャ教会が見える!

対面のレストラン「Amarena」の地面の印に立つと...

説明してくれたのはロシというとっても優しい女の子

「よし! 次は1ユーロビールを飲みに行くぞ! 1ユーロだぞ! ついてこい!」

飲み隊長オルカの一声で、今度は旧市街でも激安でビールが飲めるバー「SKULL」へ。メタルミュージックの店で、店内は激しい音楽が流れていた。ビールの値段も気合いの1ユーロ! ちょっとグラスが半乾きのニオイがしたけど、安いから許す!(笑)

ビールが1ユーロのメタルミュージックバー

「じゃあ、次は踊りに行くぞ!

今度は小さなクラブのような店に行くと、レゲトンが流れていた。続いてラテンミュージックがかかると、みんなのパルマ(手拍子)が始まった。パルマには乾いた高い音や、低く厚みのある音など種類があり、またリズムも色々だ。クラブでパルマを叩いて遊ぶというのは、なんともスペインらしい楽しみ方である。

地元の人のおかげで、無料街案内やお店のお得情報を知れたり、お国柄を感じる遊び方ができるのはとてもありがたく、旅人冥利に尽きるってもんだ。

踊り疲れてお腹が減ったら、シメはラーメンではなく、またバルへ行き、シメのピンチョス! 紙ナプキンで指を拭くと、そこにはバスク語が書かれていた。

「来てくれてありがとう!」

どうやらビルバオには歓迎されているっぽい。この街とは相性が良さそうだ。

クラブでもうひとり女子が加わって一緒に踊る

飲んだ後のシメのピンチョス

●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】
女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。Youtube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。
【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】

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