ついにニッポンご開帳となったホンダe。早速、オザワが東京・青山のホンダ本社に特攻。ホンダeと濃厚接触!

ホンダが初のEV(電気自動車)を発表して話題だ。存在感を高める米テスラにニッポン勢は追いつける? 最前線に突撃した自動車ジャーナリストの小沢コージが解説する。

■話題のホンダeを独走チェック!

よっ、待ってました! 8月27日、日産アリアと並ぶ待望のニッポン代表ピュアEV、新型ホンダeがついに発表されたぜ!

ホンダeの市販計画が国内で公になったのは昨年10月の東京モーターショー。あれから新型コロナの感染拡大を挟んで約10ヵ月。国内発売は10月30日なのでまだ本格試乗こそ許されていないが、アウトラインを見ただけでも期待はムクムク膨らんだ。

実物のホンダeを目の前にしてまずオザワが思ったのは「うわっ、小さっ!」。全長は3895㎜と4m以下で、コンパクトカーのホンダフィットよりも短い。にもかかわらずスペース効率は悪くない。"それなりに"と注釈は入るが大人もしっかり座れる。

外観は独特の凝縮感とキュートさを備える。マスクは丸目2灯が目を引く。レトロかつロボットっぽい。現行フィットもそうだが今のホンダ車は乗る人が親しみやすいヒューマンデザインが多い。ある意味でホンダeはその象徴とも言えるだろう。

インテリアは非常にクオリティが高い。インパネはシンプルな直線基調でウッド風パネルの質感も高く、安っぽさはみじんもない。何よりハイテクの象徴たる超ワイドスクリーンがスゴすぎる。12.3インチのタッチスクリーンを含む5枚のモニターがズラリと並ぶ。ナビ情報や車両情報はもちろんのこと、車内エンターテインメントも超充実している。コレだけでもホンダeが欲しくなりそう。

さらにコンパクトカークラス初のサイドカメラミラーシステムやデジタルインナーミラーも搭載。メカ好きはビンビン確実だ!

AI技術などをぶっ込んだ巨大インフォテインメントシステムの迫力はマジでハンパないリアにはモーターを搭載。通常の状態でも折りたたんだベビーカーを積み込める

走りも間違いなくよさそう。まずホンダeは珍しいリアモーター車。しかもコンパクトで小回り性がいい。ステアリングを切った以上にグイグイ曲がりスポーツカー的な走りが味わえるはずだ。

モーターパワーも十分で、最大トルクはなんと3Lガソリンエンジン並みの315Nmを誇り、最高出力は2グレードあって標準モデルが136PSで、上級のアドバンスが154PSだ。どちらもスペック的にはガチで速い。

だが、ホンダeには問題がある。航続距離と価格だ。電池容量は35.5kWhと割り切り、航続距離は標準で283㎞と短め。価格も標準モデルが451万円、アドバンスが495万円とけっこうなお値段。マジな話、欧州価格より100万円ほど高い。しかも国内販売台数は年間1000台とお試し販売的だ。

ホンダeのメインターゲットは間違いなくCAFE(企業内平均燃費)規制が厳しくなる欧州。日本市場は二の次なのだ。とはいえ初期ロットは完売。今後、日本で受注が増えれば販売含めていろいろ見直すはず。それに期待!

■日産アリアは日本EVの新エース

一方、7月に発表された日産アリア。コチラはホンダとは覚悟がまったく違う。2010年に世界戦略EVの初代リーフを発売した日産だが、販売は芳しくなかった。その辛苦とEVのパイオニアたる意地がアリアで大爆発! ズバリ、標的は米テスラだ。 

テスラは2012年のモデルS発売以来、EV販売の常識を覆してきたEVベンチャー。最量販EVのモデル3は昨年グローバルでおそらく20万台を売った。テスラの優位性はバッテリーの大容量搭載とプレミアム化にある。

片や日本を代表するEV、日産リーフはガソリン車との違いを明確に打ち出せなかったように感じる。当然、日産もその教訓をしっかり学んでいる。

7月15日にご開帳された日産初のクロスオーバーEVアリアと並ぶ内田誠社長兼CEO(右)と(左)アシュワニ・グプタCOO(最高執行責任者)。新生日産の象徴車。発売は来年中頃か

最大のポイントはアリアのボディ骨格と電池搭載量だ。リーフとは違ってプラットフォームをEV専用に完全新作。ボディサイズは全長ほぼ4.6mのSUVフォルム。

さらにスゴいのは電池搭載量で、標準で65kWh、ロングレンジ車で90kWhとテスラ顔負け。それだけじゃない。駆動方式はそれぞれFFと4WDが選べ、高効率のFFの90kWhモデルは航続距離610㎞とテスラモデル3を完全に凌駕する。

アリアは日産の知見と技術を総動員。ハンズフリー運転可能のセミ自動運転技術「プロパイロット2.0」をグレードにより装備し、同時に日産自慢の加減速自由自在のワンペダル運転も可能。さらには日産EV初の4WDシステム「e-4ORCE」までぶっ込まれている。

コイツはテスラにもない日産が誇る電動4WD技術で、90kWh搭載車の場合、システム出力は394PS、トルクは驚愕の600Nm。時速100キロ到達はスポーツカー顔負けの5.1秒を誇る。しかしながら決してギンギンのクルマではない。ノーズダイブ制御やコーナリング制御により「乗る人を酔わせない」という究極のドライビングも実現しているのだ。

アリアの全長は約4.6mとデカく、大人5名がゆったり座れるだけでなくラゲッジもFF仕様で466Lと大容量。エクステリアもインテリアも日本らしく奥ゆかしく優雅なもの。ロボット的なテスラとは一線を画す。

何より標準で65kWhとホンダeの2倍に近い電池を持ちながら約500万円スタートの価格はスゴい。日産はココでイッキにテスラに追いつき追い越すかも。まさにニッポンEV界の新エース候補だ!

日産リーフ。現行モデルは2017年デビュー。世界累計販売台数は45万台超。運転支援プロパイロットも搭載する。価格332万6400~499万8400円

テスラ モデル3。新型コロナの感染拡大のなかでも黒字をキープする米テスラの量販車。日本では昨年9月にデリバリー開始。価格511万~717万3000円

■ソニーEVの真の狙いとは!?

そして大きな話題を集めているもうひとつの和製EVがソニービジョンSだ。家電の巨人ソニーが今年1月に米で開催されたデジタル見本市「CES」で電撃ご開帳したEVプロトタイプ。ソニーは市販化を否定しているが、実物はとにかく超魅力的な一台に仕上がっていた!

実はオザワ、8月にソニーの品川本社でチョイ乗りする機会があったのだが、まず気になったのはそのエクステリアデザイン。ボディサイズは全長4895㎜×全幅1900㎜×全高1450㎜。1月にCESの会場で見たときとかなり印象が違った。自然光の下で眺めるとより艶めかしくて塊感があった。

聞けば造形はソニーの社内デザイナーが担当。家電のノウハウがぎっしり詰まっている。例えばノーズのハチマキのようなLEDリングはコンデンサーをイメージした造形で、スマホ操作によるドアロック開閉に連動して光る。操作スイッチ類も滑らかで高級オーディオのツマミのよう。

肝心の走りだが前後に200kWのモーターを持つパワフルEVだけに発進は滑らか。しかし乗り心地はガタガタと立てつけ音が目立ち、ぶっちゃけ、まだ初期のプロトタイプという感じだった。

だが、車両製作を担当するのはオーストリアの少量生産会社のマグナ・シュタイヤーで、公道実験用のテストカーもできるという。楽しみ。

SONY VISION‐S。今年1月の米CESでご開帳。大きな話題を呼んだ。車両には高度な運転支援を実現するためにソニーが開発した車載向けの各種センサーを合計33個配置。周囲360度を把握する内装で目を引くのは3枚の液晶ディスプレイ。中央と助手席側に音楽や映像コンテンツを表示する

気になるのは今回ソニーがビジョンSをつくった真意だ。理由はふたつあった。ひとつは今のソニーの大黒柱たるセンサー事業の拡大。有名な話だが、ソニーはカメラやスマホ用のイメージセンサーの分野で世界5割超のシェアを持つ。

しかし車載用半導体センサーのシェアは数%しかない。今後の世界的な自動運転技術の進化に伴い、車載用イメージセンサーやレーダーはますます需要が高まり巨大なビジネスチャンスが訪れる。ソニーはそこをにらんでいるのだ。

もうひとつは将来の新しい車内エンターテインメント空間の創造だ。この先、クルマの自動運転化が進むと人は運転する必要がなくなる。その日がいつになるかはともかく、クルマは運転空間ではなく、動くシアターであり動くエンターテインメント空間の役目を担う。となればソニーの出番だろってわけ。で、未来の車内エンタメ化を想像してソニーがイチからクルマをつくってみたと。

EV最大手の米テスラを率いるイーロン・マスク。7月には時価総額がトヨタを上回り自動車業界のトップに。世界的なニュースになった

2010年に初代日産リーフが切り開いた量産EVの世界に、現在君臨するテスラ。昨年は全世界で36万台超を売った。片や日産を筆頭とするニッポンEV勢はわずか年2万台で、世界販売167万台のピュアEVのうち、シェアはわずか1%チョイというのが実情だ。

EV市場自体は実際大したことはない。しかし環境面でイメージがよく、世界的には未来の自動車界を担う存在って話になっている。ココが踏ん張りどころだ。ぐゎんばれ、ニッポンEV!