このTシャツは、四角くて小さいバーガーでおなじみの、アメリカ中西部のチェーン店「ホワイトキャッスル」のもの
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、アメリカのご当地バーガーについて語る。

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前回、開発に成功した市川オリジナルバーガーの作り方を発表しました。大量のタマネギを、丸めたお肉に叩きつけるスタイルで、インスピレーション源はアメリカのオクラホマ州のご当地バーガー、オクラホマオニオンバーガー。

アメリカといえばハンバーガーですが、よくイメージされるカリふわのバンズ×牛100%のパテ×レタス・トマト・チーズなどの具材を使ったバーガー以外にも、多くの種類が存在します。

日本でも、うどんなどに地域性があるように、アメリカでは各地方に固有のバーガーがあります。今回は、日本であまり知られてないご当地バーガーをご紹介します。

まずは、コネチカット州のスチームドチーズバーガー。その名のとおり、グリルや鉄板で焼くのではなく、スチームで蒸して調理します。

蒸しながら余分な脂が落ちる構造の、専用の蒸し器が使用され、あっさりだけどしっとりしたパテに仕上がります。チーズも別で蒸されており、ドロドロの形状。トッピングはごくスタンダードで、私は"全のせ"(トマト・レタス・ケチャップ・マヨネーズ・マスタード)をいただきました。

スチームの水分とてんこ盛りの具材のせいでバンズがぐちゃぐちゃになるかと思いきや、バンズがよけいなものをきれいに吸収してくれて「よく計算されているな」と感心しました。

ちなみにこのバーガーが誕生した地域は、もともと金属加工が盛んで、専用の蒸し器を開発したからこのスタイルのバーガーが生まれたらしいです。家の普通の蒸し器でもまねできると思うので、ほんの少しヘルシーなバーガーを求める方にはオススメです。

次は、ミネソタ州のジューシールーシー。これは、パテの中からチーズが出てくる、いわばチーズinハンバーガー。2枚のパテの間にチーズを挟み、両パテの端をくっつけて作りますが、チーズ周辺のお肉は外側より温度が上がらないので、中身がとてもジューシーに仕上がります。

このバーガースタイルの元祖とうたっているお店が2軒あり、激しく競い合っているようです。お互いを遠回しにけなすTシャツを作ったり、バラク・オバマ前大統領が片方のお店を訪問したら、もう一軒は宿泊先のホテルに差し入れしたりと、元祖争いが激化するなか、大手グルメサイトが選んだ一番のジューシールーシーはどっちでもないお店でした。チャンチャン。

続いては、酪農王国ウィスコンシン州から、バターバーガー。名前に偽りはなく、思いつく限りのバターの使い方がひとつのバーガーに結集しています。バターで焼くパテ自体にもバターを練り込み、バンズは溶けたバターに漬け込ませてからバターで焼き、締めにはバターを具としてチーズの下に敷きます。

発祥の地とされているダイナーでは、一日にバターを13㎏以上消費しているらしく、聞いているだけで血管が詰まりそうです。食べてみたいけど、家で作るとヒヨって中途半端なものしか作れないと思うので、いつか本場でいただきます。健康かつ大食いな若者を連れて。

その土地だから生まれた、地域性たっぷりのご当地バーガーはほかにもたくさんあります。次回に続く!

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。いろいろ紹介したけど、なんだかんだでバーガーよりバーグ派。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!