タートルズグッズは断捨離で処分してしまったので、代わりに亀の像と。JR西日本津山線亀甲駅(岡山県)にて

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、『ニンジャ・タートルズ』について語る。

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1984年のコミックス誕生から約35年、途切れることなく新作が発表され続けている『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』。「突然変異した10代の忍者亀」、よく企画会議を通ったなと感心するほどのアホらしいタイトルですが、子供の頃は大好きでした。

初めて見たのは、87年から96年に放送された最初のアニメシリーズ。小学校では大人気で、美術の時間に「ラファエロ」や「レオナルド」は亀ではなくルネッサンスを代表する芸術家だ、という授業がわざわざ行なわれたほど浸透していました。

97年に始まった実写版シリーズも好きで、突然加わった5人目のタートル、くノ一?のヴィーナスもなんとか受け入れました。着ぐるみがおもちゃの楽器を弾くコンサートにも足を運び、ピザハットがスポンサーだと知らずに、ミケランジェロに勧められるまま終演後にピザを食べました。

便乗して出現した数々のインスパイア番組もよく覚えてます。『Adolescent Radioactive Black Belt Hamsters(思春期の放射性黒帯のハムスター)』『Pre‐teen Dirty‐Gene Kung‐Fu Kangaroos(10歳~12歳の汚れた遺伝子のカンフーカンガルー)』はさすがにパクリだと気づきましたが、『Samurai Pizza Cats(サムライピザ猫)』や『Street Sharks(路上のサメ)』あたりは素直に楽しんでました。

パクリを受け入れた私ですが、本家の中に違和感があるキャラクターがいました。それは、グループの発明家ドナテロ。ロボットや煙幕弾などを開発する彼が持つ武器は、ただの木の棒......。子供ながら、あの棒になんらかの仕掛けを期待しましたが、最後までただの棒でした。

さらに高校生になり美術史にハマると、ミケランジェロ、ラファエロ、レオナルドに比べて、彫刻家ドナテロのスペックが低いことを知り......。並び的に、画家ティツィアーノの名にちなんだほうが統一感あると思います。原作であるコミックス版では、5年ほど前にドナテロは亡くなリましたが、ティツィアーノ登場は難しいですかね。ちゃんとした武器を持たせて。

最近、古いタートルズを見返しました。90年公開の最初の実写版映画は記憶より暴力的で、ストーリーもダーク。テコ入れしたのか、91年の次作では格闘シーンはほとんどなし。レオナルドとラファエロは一度も武器を使うことがなく、ただ手に持っているだけの謎のスタイルでした。

アニメ版は全体的にコミカルでしたが、2003年開始の第2シリーズではマッドサイエンティストのストックマンの扱いが印象的で、タートルズに敗れるたびに、制裁として悪役シュレッダーに体の一部を奪われます。

勢いある解体描写が衝撃的で、シーズン1の最後には目玉ひとつと脳みそだけでした。12年のシリーズでは、ハエと融合してしまい、ハエ人間としてブンブン飛んでタートルズをイラつかせます。当時は刺さりませんでしたが、今はストックマンがお気に入りキャラです。

見方が変わるのが楽しいので、懐かしい作品を見返すのにハマりそうです。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。ソ連の宇宙船Zond7で打ち上げられた4匹のカメは月を周回した後、無事に地球に帰還したのを知り、ヤツらが本物のミュータント・タートルズだと信じている。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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