2021年末デビューの日産・フェアレディZ。9月16日、新型フェアレディZの試作機はYouTubeのオンライン中継で世界中にお披露目された。「スポーツカーは日産の精神そのもの」と内田誠社長

軽自動車が大人気の日本で国産スポーツカーは月に3桁売れるかどうかの崖っぷちのカテゴリー。しかし、ここにきて超魅力的な新型が各メーカーからぶっ込まれまくっているのだ。それはいったいなぜなのか?

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■米国市場で人気の国産スポーツカー

テールランプは歴代モデルからインスピレーションを得たというが、令和感も表現されている

今、国産スポーツカーが話題だ。魅力的な新型が矢継ぎ早に登場しているからだ。

なかでも、ぶっちぎりの注目は9月16日にご開帳されると世界中のニュースやSNSで取り上げられた日産フェアレディZだ。1969年に初代がデビューし、発売から50年で累計販売は180万台以上に到達するなど、まさに日本を代表するスポーツカー。

その12年ぶりとなる新型試作機の外観は、初代から続く前部が長いロングノーズ・ショートデッキで、歴代モデルを想起させるデザインが見て取れる。

コックピットも歴代モデルへのオマージュが爆発している。インパネ中央に鎮座する3連メーターはオジさん感涙の逸品。だが、ほかのメーター類は完全に令和のテイスト。最新のデジタル技術を使ったディスプレイは圧巻の先進さと高級感だ。

メーターは12.3インチのフルデジタルディスプレイ。タコメーターはセンターに配置されている

エンジンは日産の内田誠社長がすでにV6ツインターボと6速MTの搭載を宣言している。この7代目フェアレディZの注目ポイントはどこか? 自動車専門誌の編集者が解説する。

「実は新型フェアレディZは全面刷新のモデルではありません。2008年デビューの現行車のプラットフォームを日産が誇る最新の技術で大改良したものです。

当然、熟成度はピカイチ。それに改良モデルなのですべてを刷新するほどの資金は投入されておらず、開発費は少ないはず。販売価格は400万円台前半スタートの線も考えられます。デビューは1年以内かなと」

本格派のスポーツハッチ、トヨタ・GRヤリス。GRヤリスはトヨタのスポーツモデルを生産してきた元町工場(愛知・豊田)に専用ラインを新設。「匠」の技能を有するスタッフが造り込む。価格は265万~456万円

GRヤリスは全車3ドアのみ。ボディサイズは全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mm。最小回転半径5.3m

ソフトパッドのオーナメント表皮などによりヤリスより質感を向上。アルミペダルが全車標準装備される

トヨタからはスーパーホットハッチが登場。9月4日に発売されたGRヤリスだ。WRC(世界ラリー選手権)で培った技術をブチ込んだ本格派のスポーツカー。言い換えればモータースポーツ用の車両を市販化した最強モデルだ。

パワーユニットは最高出力272PSを誇る新開発の1.6リットル直列3気筒インタークーラーターボにスポーツ4WDが組み合わされる。走りはいかに!?

限定モデルが即完売したホンダ・シビックタイプR。価格は475万2000円。国内200台限定となる「リミテッドエディション」の価格は550万円。コチラは11月30日の発売を予定

四輪独立制御ダンパーなど足回りもアップデート。ハンドリング性能と接地性などを大幅に向上させた

ホンダは10月9日にシビックタイプRのマイナーチェンジモデルを発売した。今回の新型は17年に登場した5代目に手を加えたもの。エンジンの冷却性能などを向上させ、サーキットでの走りのレベルを引き上げた。

その一方で先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」も装備。安心して走りを楽しめるモデルに仕上がっている。

インテリアは随所に赤をあしらうことでドライバーをたぎらせる。室内はステアリング含め専用装備が満載

ちなみに徹底した軽量化と専用装備満載の限定モデル・シビックタイプRリミテッドエディションも11月30日に発売する。日本、欧米、豪州など世界1000台の限定車で、日本への割り当ては200台。すでに先行予約が開始された国では即完売の人気ぶり。日本も予約段階で完売!

スバルBRZは2012年デビュー。トヨタとの共同開発車で兄弟車は86。今や絶滅危惧種となったコンパクトなFRスポーツカーだ

そして現在、大きな注目を集めているのが、11月18日に米国スバルの公式サイトで動画と画像がご開帳された新型BRZだ。今年8月に初代BRZが生産終了となり世界中のクルマ好きがモヤモヤしていたが、2代目の誕生に狂喜乱舞!

それにしてもなぜ今、絶滅の危機もささやかれる日本のスポーツカーが活発なのか? 

「日産が公開した新型フェアレディZは左ハンドルで、新型BRZのティザーサイトは米国スバルの仕掛け。日本のスポーツカーは米国市場で根強い人気があり、その需要に対応したものです。

ただ、各自動車メーカーは新型コロナの影響で沈んだ業績を回復するのが喫緊(きっきん)の課題です。スポーツカーをその起爆剤にしたい考えもあるでしょうね」(前出・自動車誌編集者)