こちらがピエロギ。「餃子的なやつ」は世界にまだまだ存在する

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。前回に続き、"餃子的なやつ"について語る。

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先週から世界中で見られる餃子(ギョーザ)みたいな料理を語っています。なんらかの生地になんらかの具を包んでなんらかの調理をする、誰もがほっとするひと皿。

「ダンプリング」という言い方もできますが、私は愛を込めて"餃子的なやつ"と呼んでいます。どの国に行っても、その地域特有の"餃子的なやつ"を見つけられる、数少ない世界共通の料理だと思います。

私にとって思い入れの強い"餃子的なやつ"は、ポーランドやウクライナの国民食、ピエロギ。東ヨーロッパのスラブ諸国やバルト諸国で広く食べられており、移民の影響でアメリカでも定番の料理です。スーパーでも必ず売られており、子供の頃は小腹がすいたらよく冷凍のものを自分で温めて食べてました。

アメリカで見られるピエロギはポーランド式のものが多く、定番の中身はマッシュポテトとカッテージチーズとタマネギ。ゆでてからバターで焼き色をつけ、サワークリームのソースや野菜を添えるのが一般的。

小麦粉の皮は餃子より分厚く、もちっとした食感が理想。もっちりの皮に、具材の滑らかでトロッとした舌触りが魅力的だけど、考えてみたら、芋とチーズを炭水化物で包んで、バターで焼いてからさらにクリームを絡める......。カロリー的にかなり危ないやつです。

ジャガイモ×チーズの次に広く食べられているのは、もう少しヘルシーな発酵キャベツ×マッシュルーム×肉だけど、私が作るときは生地にも少しサワークリームを入れて酸味を足しているので、結局カロリーからは逃れられません。子供の頃はトマトソースであっさりいただいてたのにな......。

私と同じく罪悪感がある人が多いのか、アメリカでは近年、創作ピエロギも見られます。北米のピエロギ・ホットスポットであるペンシルベニア州ピッツバーグで行なわれたピエロギフェスでは、アヒルとアプリコット入りのものが金賞を受賞。

豆腐とホウレンソウの健康志向のものや、定番のジャガイモ×チーズをチョコレートでコーティングするクレイジーなものも人気だったそう。ピエロギサンドなるものも評価されており、インスパイア品として餃子パンに可能性を感じました。

ちなみに、地元のメジャーリーグチーム、ピッツバーグ・パイレーツはイニング間の出し物として、ピエロギの着ぐるみ7体がレースする謎ゲームが行なわれます。野球のルールがあやふやな私でも興味津々で、7体のうちのベーコン・バートくんを応援することも決めました。

それ以外に見てみたいのは、カナダのアルバータ州に立つ巨大ピエロギ像。大きなフォークに刺さった8mを超える白い物体で、地元民の「糞(くそ)に見える」との素直すぎる声に、フォークを後から足したそうです。

浅草の某飲料会社の金のオブジェもよく似た理由でイジられてましたが、"餃子的なやつ"だけでなく、う○こジョークも世界共通なんだな、とあきれながらも感心しました。オブジェの近くには揚げピエロギがおいしい屋台があるみたいなので、併せてお邪魔したいです。

日本だとコストコに冷凍品があったり、ポーランド料理店で食べられるので試してみてください。トロトロもちもち好きには特にオススメです。

★市川紗椰が作る"餃子的なやつ"「ダイエッターにオススメのちょい低糖質高タンパク餃子が完成しました」

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。10月8日が全米ピエロギデーだったのを知り、この記事のタイミングの悪さを悔やむ。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!