『スター・ウォーズ』のキャラを周期表に見立てたTシャツ。ジャー・ジャーが悪役側に移る日は来るのか
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、『スター・ウォーズ』シリーズの気になるキャラについて語る。

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『スター・ウォーズ』シリーズで最も嫌われ者のジャー・ジャー・ビンクス。エピソード1に登場するや、うざい、無能、ご都合主義すぎる、と大批判されました。さらに、英語のなまりが差別的だとバッシングされ、公開前は猛プッシュされたものの、後のエピソードでは役割がかなり縮小されました。

当時12歳だった私も苦手だったので、テコ入れは大歓迎。しかし最近、ジャー・ジャーが気になります。数年ぶりに見返したら、実は大事な役割を担うはずだったと思えてきました。ここで唱えさせてください、ジャー・ジャー黒幕説。

ジャー・ジャーはおっちょこちょいでドジ。当然、戦闘能力も低い。しかし、ブラスター・ピストルにつまずいたら敵に当たったり、ドタバタしながらもうっかりひとりでドロイドのタンクを倒します。

この都合のよさがファンに嫌われる一因でしたが、先日『酔拳』を見たところ、ジャー・ジャーの慌てふためく動作が完全に一致しました。ヤツはてんやわんやなふりをして、すべて狙いどおりなのです。

フォースらしき力を披露することも。エピソード1でジェダイがアミダラを助ける際、オビ=ワンやクワイ=ガンと同等のステルス能力を発揮。さらに飛び降りるとき、ジャー・ジャーは右側から落ちたのに、なぜか左側に着地します。

映像のつながりがおかしいのかと思いきや、奥のドロイドが、彼のジェダイ顔負けの技に反応しています。ドロイドは全員CGなので、偶然ではなくアニメーターの意図的な判断で、もともとは伏線だったのかもしれません。

相手の意志を支配するフォースのマインドトリックも使います。間抜けなジャー・ジャーが将軍や議員になるのが非現実的すぎて納得いかなかったのですが、任命シーンを見ると彼が相手の前で手を大きく振るジェスチャーをします。

常に動きが大きくてぎこちないので違和感はないのですが、普段の言動はこっそりコントロールするためのカムフラージュなのかも? 彼にまつわる展開は都合がよすぎてつまらないのですが、「そう仕込んでいたから」というオチがあったらすごい。

そもそもアナキンとクワイ=ガンの出会いもジャー・ジャーの唐突なドタバタのおかげですし、「ジャー・ジャーはシス」という色眼鏡で見ると全部が彼の計画に見えてきます。

だまされてパルパティーンに非常時大権を与えたのも、実は手を組んでいたからでは。ふたりは同じ惑星出身で、『スター・ウォーズ』の世界では同じ中学みたいな感覚でしょう。ちなみにジャー・ジャーは無能すぎて同じ種族から追放され、オビ=ワンたちに会うまで孤独に暮らしていました。ますます怪しい。

と、同人誌のような妄想を語ってみましたが、ルーカスは「ジャー・ジャーは本来もっと大きな役割だった」と明言しています。かねて"おちゃらけキャラに見えて実は重要"という設定が好きなのも公言しています。

ヨーダがまさにそうですが、旧3部作をなぞる目的の新3部作では、ダークヨーダ的な存在としてジャー・ジャーをつくったのかも? ヨーダが戦うドゥークー伯爵は後づけのようなキャラなので、私は本来ジャー・ジャーがシスだったと思うようにします。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。コラムを書き始めたとき、「ジャー・ジャー=シス」は25%本気だったが、今は80%本気。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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