スズキ ジクサー150 価格:35万2000円 国土交通省届出値・定地燃費値:55.3km/リットル WMTCモード値:51.0km/リットル。燃料タンクは12リットル。単純計算で満タンからの航続距離は600km以上! 軽量ボディで走りはマジで超軽快。ズバリ、お得なマシンだ  ※定地燃費値は車速一定(法定制限速度)で走行した実測に基づいた燃料消費率。※WMTCモード値は国際基準となっている走行モードで測定された排出ガスの試験結果に基づいた計算値。

日本も"脱・純ガソリン"を表明し、EVシフトを進めようとしているが、バイクにも電動化は必要なのか? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオがネッチョリ解説する。

* * *

■EVより燃費がいい!二輪ガソリン車

――昨年12月に小池百合子東京都知事が2035年までにガソリン二輪車の廃止を表明しましたが、ライダーはかなりザワついたようですね。

青木 あと14年すると、都内でガソリンエンジンの新車バイクが買えないのは衝撃ですよ。

というのも、現在、国産メーカー4社は約170台の新車を国内で販売していますが、一般に買える電動車はホンダ・PCX e:HEVとヤマハ・eビーノの2台しかない。14年以内にこの台数を電動化するとなると、普通に考えて現実的ではないなと。

――でも、国も30年代半ばまでに脱・純ガソリンを進めると言ってますし、地球環境を考えたら世界的なEV化の流れは止められないのでは?

青木 ガソリン車さえなくせばいいという考えに、異論を唱える研究報告も出ています。それに油田からタイヤを駆動するまでのCO2排出量を算出すると、車両を製作する工場やバッテリー充電時の電力をほぼ火力発電で賄う日本の場合、総合的に見れば必ずしも"EV化が絶対エコ"とは言い切れません。

もちろん、カーボンニュートラルの実現は必要で、私も電動化には反対どころか大きな期待を寄せていますが、早い段階でガソリン車を完全に締め出していいのか。そこは冷静な議論が必要だと思います。

ホンダ CT125ハンターカブ 価格:44万円 国土交通省届出値・定地燃費値:61km/リットル WMTCモード値:67.2km/リットル 昨年6月にデビュー。ワイルドすぎる見た目が男たちをたぎらせ、予約段階で年間販売目標を突破。その人気ぶりが大きな話題に

――EV化の課題は?

青木 まず、航続距離の短さ。コレを解消しなければいけません。四輪と比較すると、二輪はバッテリーを積めるスペースが圧倒的に少なく、バッテリー容量の乏しさがそのまま航続距離の短さに直結しているんです。

――そもそも、バイクのどこに電池を積むんだよと(笑)。

青木 はい。それから本当にEV化を進めるのなら、インフラの整備は急務だと思います。充電ステーションをクルマと共用するわけですが、バッテリー切れ寸前のバイクが行列を作れば、ただでさえ足りない充電ステーションが混乱するのは明らか。

東京都道路整備保全公社がバイクの駐輪場に充電用100Vコンセントを設置するなどEV化の後押しをしていることには大賛成ですが、現実的にバイクの駐輪場は全然足りていない。

ヤマハ SR400 ファイナルエディション 価格:60万5000円 国土交通省届出値・定地燃費値:40.7km/リットル WMTCモード値:29.7km/リットル 今年3月に生産終了となるヤマハの名機は、1978年に登場。国内累計で約12万台販売。最終限定モデルは受注が殺到、即完売した

――なるほど。

青木 現状のEVスクーターは家庭用100Vコンセントでしか充電できませんが、より実用的にするならクルマのように急速充電に対応しなければいけませんしね。

――EV化への課題は山積みだと。ぶっちゃけ、二輪の燃費って?

青木 過去、スーパーカブ50は制限速度30キロの定地燃費値で驚愕(きょうがく)の180km/リットル超えを記録しています。現行車でも軽く100km/リットル超え(WMTCモードは69.4km)でメチャクチャ燃費がいい。

たった1リットルのガソリンで、電動バイクのフル充電時と同じだけ走ることが可能なんですよ。

ホンダ スーパーカブ50 価格:23万6500円 国土交通省届出値・定地燃費値:105km/リットル WMTCモード値:69.4km/リットル 初代スーパーカブは、1958年に爆誕。それから63年間、世界中で愛され続けてきた。クラシックなスタイリングと高い実用性は唯一無二

――スゲェー! さすが累計1億台超のカブだ。クルマだとトヨタ・ヤリスHVの36km/リットルが最高燃費ですが、二輪の燃費は次元が違いますね。ちなみに、ほかのバイクの燃費は?

青木 注目はスズキのジクサー。5速トランスミッションを持つロードスポーツながら、フリクション低減や燃焼効率向上を実現した空冷単気筒により、スクーターなどの強敵を抑えてクラス燃費トップです。装備重量139kgという軽さを武器に走りも刺激的です。

ホンダ NC750X 価格:92万4000~99万円 国土交通省届出値・定地燃費値:43km/リットル WMTCモード値:28.6km/リットル 1月22日にフルモデルチェンジを受けたホンダの大型スポーツ。発売開始は2月25日。エンジンは水冷4ストロークOHC 4バルブ直列2気筒

――ほお。

青木 スーパーカブは別格としても、各クラスの燃費王を見ると、1000cc超えの大排気量車でもWMTCモードで20km台。コレは軽自動車を上回る燃費です。正直言って現代のバイクは十分すぎるほどエコな乗り物なんです。

――二輪の場合、ガソリンエンジンはまだまだ生き残る余地がありそうですよね?

青木 ガソリン二輪車をすべてEV化するというのは時期尚早かなと。電動化は国、東京都、メーカーが議論をもっと重ねるべきだと思います。

ホンダ CRF1100L アフリカツインDCT 価格:161万7000~172万7000円 国土交通省届出値・定地燃費値:32km/リットル WMTCモード値:21.3km/リットル 昨年のフルモデルチェンジですべてを大刷新。車重は先代モデルより4kgも軽量化。ダカールラリーで培った最新技術がブチ込まれている

●青木タカオ 
モーターサイクルジャーナリスト。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。現役の二輪専門誌編集長だ

★『インプレ!』は毎週水曜日更新!★