写真のゴルフは昨年11月に世界にご開帳となったフラッグシップモデルのRだ。マフラーは4本出し!

昨年、世界販売トップの座をトヨタに譲ったフォルクスワーゲン(VW)だが、そこは欧州の大巨人。早くも反撃ののろしを上げたという。いったい、ナニが起きているのか? 自動車ジャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)がじっくり解説する!

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■続々登場予定のVWの電気自動車

――昨年、VWグループは5年ぶりに世界販売首位の座から陥落しました。敗因は?

竹花 新型コロナの影響が大きいですね。特にヨーロッパは強力なロックダウンが実施されたので、生産と販売の両面に響きました。最終的な新車販売は930万5400台で、前年を15.2%下回りました。

――現在のVWの販売は?

竹花 順調に回復しています。2020年上半期は前年比27.4%減とかなり厳しい状況でしたが、夏以降は持ち直し、12月は前年比3.2%減まで戻しました。今後販売はさらに伸びると予想しています。

8代目 ゴルフ 日本発売:2月9日先行受注開始(今夏登場予定) 初代ゴルフは1974年デビュー。以来、45年以上にわたり3500万台超を生産する世界的なベストセラーカー。今回の新型で8代目となる

全車に標準装備された10.25インチの液晶ディスプレイの「デジタル コクピットプロ」。マジでカッケー

――その理由はなんですか?

竹花 まずは新型VWゴルフです。8代目となるニューゴルフは、先代で好評を博したMQB(モジュラー・トランスバース ・マトリックス)プラットフォームの進化版を採用し、VW初となる48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載したパワートレインによる走りや、いっそう高められた快適性はもちろん、大幅なデジタル化や運転支援システムのさらなる進化など、まさに"世界のベンチマーク"となる飛躍を遂げています。

2019年末の発売以来絶好調で、昨年はヨーロッパで約31万2000台を販売してベストセラーの座を獲得。ドイツ国内でも約13万3900台で販売トップとなっています。

――日本での発売は?

竹花 ようやく先月から日本でも先行受注がスタートし、正式な登場は今年半ばを予定しています。

――VWといえば、EVも話題になっていますよね?

竹花 ID.3ですね。こちらも大人気です。ソフトウエアの問題で当初の予定からデリバリー開始が昨年9月にずれ込みましたが、12月にはヨーロッパ市場全体で2万7997台を売り、3万台超をマークした新型ゴルフに次ぐ販売台数2位になりました。

ID.3 日本発売:来年を予定 昨年7月から受注が開始されている。グレードによって異なるが、航続距離は330~550km。最新の先進運転支援システムを搭載する

中央のタッチスクリーンに機能を集中させているため、車内にボタンがほとんどないのも特徴だ

――VWがワンツーフィニッシュ! で、そのID.3ってどんなクルマなんスか?

竹花 ちょうどゴルフに近いサイズのハッチバック型のEVです。ヨーロッパでは各国がEVに多額の購入補助金を用意していて、ゴルフと同等の価格で買える点もヒットの大きな理由ですね。

――日本デビューはいつ頃?

竹花 私の予想だと、あと1年くらい待つことになりそう。ちなみにVWの日本法人によれば、2022年に導入する計画だそうです。

――なるほど。

竹花 本国ではすでにEVシリーズ第2弾となるID.4も発売されていて、こちらも大きな注目を集めています。

ID.3と同じくEV専用プラットフォームのMEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリクス)を採用した電動SUVで、このモデルはドイツとアメリカ、そして中国でも生産される計画です。世界的にコンパクトSUVは人気を集めていますから、EVの主役に躍り出る可能性を秘めたモデルだと思います。

ID.4 日本発売:未定 昨年9月にオンラインでワールドプレミアを飾った「ID.4」。クロスオーバーSUVタイプのEVだ。ドイツではすでに発売されている

室内で目を引くのはセンターの大型タッチスクリーン。ちなみに航続距離は最大で520kmを誇る

――日本にも導入される?

竹花 おそらくID.3と近いタイミングで発売されるとにらんでいます。日本市場でもコンパクトSUVは高い人気を誇っていますからね。

――VWは勢いがありますね。

竹花 新型ゴルフを筆頭に、ニューモデルがデビューを控えています。さらにIDファミリーも高性能版や、ID.4のクーペバージョンとなるID.5のデビューなんて話もある。今年、VWが再び世界トップになる可能性は十二分にあると思います。

●竹花寿実(たけはな・としみ) 
1973年生まれ。東京造形大学卒業。自動車雑誌の編集者などを経てドイツへ。ドイツ語を駆使して、現地で自動車ジャーナリストとして2018年まで専門誌などで活躍。輸入車のスペシャリスト

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