ホルモンのニンニク焼きを食べ、自信満々においプンプンの帰り道。特急ラビューの車内にて
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、マスク社会のメリットについて語る。

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数週前に、このコラムでマスク社会の新たな弊害を取り上げました。息苦しさや肌荒れ以上に、「出会った人の顔がわからない」など、マスク好きの私でも困る点を考えつつ、世界のマスクの認識の変化などを、あーだこーだ語りました。

しかし、ひとつメリットを忘れてました。マスクで口を隠すのがデフォルトになってから、ニンニク摂取のリミッターが外れました。

皆さんはニンニク臭が気になりますか? 私は得体の知れない口臭はさておき、「ニンニクのにおいだ」と認識できるなら割と寛容です。自分のニンニク臭にも甘いようで、学生の頃、「後で彼氏に会うから」とイケてる先輩女子がパスタをニンニク抜きで頼んだときの衝撃はいまだに覚えてます。

大人になっても、人と顔の距離が近い仕事をしているヘアメイクの友人たちが焼きニンニクを我慢しているのを見て、「メイクされる側の私も気にするべき?」とランチや朝ごはんのニンニクは控えます。

しかし! 今はそんな心配はもう無用! 私はメイク中にマスクを外しますが、相手はしているし、そもそも人と会う機会が減ったので、オールデーニンニク解禁です。

こう思うのは私の周辺だけじゃないようで、世間もひそかにニンニクブームのようです。都内ではニンニクを扱う料理店が去年の1.3倍に増えたとのデータがあったり、餃子の王将では「にんにく激増し餃子」が発売されるなどのニュースを目にします(口臭も激増しだけど、大丈夫! 自分しかにおわない幸せ)。よく頼むテイクアウトのトッピング人気1位もニンニクだそう。なければなくて満足なのに、提示されるとついついトッピングしてしまうのは人間のサガ。そう思うと、テイクアウトとニンニクの相性はいいようです。

健康維持を考えている人もいるでしょう。ニンニクには抗酸化作用や疲労回復効果があり、高血圧や肝臓にもいいとされています。その歴史は古く、古代エジプトのピラミッド建設の労働者に重宝されたり、18世紀にペスト予防としてニンニク入りのワインが飲まれました。私もスタミナ不足の際、オーストリアで飲んだ風邪予防用のガーリックティー(ニンニクとタイムを煮た西洋漢方的な何か)を作ったりします。効果は不明。

生のおろしにんにくの香り、揚げニンニクのうま味、ローストの甘さ。どんなニンニクも大好きで、ニンニクが多ければ多いほど料理はおいしくなると安易に思っています。

最近のお気に入りは発酵ニンニクのハチミツ漬け。ニンニクを軽く潰し、ハチミツに漬け込み、常温で数日置くだけ。抗菌作用や悪玉コレステロール低下の効果があるアリシンという成分によって発酵が進み、メローで奥深い味になります。煮物などの砂糖代わりに使ったりお酢と混ぜてサラダドレッシング、お肉のマリネに使うと最高です。ハーブと一緒にオリーブオイルと煮て保存するコンフィもオススメ。潰してトーストやお肉に塗ったり、マヨに混ぜてディップとしてどうぞ。

この一年、できなくなったことにフォーカスしがちですが、できるようになったことに着目して、あなたもさあ、オールデーニンニク生活を!

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。クオリティの高い吹き替えだと『キルラキル』『コードギアス』などがオススメ。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!