2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーを見事戴冠した日産のノート
12月10日(金)、今年の顔となるクルマを決める「2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー」に、日産のノートが選ばれた。選考委員の小沢コージ氏が総括する!

うう、胃が痛いぜ......そう、今年もまたまたやって来たCOTYこと、その年の顔グルマを選ぶ新車賞レース「日本カー・オブ・ザ・イヤー」のことだ。選考委員として毎年キツい投票だが、特に今年は超混沌で悩みが深すぎた。なぜなら例年にない国産車の当たり年。具体的には9年ぶりにフルモデルチェンジしたピュアスポーツのトヨタGR86スバルBRZトヨタの燃料電池車2代目ミライ、同じトヨタのランドクルーザー300系、さらに日産のノートに、ホンダのヴェゼル三菱アウトランダーPHEVとどれも気合が入っている。

各自動車メーカーにはCOTYをとりたい理由がある。ある種、社運的なものであり、時代的な運命をも背負っていて、同時に涙目で「COTYをくれ!」と迫られるからツラいのだ。こちとらテキトーに決めたいのだが、それが許されない重いチョイスなのだ。

まずトヨタのGR86スバルのBRZだが、コイツは単なるスポーツカーじゃない。実は今、世界的にスポーツカーは減っていて、特に価格300万円前後で買える大衆スポーツは、今やこの86とBRZとマツダのロードスターだけ。9年ぶりのフルチェンも本当にあるのかわからなかったし、ガソリン大衆スポーツカーが今後10年存続するのかもわからない。もはやこの手のクルマは最後? と思うと今年戴冠させたい。

2代目ミライはもはや日本の自動車界どころか産業界を背負った存在だ、チトおおげさに言うと。なぜなら日本が原油を捨てて、水素エネルギーを使いこなせば国策的、政治的にラクになるし、ミライの普及はそのきっかけになりうる。このクルマが日本のエネルギー問題を解決する!? そう考えると満点を入れたくなる。

さらにランクルだ。実に14年ぶりのフルチェンで、これまたニッポンを代表する超ハイクオリティSUV。世界の外貨を品質で稼いでくるスゴい存在で、これまたホメたくなる。

新型ノートの存在がまた重い。3年前に例のゴーンが逮捕されてから冴えない日産。EVリーフは売れないわ、コロナによる赤字続きで厳しかったが、このノートから事実上の国産専用コンパクトで売れ行きも絶好調。今の内田新社長体制の起爆剤として称えたいところ。

ヴェゼルもそうだ。国内四輪が稼げず、気合を入れた2モーターハイブリッドコンパクトでフィットに続く大黒柱だ。フィットが売れていないだけに、コイツでCOTYを取りたい気持ちもわかかるし、事実クルマはデザイン、使い勝手、走りともに戴冠レベルかも?

アウトランダーPHEVも注目。日産以上に背水の陣の三菱だけに、久々、プラットフォームからパワートレインからデザインから一新のアウトランダーPHEVは評価に値するし、乗るとその電動4駆っぷりは超絶だ。三菱のランエボづくりの魂とパジェロテイストまで入っていて出来がスゴい。

小沢氏が10点を入れた(左)トヨタのGR86、(右)スバルのBRZ。※トヨタとスバルの共同開発車(GR86とBRZ)は「1車種」としてカウント

だが、ぶっちゃけオザワはミライ、ランクル、アウトランダーはクルマの出来はイイけど、大衆がポンと買える価格じゃないし、広い客層に関係ないと判断し、誰もが買えるGR86&スバルBRZ、あるいはノートを推したいと悩みに悩み、結局、今後生まれえないかもしれない前者に10点、後者を8点とした。

ところがガガーン! ってか、ある意味しかたないが開票の結果、今年のCOTYをとったのは日産のノートだった。その理由もわかる。事実、ノートの2モーターハイブリッドの電動加速や高級感はスゴいし、EV一辺倒だった日産の起爆剤にもなりうる。

ま、とりあえずよかったですよ、日産! またまたオザワは大賞を外してしまったが、今後電動化に突き進む、内田社長体制のますますの発展を期待するのみです!


小沢コージ Koji OZAWA 
自動車ジャーナリスト。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』