ガソリン車のみNV350が消え、車名が「キャラバン」となった。主な改良点は、ミッションが5速ATから7速ATに変更され、シートや安全装備もアップデート。価格は241万2300~409万7500円

2021年10月20日にマイナーチェンジを受けた日産のNV350キャラバン。この改良により、ガソリン車のみ車名が懐かしの「キャラバン」に戻された。さっそく、自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が都内で試乗! 絶対王者として君臨するトヨタのハイエースとの違いなどを特濃解説する。

■圧倒的なハイエースのリセールバリュー

知る人ぞ知る究極の実用車、日産キャラバンが10月にマイナーチェンジした。キャラバンは、「ひとり親方」と呼ばれる職人さんたちから熱狂的に支持され、長年トヨタ・ハイエースと仁義なき戦いを繰り広げてきたクルマだ。だが、2004年にハイエースがフルモデルチェンジしたあとはキャラバンのシェアは2割以下という状態に陥った。ちなみに現行の5代目キャラバンは、当時の日産幹部が「何がなんでも勝て!」と檄を飛ばし、2012年に生まれた意欲作である。

特に頑張っているのは絶対的荷室スペースで、イマドキ流行らないエンジンの上に運転席があるキャブオーバーレイアウトを採用しおり、1列目シート後の荷室長は3m5㎝を誇る。

しかし、正直なところハイエースの壁は分厚く、なかなか壁を突き破れずにいる。そこで今回、またまたパワーアップすべく、大型改良が行なわれたというワケ。

改良ポイントは外観の押し出し強化、内装のゴージャス化、先進安全装備の充実だ。あと地味なポイントだが、車名が「NV350キャラバン」からシンプルな「キャラバン」に戻された。この名前の変更は大きいと思う。

気になる現物だがフロントVモーショングリルの分厚い造形はイイ。メッキ感もあるし、単純に高級で強い顔になった。新色のピュアホワイトパールやミッドナイトブラック、ステルスグレーの深みのある色合いもイイ。これなら仕事だけでなくプライベートでも乗りたくなる。

新型キャラバンを公道に引っ張り出して試乗。小沢氏いわく「空荷の状態だからサスペンションの実力は試せないが、走りの音はかなり静かになったよ」

試乗して感心したのは全車装着のスパイナルサポート機能付きシートで、表皮質感の高さもさることながら、適度に背もたれに中折れ感があってイイ!

エンジンは定番2リッターのガソリン車だがATは従来の5速から7速に変更。高速走行での音のやかましさが消えて燃費も向上していた。

一方、先進安全だが、長距離がラクになる追従オートクルーズ系は付かなかったが、ミリ波レーダーとカメラのフュージョン方式による「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」が全車標準装備された。

販売シェアは徐々に上がっているキャラバンだが、それでもなかなかハイエースの牙城を崩すまでには至っていない。荷室長で微妙とはいえ上回り、質感アップも果たしているだけに不思議な気もするが、使用者に聞けば実情がよくわかった。職人の皆さまはトヨタ車の耐久性の高さを熟知しているのだ。5万㎞どころか10万㎞走っても全然ヘタらないボディや足回りは大きな魅力という声が実に多い。確かにそのあたりは数年乗っただけではわからない差だ。

2004年のデビューから17年もの間、「絶対王者」として君臨するトヨタのハイエース。価格は236万3500~401万500円

何より圧倒的なのがリセールバリューであり残存価値だ。オザワは懇意の中古業者から「迷ったらハイエースのディーゼル買っときゃ間違いない。よっぽど長距離走らなきゃ3年で7割は価格が残るよ」と耳打ちされたことがある。

ハイエースは完全に〝使える道具グルマ〟の大ブランドとして君臨しているし、その人気は世界レベルだ。その証拠に、アナタも聞いたことがあるはずだ。近年、日本車で盗難率が高い常連トップ3はすべてトヨタで、1位がランドクルーザー、2位がプリウス、そして3位がトヨタ・ハイエースだ。要するにハイエースは、もはやブランド化しているのだ。コイツはツエーわ!

★試乗して解説してくれた人 
小沢コージ Koji OZAWA 
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV