「親の介護はまだ先」だと思いがち。しかし、44歳以下で、すでに3人にひとりは介護が始まっていたりと、意外と身近な話。そして突然襲いかかってくる介護トラブルは、時に家族の絆(きずな)さえ容赦なくむしり取り、精神的にも経済的にも疲弊させていくのだ。具体的にどんな問題があるのか。典型的な〝介護のリアルガチな話〟を専門家の解説と共に見ていこう。

【トラブルケース】焦りが招く最悪の事態

地方に住む父親(66歳)が突然、脳梗塞(こうそく)で倒れた。介護の知識はほぼゼロで仕事も忙しく、介護は無理。そのため、父の退院後は割高だったが、ネットで真っ先に出てきた大手有料老人ホームを頼ることに。だが気がつけば、貯金が見る見るうちに減っていった......。

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30年近く介護の現場を取材している介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子(さえこ)さんは、「親の介護の大半は入院から始まる」と語る。

「内心高いなとは思いつつ、『お金のことはとりあえず後で考えよう』と問題を先延ばしにするのは間違いです。

介護を在宅でするのか施設で行なうのか、介護保険にはどんなサービスがあり、高齢者施設とはどのようなものかなど、まず介護の全体像や選択肢があることを知るべきです」


とはいえ、目の前の仕事に忙殺されて、「調べたくても調べられない」という人も少なくないはずだ。

「退院は〝介護の始まり〟であり、何もわからなくて当然。でもそこで焦って、すぐに何かを決めるのではなく、まずは各地域にある介護の総合相談窓口『地域包括支援センター』や、退院前なら病院にいる医療ソーシャルワーカーに相談してください。

介護保険を利用するために介護認定を受けたり、退院後の介護の具体的な方針も決められます」

そもそも年金だけで生活する高齢者も多く、どんぶり勘定の介護はすぐに行き詰まってしまう。そして太田さんはこう語る。「気がついたときには『お金がない、どうしよう』という事態に発展してしまうのです」。

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