V&Rに集う“特殊な俳優”について語るカンパニー松尾氏(左)とAVブームの背景に「ユーザーの蔑みの感情がある」と指摘するバクシーシ山下氏(右)

日本にAVが誕生してから、まもなく35周年――。

社会現象を巻き起こした映画『テレクラキャノンボール2013』でおなじみの監督ふたりが、その歴史をプレイバックする連載企画『カンパニー松尾とバクシーシ山下のAV史講義1981-2016「なぜAV女優は憧れの職業になったのか?」』が週刊プレイボーイ本誌でスタート!

今回は、80年代後半のAVブームを盛り上げた女優たちの特徴やギャラに迫る。

■AVに出たら人生終わり

――おふたりはなぜAV業界に? 山下さんは学生時代に男優のバイトを始めるっていう特殊な経歴をお持ちで。

山下 大学3年の時ですかね、テレクラでバイトしてて、歌舞伎町の路上でティッシュ配ってたんです。近くにいつもスカウトマンがいたんだけど、彼と仲良くなるうちに「男優やってみない?」って誘われて。で、試しに男優のギャラはいくらかっていうのを聞いてみたら、「1日3万円」って言うの。テレクラの時給が600円だから、AV男優なら1日で50時間分稼げる。その場で「やる!」って(笑)。

松尾 僕は専門学校を卒業してTVの制作会社に就職したのに1年で会社が倒産しちゃったんですね。そこで唯一、仲が良かった人からV&Rに誘われて、僕も「いいっすよ(童貞だけど)」って即答しました(笑)。

――それまでV&Rの作品は見たことあったんですか?

松尾 AVは基本、宇宙企画だけです(笑)。

――じゃあ、V&Rの文化になじむのは結構大変だったんじゃ?

松尾 設立からまだ1年たってない頃ですけど、事務所の前にしょっちゅうウ●コが不法投棄されてて(笑)。SM嬢の初代葵マリーさんと組んだ作品を出したりしていたので、マニアから「オシ●コ飲めるからビデオに出せ!」「俺はウ●コ食えるぞ!」的な電話が毎日鳴って。そういう積極的なマニアを出演させるのがV&Rのお家芸でした。ホントにヘンな人がいっぱいいましたよ。飲尿おじさん飲尿息子ウ●コを食う〝わくわくおっちゃん〟…。

――ガチですか、ウ●コは?

松尾 疑似ウ●コは社長の安達かおるが許しません。

山下 本物志向なので。

ギャラは月給16万から一発500万まで

――でも、そういう作品に出演するとなると、女優も女優でかなりハードですよね。

松尾 変わり者が多かったですよね、業界の中でも。

山下 失礼だなぁ(笑)。

松尾 まあ、冴島奈緒あたりの有名女優も時々撮ったりしましたけどね。

――ちなみに、当時のAV女優は全般的にどういう人が多かったんですか?

松尾 ビニ本や裏本のモデル、風俗嬢がバイト感覚で出演してましたよね。大きく違うのは現在のAV界で人気のキカタン(企画単体)がいなかったことですね。

山下 昔は女優の魅力で売る「単体」と、作品の内容で売る「企画」だけでしたから。

――女優のギャラは?

松尾 企画が10万から30万で、単体は何百万の世界ですよ。超A級単体になると1回の出演で500万までギャラが跳ね上がる。その単価で年契3年続いたコもいました。

――小林ひとみさんのギャラが1本1千万だったという話を聞いたんですが…。

松尾 さすがにそこまでの金額ではなかったという話ですけどね。まあ、秋元ともみだって事務所には何百万も入ってたけど、彼女は月給制で手取り16万という悲惨な額でしたから。

――皆さん、志願してAV女優になったんですか?

松尾 志願は100%ない。昔のAVって世間からひどい目で見られてたんです。風俗嬢よりも格下で「AV出たら人生終わり」みたいな。

山下 女のコにも「やらされてる感」があって。好きこのんで出てる人はいなかったと思う。山師みたいな人が女を連れてきたりしてたよね。活動期間も短かったし、季節をまたぐのはひと握りでしたよ。

松尾 偏見じゃなく、金銭的な問題とか家庭環境の問題とか、すごく不幸な境遇の人が多かったように思いますね。

山下 楽屋泥棒も多くてね。

松尾 そうだそうだ。よく「私の私服が消えた!」とかいって揉めてましたからね。

NHKが“ウ●コを食うオジサン”を取材!?

――なるほど。ちなみに、松尾さんの初現場は?

松尾 男優の入りが遅れてるSMモノの撮影でした。待てど暮らせど現れなくて、社長自ら女優を縛り終わってるのに男優が来ない。それでもう、さすがにしびれを切らしたんでしょうね、社長が突然フレームインしてきて「オラッ、オマエこういうのが好きなんだろっ!」って叫んだかと思ったら、縛った女を叩きながらチ○ポ出した(笑)。

山下 パンクだなぁ(笑)。

松尾 それを見た瞬間、ロッキンオン育ちの童貞だった僕の脳内で、セックス・ピストルズの『アナーキー・イン・ザ・UK』が鳴り響きましたよね。「社長、カッコいいっす!」って。カンパニー松尾、22歳の夏です。

山下 俺はそういう話を松ちゃんから聞いてたんで面白そうだし、いいかなと思って、大学4年の9月に卒業見込みでV&Rに入社しました。で、2日目でいきなり『男と女のアニマルゲーム2』のロケに行くことになって。

松尾 獣姦シリーズの名作中の名作ですね。

山下 最初の仕事は、四谷見附の交差点で動物プロダクションから派遣されてくるロバのお迎え(笑)。

松尾 このシリーズの1本目が完璧なんですよ。監督はもちろん社長で。男優の〝歩く海綿体〟並木翔がヤギのアナルにチ○ポを入れて、女優の山岸恵がコリー犬に犯される。ここで終われば単なる獣姦AVですが、最終的に並木翔と山岸恵がベッドでヤルんですね。

そこで並木翔が「どうだった、犬は?」って山岸に聞く。すると彼女、「やっぱり人間がいい」って(笑)。僕はそのピロートークに安達かおるの宇宙を見ましたね。人間、突き詰めると面白いトコに着地するんですよ。

山下 そんな作品ばかり作ってたV&Rなんですけど、89年だっけ、NHKのドキュメンタリー番組から取材されることになるんですよね。

松尾 ありましたねぇ。

山下 日本の若者の実態を探るべく、藤原新也さんが会社に来て、『わくわく汚物ランド』という作品の撮影現場に立ち会われたんです。

松尾 〝わくわくおっちゃん〟がウ●コ食う姿を眉間にシワ寄せてじっと見ててねぇ。

山下 で、食い終わったとこで最後、おもむろに「…胎児に戻った」って(笑)。

松尾 さすが見る人が見ると、言うこと違いますよね。

――でも、なぜNHKはV&Rを取り上げたんでしょう?

松尾 それはV&Rに限らずですけど、当時のAVっていうのがすごく特殊な世界というか、「見せ物」的な存在として捉えられてたってことなんじゃないかと思います。

山下 AVに対するある種の蔑(さげす)みっていうかね。でも蔑みって興奮の一要素だし、それがないとAVとユーザーの関係って成立しないから。その後のAV業界の盛り上がりにおいても、蔑みっていうのがひとつの大事な要素として機能してるんだと思います。

●次回配信ではAV業界がバブルを迎える、90年代前半を振り返ります。また、この連載と連動したイベントの開催も決定。詳細は以下をチェック!

カンパニー松尾×バクシーシ山下の“AV史”白熱教室 ~80年代編【1】~カンパニー松尾×バクシーシ山下の“AV史”白熱教室 ~80年代編【2】~

(取材・文/黒羽幸宏 撮影/井上太郎 協力/ハマジム http://www.hamajim.com/)

イベント開催決定!!週刊プレイボーイ連動企画『なぜAV女優は憧れの職業になったのか?』「カンパニー松尾×バクシーシ山下 公開ナマトーク VOL.2」

【日程】 2015年10月26日(月曜日)【時間】 開場18:30/開演19:30【会場】 阿佐ヶ谷ロフトA【出演】 カンパニー松尾、バクシーシ山下ほか、ゲストあり!【料金】 前売2500円/当日3000円(共に飲食代別)

【問い合わせ】 阿佐ヶ谷ロフトA (03-5929-3445)

【イベント内容】週刊プレイボーイで好評連載中『カンパニー松尾とバクシーシ山下のAV史講義1981-2016』の内容に沿い、その当時のAVをカンパニー松尾とバクシーシ山下がナマプレビューする大好評トークイベント第2弾!!

今回はオタクやギャル、テレクラ、エンコー、風俗など、時代の流行を取り込んだ企画もの全盛期である90年代中盤から00年代前半までを松尾&山下両監督が腕をふるったh.m.p作品群を中心に振り返ります。

●カンパニー松尾1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット

●バクシーシ山下1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など