新宿区役所の真横という好立地で最近は観光客も絶えないTSミュージック。経営は悪くないだけに“閉館の危機”は非常に残念な状況だ

戦後から1980年代までの全盛期には全国で300軒近くあったといわれるストリップ劇場。

しかし1985年の風営法改正以降に閉館が相次ぎ、経営難や踊り子不足、風営法とのギリギリのせめぎ合いの中でなんとか生き残ってきたが、現在はわずか26劇場に激減してしまっている(2015年11月号の風俗情報誌『俺の旅』調べ)。

そして今、新宿区役所の真横に立地し、38年の歴史を持つ歌舞伎町の老舗劇場『TSミュージック』が立ち退きを求められ、ビルの大家と法廷論争中だという。

一体、何が起きているのか…TSミュージックのオーナー、岡野健太郎氏に直撃した。

―立ち退き命令を受けるまでに何があったのでしょうか?

「そもそもの発端は2013年1月に警視庁保安課に公然わいせつ罪で私と踊り子数名が逮捕され、8ヵ月の営業停止処分を受けたことです。この間、無収入となるので不動産業者に“すでに収めている約3千万円の保証金から営業停止中の賃金を充当してほしい”旨を相談したものの、最終的には営業再開後に営滞納分を分割払いで支払うことを口約束していました。しかし残り3ヵ月分となった2014年3月、いきなり弁護士事務所から家賃不払いによるビルの明け渡し請求の通知を受け、裁判を起こされてしまったのです」

―分割払いしていた途中でいきなり立ち退き通達が…なぜ?

「それが全くわからないのです。通知がくる直前に支払った家賃の領収書も届いた後で、“先日送った領収書は間違いです”という旨の文書まで届いたり、とても混乱しました。しかし2015年9月16日の東京地方裁判所にて、当方の主張がまったく受け入れられないまま被告敗訴の言い渡しを受けました」

―分割払いがなかったことにされてしまったわけですね。

「口約束だったのが良くなかったのでしょうか。しかし分割払いの合意も支払い経緯さえも認められない。これまでだって一度たりとも家賃滞納もなく、大家との信頼関係もあったはずなのに、東京地裁の一審では当方の主張が受け入れられず、しかもその判決文も到底、納得できるものではありませんでした」

―どんな判決文だったのでしょうか?

「“ストリップは低俗かつ害悪であり、その劇場は廃止すべきだ”といった、某新聞記事で警察発表として引用されていた文面がそのまま記されていたのも偏った不当な判決だと思っています」

現在の風営法では新規営業できず…

さらに岡野氏によれば、実は昨年1月の営業再開直後に2階にある劇場から漏水が発生、下の階の店舗にも被害が及んだ件で劇場側と大家側で賠償責任を巡って別の民事裁判をしている最中でもあるという。

―この漏水事故に関してはなんと?

「東京地裁での一審においても漏水事故と家賃滞納の因果関係はなしとのことでしたが、自分はこの劇場の2代目オーナーで、先代からこれまで大家との関係は至って良好だった。それが突然こじれたのは、この漏水トラブルが原因ではないかと感じています」

―今後の動きはどうなるのでしょうか。

「控訴したので東京高裁に向けて準備中です。まだ日にちは決まっていませんが来年中には決着がつくのではないでしょうか」

―もし今度もまた敗訴となったら?

「現在の風営法では周囲200m以内に官公庁施設や学校、図書館、病院がある場合は新規営業はできず、歌舞伎町ではまずムリ。ココ以外の土地に移転ということは一切考えられないですね。現在はお客様に裁判所に提出する“劇場存続の要望書”の署名にご協力いただいており、400通ほど集まりました。目標5千通です、今はただ、なんとか和解の道が探れるよう祈るのみです」

うーむ。どうする、どうなるTSミュージック!? その存続問題も目を離せないが、そもそも消えゆくストリップ劇場の灯…。そこで、次回配信の後編では、アツいファン(通称“応援さん”)達にTSミュージックの魅力はもちろん、裏文化遺産へのアツい思いを聞いてみる。

(取材・文/河合桃子)