公私混同にもほどがある! カン松さんの初ハメ撮りとは?

世間でヘアヌードブームが過熱した90年代中盤、ビデ倫の審査を無視してヘア解禁ビデオを発売するメーカーが登場ーー。

それと呼応するようにA級単体女優が「本番」を解禁するようになり…AVバブル直後の業界の裏側とは?

―これまで、80年代のAV誕生から、90年代前半の「AVバブル」期を振り返りました。バブルの裏で松尾さんは淫乱女優相手に童貞を卒業し、山下さんは“鬼畜監督”という不名誉な地位を確立していったわけですが…。

山下 バブルを謳歌(おうか)できてない感じが出てますね。

松尾 まあ、業界の端っこにいましたからねぇ(笑)。

―それで、松尾さんが伝家の宝刀「ハメ撮り」を編み出したキッカケの話が積み残しになってるので、今回はそこらへんを聞いていけたらと。

松尾 了解です。そもそも僕がハメ撮りに辿(たど)り着いた理由はいくつかあるんですよ。この前、説明したように(AVバブル期の)僕や山ちゃんの1本当たりの制作費って60万とか70万円とかで安かったんで、頭が痛かったのは現場費用なんですよ。

例えば、カメラマンと機材を1日使うと15万円とか軽くいく。それにプラスして音声と照明の費用もあって。2日撮りだとトータル50万円とかいったっけ?

山下 場合によってはもっと膨らむこともあったよ。

松尾 その点、ハメ撮りは8ミリカメラ1台で済むから安い(笑)。低予算を逆手に取ったのがハメ撮りですよ。

山下 経費を半分ぐらいに抑えられるもんね。

松尾 あと、撮影現場の「よーい、スタート!」で始めるセックスが好きじゃなくて。俺、プロフェッショナルなセックスに興味ないんですよ。

山下 お仕事セックスね。

松尾 そう(笑)。緊張感もなければ、スケベさのかけらもないやつ。そういうのを崩したり、駆逐するのがハメ撮り。ふたりきりで撮影することになるから、女のスケベな顔を引っ張り出しやすくなるというか。まあ、導入自体は結構古くて、『ウンタマギール』って作品なんですけど。

林由美香に恋をしました

―リリースは89年ですね。

松尾 実はその『ウンタマギール』の1本前に撮ったのが林由美香の『硬式ペナス』ってやつで。簡単に言うとですね、その撮影で由美香と出会って、僕は彼女に恋をしたんです。これがハメ撮りを始めた最大の理由ですね。

山下 どういうこと(笑)。

松尾 俺は監督だから、好きになった由美香を男優とハメさせなきゃいけないし、撮影後に「どう? チ〇ポ気持ち良かった?」とか聞かなきゃいけないわけじゃないですか。

山下 それが仕事だからね。

松尾 (無視して)でもそれって視点が全然一致してないでしょう? 俺は彼女が好きなのに、他人にヤラせてる。だったら自分がセックスして、自分で撮っちゃえばいいと…その感情が原点ですよね。青臭い発想ですけど(苦笑)。

山下 ハメ撮りだけじゃなくて、ほら、由美香が出てる作品に中学生のポエムみたいなテロップ入れたりして(笑)。

―松尾さんのその手法は、甘酸っぱい叙情を醸し出す「私小説的」と評されたりもしてましたけどね。

松尾 俺、一度も私小説なんて読んだことなくて(笑)。まあ、由美香への気持ちをなんのひねりもなくテロップに入れただけ。“君が好きだ”って。

山下 AVを使って愛の告白されてもねぇ(笑)。

松尾 でも結果的に彼女から「ありがとね」って電話があって、それで付き合うことになりまして…って、やっぱ童貞臭がしてキモいね(笑)。

山下 だから俺、松ちゃんのAVでヌケないんだよなぁ。

松尾 俺だって山ちゃんの作品じゃヌケねぇわ!

AVの審査団体“ビデ倫”とは?

―さて、宮沢りえの『Santa Fe』が引き金になって、90年代中盤の出版界は空前のヘアヌードブームに沸いていたわけですが、AV業界にもすぐにヘア解禁の流れはやって来たんですか?

山下 ビデ倫がヘアの映像化は認めてなかったんですぐに解禁とはならず、AVのモザイクは濃いままだったよね。

松尾 ビデ倫とAV業界の関係性について説明しときましょうか。70年代末、AV草創期の話になりますけど、AVを世間に流通させるにあたってメーカー的にはなんらかの“お墨付き”が欲しかったわけです。それで、任意の審査団体を立ち上げたというのがビデ倫の始まりです。

山下 メーカーは摘発を恐れてましたから、ビデ倫の母体には警視庁OBを中心メンバーとして招いたんですよね。

松尾 要するに、ビデ倫は警察の天下り先だったって話です。それってどうなのっつー感じですが。しかも、いつしかビデ倫の存在がAVメーカー自身の足かせになるっていう状況が生じていて。

山下 モザイクの審査っていうのがとにかく曖昧(あいまい)だったんですよ。明確な基準とか数値的根拠はゼロ。ホント曖昧で。審査する人間の印象がすべてというざっくり感で。

松尾 審査方法は、監督がビデ倫に行っておじいちゃんふたりと作品を見ながら説明するっていう感じで、ただの世間話になったりしてね。

―ゆるいですねぇ。

松尾 ただしV&Rに限っては、ウンコだのレイプだの問題作ばかりだったので、「アンタのとこは早送りしたりしないでしっかり見るからね」ってくぎ刺されてましたけど(笑)。

―ビデ倫に目をつけられてたと。だったらなおさら、V&Rが無審査ヘアビデオ『MARY JANE 河合メリージェーン』を出したのは、危険な賭けだったんでは?

松尾 あれはフリー監督の豊田薫がよそのメーカーに速攻で却下された企画をウチに持ち込んだのが取っかかりで。それをV&R社長の安達かおるが「やる」と決めた。権力にケンカ売る人だから(笑)。

山下 ヘアビデオを、しかも無審査で出すなんて前代未聞ですからね、V&R本体に火の粉が飛ばないよう、わざわざその一本のために別レーベルまでつくってねぇ。

A級女優がデビュー作から本番!

松尾 でも結局、なんのおとがめもなかったよね?

山下 かなり売れて話題にもなってたんだけどね。

松尾 1万5千本とか2万本のヒットですよ。しかもセルビデオだったので卸率が高かった。これを受けて豊田さんは、セルビデオショップとして頭角を現してたビデオ安売王(95年当時の店舗数は1千以上)から第2弾を出すことになります。

山下 安売王は独自の審査なので、ビデ倫のモザイク基準は一切関係ない。より過激なものが撮れるぞっていう読みもあったんでしょうね。

松尾 無審査ヘアビデオ第2弾『完全露出恥骨フェチ』は4万本の大ヒットを記録して。

山下 この作品でセルビデオの裾野は一気に広がって、しかもビデオ安売王はSOD誕生の引き金にもなった。

松尾 と同時に、ビデ倫衰退のキッカケにもなってます。

―ここまでの話を聞いてて思うのは、業界の端っこにいるV&Rが結果的にAVの新たな流れをつくったんじゃないかという(笑)。

松尾 どうなんでしょうねぇ。過激なヘアAVが登場したのに呼応するように、単体女優の「本番」が解禁されていったのもこの時期です。

山下 A級単体女優ですら、デビュー作から本番をやるようになったからね。

松尾 90年代を代表する女優の小室友里が、ドヤ顔で「本番」を公言して(笑)。麻宮淳子とか氷高小夜とか、過激な美人女優がどんどん出てきた。

山下 『ギルガメッシュないと』(テレビ東京)や『おとなのえほん』(サンテレビ)あたりの深夜番組も依然人気だったし、まだまだAVバブルのにおいは残ってた気がしますね。

●この続きは『週刊プレイボーイNo.42』でお読みいただけます。さらなるAVトークが全開! こちらの連載は毎週本誌に掲載中です。

※この対談のバックナンバーはこちら!

(構成/黒羽幸宏 撮影/髙橋定敬 写真/時事通信社 アフロ 取材協力/ハマジム h.m.p V&Rプランニング)

●カンパニー松尾1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット

●バクシーシ山下1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など

イベント開催決定!!週刊プレイボーイ連動企画『なぜAV女優は憧れの職業になったのか?』「カンパニー松尾×バクシーシ山下 公開ナマトーク VOL.2」

【日程】 2015年10月26日(月曜日)【時間】 開場18:30/開演19:30【会場】 阿佐ヶ谷ロフトA【出演】 カンパニー松尾、バクシーシ山下ほか、ゲストあり!【料金】 前売2500円/当日3000円(共に飲食代別)

【問い合わせ】 阿佐ヶ谷ロフトA (03-5929-3445)

【イベント内容】週刊プレイボーイで好評連載中『カンパニー松尾とバクシーシ山下のAV史講義1981-2016』の内容に沿い、その当時のAVをカンパニー松尾とバクシーシ山下がナマプレビューする大好評トークイベント第2弾!!

今回はオタクやギャル、テレクラ、エンコー、風俗など、時代の流行を取り込んだ企画もの全盛期である90年代中盤から00年代前半までを松尾&山下両監督が腕をふるったh.m.p作品群を中心に振り返ります。