震災直後に仙台で撮影を行なったカン松さんが体験したこととは?

90年代~00年代の素人ブーム、10年代の元芸能人ブームーーそれと同時期に注目されたのは、熟女たちだった。

―10年代に入ると「熟女AV」の波も本格化します。山下さんの監督作品もしばらく熟女が中心になりますね。

山下 まあ、望んで撮ったっていうより、知り合いが熟女メーカーのプロデューサーやってて、「撮らない?」って。

松尾 熟女のセックスってどんな感じなの?

山下 俺が撮影で使うのは熟女界の端っこにいるような人が多いけど、別に若いコと変わんないよ。「熟女は優しい、献身的」なんてイメージあるけど、そんなこともないし。マ〇コは熟(う)れてますけどね。

松尾 NGとかってあるの?

山下 それも特にないんだけど、強(し)いて言えば、体が軟らかくないから騎乗位は大変そうではあるよね(笑)。

松尾 難儀だねぇ。

山下 とはいえ、熟女を撮ってて「女だなぁ」って感じる瞬間も一応あって。

松尾 どんな?

山下 AVと風俗をかけもちしてる熟女がいてね。最初は「私、3万人とヤッてるの」って豪語してたの。聞けばダンナがひどいDVで、朝から晩までソープで働かされてる人だったんだけど、撮影のたびに経験人数を聞いてたら、3万人から「1万人」「5千人」って、なぜかどんどん減ってきて。ちょっとでも自分をカワイく見せようと。その女心は面白いなって。

松尾 5千人でもせいぜいなのにねぇ(笑)。俺はその頃、単体女優を撮り始めてたんですよ。希崎ジェシカ、ましろ杏、水城奈緒…って感じで。全員が前回で説明した“ニュータイプ女優”でした。特に印象深いのは水城。

山下 水城って、デビューはS1だったよね?

松尾 そう。経験が少ないまま業界入りして、S1の頃はセックスをあんまり理解できてなかったみたいなんだけど、実はものすごい濡れるコで。最初、彼女が公園で猫をなでてるとこを撮ってたんですよ。それで、ミニスカートをはいてたから脚を少し開かせて撮ろうとしたら、パンツにジワッとシミができてて!

山下 どうせシコロー(仕込みのローション)でしょ?

松尾 (無視して)で、そのことを指摘したら「いや~ん」って。ホテルへ移動すると、太ももまでベチョベチョですよ。濡れすぎてパンツが透けちゃってて、モザイクをパンツの上に入れたほどだから。

山下 だから、シコロー3本ぐらい使ったんでしょ?

松尾 (無視して)俺にしては珍しく、ベロンベロン舐(な)めてから一発ヤリましたね。

カン松、震災直後の仙台へ……

山下 なんでそんな濡れんの。

松尾 彼女、本番の時にはコンタクト外すんだって。するとセックスに集中できるし、相手にしがみつける。だから濡れるっていう話をしてたんだけど、要は無自覚なドスケベってことでしょ(笑)。

―11年には東日本大震災が起き、すべてのエンターテインメントが大なり小なり影響を受けました。AV界隈(かいわい)はどんな様子でしたか?

松尾 震災直後はイベントも全部中止になりましたね。もう業界全体が自粛、自粛、自粛って感じで。

山下 あの年はAVが売れなかったって聞くよね。

松尾 当時、喜んだり、笑ったりするのさえ許されない風潮が社会全体にあって、一方で“絆”みたいな言葉がひとり歩きしてる状況に俺はものすごい違和感があった。それに抗(あらが)うっていうわけじゃないけど、『恥ずかしいカラダ 愛咲れいら』(ハマジム)っていう、被災地を舞台にしたAVを撮ったんですよ。

山下 仙台でロケしたやつ?

松尾 そう。愛咲れいらってコで。借金を背負って実家の仙台から家出状態で出てきて、地下鉄の新宿駅でキャリーバッグ引きずって歩いてるとこをスカウトされたと。で、連れていかれた先が風俗とAVで。

山下 ありがちな話だね。

松尾 その後、男にだまされて稼いだ金を持ち逃げされたりして、AVの引退と復帰を繰り返してたんだけどさ。

山下 いつ面接したの?

松尾 震災直後だね。そこで「仙台に住んでたことがあって心配だけど、まだ行けてない」って言うから、「じゃあ行こう」って話になって。

山下 当時、簡単に行けるような状況だったんだっけ?

松尾 4月に入ってすぐ、臨時便が飛び始めたタイミングで行った。上空の機内からも津波の爪痕(つめあと)が確認できたし、街へ出たら瓦礫(がれき)の山ですよ。

山下 だろうね。

女優が被災地で「ヤバい」を連呼!?

松尾 ただね、街を歩いてみると、瓦礫を運ぶトラックもガンガン走ってて、それぞれが生活のために立ち上がって、復興に向けて前に踏み出してたんですよ。そういう現実っていうか、人間のたくましさみたいなのを目の当たりにしたら彼女、心の弱いコだから動揺して酒が飲みたいって言い出して。で、コンビニで買って飲ませたんだけど、結局ぶっ壊れちゃった。

山下 ぶっ壊れた?

松尾 思い出の場所だっていう七ヶ浜(しちがはま)へ向かう道中から言動が怪しいっつーか、ずっと「ヤバい、ヤバい」を連発してて。で、海岸に着くとおもむろにバッグからポーチを取り出すわけ。俺、数珠でも着けるのかなって思ったんだけど、中から出てきたのはパワーストーンで。それを狂ったように腕に巻き出してさ。

山下 う~ん…。で、セックスはしたの?

松尾 仙台のラブホテルで一発ヤリましたね。パワーストーン効果なのか、彼女、元気になって。俺もチ○ポ突っ込みまくりました。

山下 よかったじゃん。

松尾 …けど、このロケが終わって、愛咲れいらはAVから消えたんです。

山下 そうなんだ。

松尾 連れていったのがよかったのか悪かったのか…。そんな後味を残したっていう意味でも、2011年はすごく印象深い年でしたよね。

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●この続きは『週刊プレイボーイNo.48』でお読みいただけます。

(構成/黒羽幸宏 撮影/井上太郎 取材協力/ハマジム アリスJAPAN アイデアポケット センタービレッジ ルビー)

●カンパニー松尾1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット

●バクシーシ山下1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など