コンビニの成人向け雑誌コーナー。今後、表紙中央部がカバーで覆われると、上部と下部にはこれまで以上に過激な表現が並びそう?

大阪府堺市の成人向け雑誌(いわゆるエロ本)対策が波紋を呼んでいる。子供らの目に触れるのを避けるため、半透明のビニール帯で雑誌を包んでしまうというのだ。

一体、なんでこんな余計な…いや、超素晴らしい施策を考えついたのか?

「有害図書については、コンビニ店も『成人向け雑誌』専用のラックに陳列するなどの対策をしてくれています。ただ、性暴力、セクハラを減らすための市の施策をつくる中で、市民から『小さな子供がそのラックの前に行けば、いやでも有害図書の表紙が目に入ってしまう』という提起があったんです。そこで、雑誌をビニール帯で覆ってしまうというアイデアが出てきたんです」(堺市役所市民協働課)

ただ、雑誌をビニール帯で覆ってしまうと、タイトルも記事の中身もわからない。買うほうは困るのでは?

「だから、幅12㎝の半透明ビニール帯で、雑誌の中央部分だけを覆うつもりです。これなら表紙の上部と下部は隠れないので、雑誌名や販売管理のためのバーコードが隠れることもありません」(前出・市民協働課)

堺市ではこの施策のためにビニール帯13万枚など95万円の予算を計上。この3月にも実施できるよう、包装作業の協力をコンビニ店に依頼する予定なのだとか。

これに渋い顔を見せるのがエロ本業界だ。ある風俗情報誌の編集長が悲鳴を上げる。

「売る側としては困ります。今やアダルト誌はどこもコンビニ売りがほとんど。そのコンビニで雑誌の命ともいえる表紙や、そこで打ち出したい見出しが覆われてしまうとなると売り上げにも響く。死活問題ですよ」

そうでなくても近年、成人向け雑誌は部数減に悩まされているという。別の雑誌を担当する編集者が言う。

エロ本の取り扱いをやめるコンビニも

「04年に中身が見られないよう、本の小口にシールを貼る規制がスタートしてから売り上げがガクンと落ちました。目次すら読めないのだから当然ですよ。そこで各誌とも、目次の見出しをどんどん表紙に載せるなど工夫を凝らしてみたんですが、売り上げ減に歯止めはかからず…。あの小口シールは有害図書のお墨付きのようなものですから(苦笑)、以降はコンビニの売り場スペースもぐっと狭くなりました」

弱り目にたたり目。さらに、コンビニ側からこんな注文がつけられることも。

「『表紙の写真の胸の谷間が見えすぎる』とか『緊縛の写真はやめてくれ』というのはしょっちゅうですし、表紙には『中出し、輪姦、獣姦、近親相姦といった言葉はNG』とか、いろいろ言われてるんです。でも、こちらは置いてもらってる以上、逆らえないわけで…」

エロ本業界の関係者たちが心配するのは、今回の規制が広がることによって取り扱いをやめるコンビニが出てくることだ。

「小口シールの時は、シールを作るのも貼るのも、負担は出版社が請け負いました。でも今回、本をビニール帯で覆う作業はコンビニ店員がやるというから、その分、コンビニ側の仕事増になる。それを嫌って、コンビニ側がただでさえ売れ行きの悪いエロ本は置くのをやめようということにもなりかねない。そうなれば、業界の縮小に歯止めがかからなくなりますよ(泣)」

ただし、決まったことは仕方ない。前出の編集長はこう腹をくくる。

「今後、12㎝の帯で表紙を半分隠されるとなったら、もうそれをデザインだと思って、それを前提に表紙のレイアウトを考えるしかない。隠れていない上下スペースにより多くのキャッチーな情報やそそる写真を入れ込むとか。ビニール帯を逆手に取ってしぶとく生き残るしか方法はありません。ここからがサバイバルです」

表紙の一部がカバーで覆われると、むしろエロさが際立つ気がしないでもないが、業界の「次の一手」に期待したい。

(取材/ボールルーム)