「告発した女性記者が孤立したり、二次被害を受けないよう、自分が責任者となって、しっかり擁護してほしい」と野田総務相に期待する古賀茂

福田淳一財務次官が複数の女性記者に、セクハラ発言を繰り返した問題。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、野田聖子総務相に被害女性の後ろ盾になってほしいと期待を寄せる。

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野田聖子総務相に期待したいことがある。それはセクハラ被害を受けた女性の擁護者になってほしいということだ。

福田淳一財務次官が複数の女性記者に対し、セクハラ発言を繰り返した事件で、財務省は4月16日、報道各社に驚くような要請をした。福田次官がセクハラ行為を否定していて事実確認ができないので、本当にそのような女性記者がいるのか、調査してほしいと申し入れたのだ。

そして4月18日、福田次官は辞意を表明。その深夜、テレビ朝日がセクハラを受けた記者の中に自社の女性社員がいたと発表した。当該社員が受けたセクハラ被害について、財務省に抗議するとともに、その女性の人権を徹底的に守っていくとし、同時に「取材活動で得た情報を第三者に渡したことは報道機関として不適切だ」とも述べた。

とにかく、女性記者は被害者である。実名や顔写真などが出回るような二次被害を彼女が受けることは、絶対に避けなければならない。

しかし、ここで改めて考えなければいけないことがある。

官邸詰めの記者や警察回りなど、以前なら男性記者が担当していた分野に、最近は女性記者がたくさん進出している。それ自体は好ましいことなのだが、手放しでは喜べない面もある。

なぜなら、その根っこには「女を武器にしてでもネタを取ってこい」というマスコミの“体育会体質”があるからだ。

そもそも、どうして“財務次官のセクハラ”というスクープを自社に渡さず、週刊誌に持ち込んだのか? これは自社で報道しようとしても、握りつぶされると危惧したからだ。

テレ朝の報道局長ら幹部は、官邸からの圧力を受けたときに、それを隠した過去がある。そんな人たちが女性記者を「徹底的に守る」と言っても誰が信じるだろう。テレ朝は、女性記者が新潮に音源を渡したことを批判しているが、これもとんでもないことだ。

命がけの告発者を自分も命がけで守る覚悟を

そこで野田総務相である。彼女は女性閣僚のひとりであり、憲政史上初の女性宰相になる可能性がある政治家だ。しかも現内閣では「女性活躍担当相」も兼務している。これほどセクハラ被害に悩む女性の後ろ盾としてふさわしい人はいない。

野田総務相は4月17日の記者会見で、「セクハラの被害者は家族にも相談できないのが現実。被害者の立場に立てば高いハードルがある」と、財務省の調査に違和感を示し、麻生財務相にもそれを伝えたとしている。

ただ、それだけでは、ただのパフォーマンスにすぎない。ここは女性活躍担当相として、一歩踏み込んだ具体的行動をとってほしい。

まずは、自身が先頭に立っての次官セクハラ疑惑の真相解明。福田次官が辞任した後であっても、うやむやにしないで最後までやる。そして、何より告発した女性記者が孤立したり、二次被害を受けないよう、自分が責任者となって、しっかり擁護することだ。これを閣議で提言し、受け入れられなければ辞表を出す。命がけの告発者を自分も命がけで守る。それくらいの覚悟を示してもらいたい。

それができれば、女性だけでなく、正義感を持った実行力のある政治家として、男性有権者の支持も高まり、その先にある初の女性宰相への道も、ぐっと開けてくると思うのだが、どうだろうか?

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中