2012年の第2次安倍政権発足以来、ずっと副総理兼財務大臣の麻生氏(右)。最近は財務省スキャンダル&舌禍で風当たり強し森友・加計スキャンダルの再燃で政権支持率が急降下し、一時は9月の自民党総裁選での3選が危ぶまれる声も多かった安倍首相。しかし、6月10日の新潟県知事選で自公候補が野党統一候補に競り勝ったことで、風向きは変わってきたという。

全国紙政治部記者が語る。

「もし新潟県知事選に負けていれば、スキャンダルで弱体化した安倍政権では来年の参院選や統一地方選を戦えないとばかり、党内から安倍降ろしの動きがあってもおかしくなかった。しかし、これで9月の総裁選勝利はかなり濃厚になりました」

政治評論家の有馬晴海(ありま・はるみ)氏もこう予測する。

「首相が所属する細田派、麻生派、二階派の主要3派だけで国会議員が200人。これは自民の衆参議員407人の約半数に当たります。一方、ライバルと目される 石破茂(いしば・しげる)元防衛相を支持する石破派はわずか20人。石破氏の頼みの綱は地方党員票ですが、いかんせん現在は無役なため存在感が薄い。頑 張っても半分取れればいいほうでしょう。首相がほかのライバル候補を抑え、大差で3選を果たすと予想しています」

さらに言えば現在、自民党には"大臣ポスト待ち"の中堅・ベテラン議員が60名ほどいる。彼らにしてみれば、素直に安倍首相を支持し、ポストが回ってくるのを待つのが現状では最も合理的だ。

しかし、安倍首相に落とし穴がないわけではない。ジャーナリストの川村晃司氏は、ある大物代議士の存在をリスクとして挙げる。

「日朝首脳会談に意欲を燃やす首相は、おそらく国会後の7、8月に内閣改造を行なうはず。『拉致問題解決実行内閣』などと命名して船出すれば、支持率アップが期待できますからね。ただ、その際ひとつ気になるのが麻生太郎副総理兼財務相の処遇です。

財 務省の文書改竄(かいざん)問題で、麻生氏の辞任を求める声は根強い。首相が改造を機に財務相交代を求め、それに麻生氏が反発するようなことがあれば、総 裁選は風雲急を告げます。麻生派がもともと同じ旧宏池(こうち)会から枝分かれした岸田派と組み、岸田文雄政調会長を推すというシナリオも考えられるから です」

"内のリスク"が麻生氏なら、外のリスクは...そう、トランプ米大統領だ。前出の有馬氏が指摘する。

「トランプ大統領は巨額の貿易赤字の削減を求め、日本から米国へのアルミニウム・鉄鋼や自動車の輸出に高関税をかけようとしています。安倍首相がそれになんの抵抗もできず、唯々諾々と受け入れてしまうようだと、一気に支持率を落とす可能性も否定できないでしょう。

ま た、拉致問題にも大きなリスクがあります。首相はトランプ大統領を通じて北朝鮮・金正恩(キム・ジョンウン)委員長に圧力をかけていると言いますが、米朝 首脳会談でのトランプ大統領の言動を見る限り、本当にその要求をきちんと伝えているかどうかは甚だ怪しい。もし、そのあたりの不十分さが明るみに出るよう なことになれば、それこそ首相の権威は失墜してしまいます」

永田町の一寸先は闇。もはや数年前のような高支持率は到底望めないとなれば、やっぱり綱渡りは続く?