三度目の正直で高プロを成立させた安倍首相(左)と、野党の追及を「ご飯論法」でのらりくらりとかわし続けた加藤勝信厚生労働大臣(右)

「働き方改革の一環」といえば聞こえはいいが、その内容をつぶさに見れば、明らかに経営者にとって有利な"働かせ放題"、労働者から見れば"働かされ放題"。

すでに成立してしまった悪名高き「高プロ」の問題点を、専門家と共にチェックする!!

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安倍政権が今国会の最重要課題と位置づけていた「働き方改革関連法」が6月29日に成立した。正社員と非正規労働者の待遇差をなくすことを目的とした「同一労働同一賃金」や、「時間外労働の上限規制」なども含む計8本の法律で構成されるものだが、なかでも野党や労働団体が猛反発していたのが「高度プロフェッショナル制度」(以下、高プロ)である。

高プロとはどんな制度か? 人事コンサルタントの城繁幸(じょう・しげゆき)氏が解説する。

「一般的な労働者は、労働基準法によって働く時間が『一日8時間、週40時間以内』と決まっている。それ以上働かせる場合、会社は残業代を払う必要があります。高プロとは、年収1075万円以上の専門的な職業に就く労働者を、この労働時間規制や残業代、休日・深夜の割増賃金の支払い対象から外す制度です」

安倍首相は、高プロの法制化に過去2度失敗している。第1次政権の2007年、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の名称で法案提出を目指すも断念。15年にも高プロを盛り込んだ労基法改正案を国会提出したが、野党から「残業代ゼロ法案だ」と猛反発を受け、審議入りできず......。今回、三度目の正直で悲願の法制化を勝ち取った格好だ。

しかし、この制度には労働者側から見ればさまざまな問題点が潜んでいる。

■そもそも制度化の理由がでっち上げ

安倍首相は国会で高プロの魅力をこう力説していた。

「9時から17時といった画一的な勤務時間に縛られることなく、自分に合ったペースや段取りで仕事を進め、短時間で仕事が仕上がれば、余暇を楽しみ、あるいはさらなる成長にチャレンジすることもできる。時間ではなく成果で評価される働き方を望む労働者のニーズに応えるものだ」

聞こえはいいが、実際にはその「労働者のニーズ」自体が実にいいかげんなものだった。法政大学キャリアデザイン学部の上西充子(みつこ)教授が言う。

「『労働者のニーズ』の根拠は、厚生労働省が高度専門職の人にヒアリングしたというデータでしたが、実際に聞き取りを行なった人数はたった12人。しかも、そのうち9人は法案がほぼ完成した後、国会で野党から『働く人のニーズを把握しているのか?』と追及されたその日と翌日に急ごしらえで実施されたものでした。『労働者のニーズ』とは、でっち上げだったのです」

◆『週刊プレイボーイ』30号(7月9日発売)ついに成立した働き方改革関連法の本丸は"過労死量産システム"!?「危険すぎる『高プロ』に仕組まれた7つのワナ」より