3選を果たしたが、プーチンの奇襲にまったく反応できない安倍首相

現職の安倍首相と石破茂氏との一騎打ちだった自民党総裁選。安倍首相はさまざまな批判を受けていたが、それらをはねのけ......というよりはスルーし、無事に3選を果たしたが、その先には多くの難題が!

政権にとっても日本国民にとっても、大荒れ必至の厳しい船出になりそうだ。

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総裁選で安倍首相がしきりにアピールしていたのが、外交面の実績。在任中の外遊回数は実に66回に及ぶ――その数字を見れば、確かに「長くやってきただけのことはある」という見方もできる。

しかし、最近はその自慢の外交面でも、安倍政権はピンチの連続だ。象徴的なシーンは9月12日、ロシアのウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」の全体会合。ロシアのプーチン大統領が突然、安倍首相に「年末までに前提条件なしで平和条約を結ぼう」と呼びかけたのだ。

これに対し、安倍首相は困ったように苦笑いを浮かべただけ。元外務省駐レバノン大使の天木直人氏はこう批判する。

「北方4島の帰属を解決し、その上で平和条約を結ぶというのが日本政府の方針。『前提なしの平和条約』というプーチン大統領の提案は領土問題の棚上げにつながりかねず、安倍首相はその場で反論すべきでした。明らかな外交的失態です」

これには自民党関係者もこう頭を抱える。

「プーチン大統領と計22回も会談し、北方4島の共同経済活動に3000億円も出す約束を交わした挙句にこの失態です。率直に言って、安倍さんは完全にプーチンになめられている。これならウラジオストクに出かけず、国内で災害対策に汗を流している姿を国民に見せるほうがずっとよかった」

頼みの日米関係にも陰りが出ている。安倍首相がゴルフ外交などを通じて「万全の信頼関係にある」と強調するトランプ大統領から、貿易交渉で大幅な譲歩を迫られているのだ。経済産業省関係者が困り顔でこう語る。

「トランプ大統領との"特別な友人関係"を武器に、TPP(環太平洋経済連携協定)への復帰や追加関税の例外化を勝ち取るというのが官邸の対米戦略でしたが、そのシナリオはすでに破綻しています。

特に厳しいのがFFR(日米閣僚級貿易協議)の交渉。9月末にも米ニューヨークで日米首脳会談が行なわれる可能性がありますが、安倍首相は中間選挙を11月に控えたトランプ大統領に厳しく迫られ、自動車関税の25%引き上げか、牛肉などの農畜産物の市場開放のどちらかを受け入れざるをえないかもしれません」

そのアメリカと"貿易戦争"の真っただ中にあるのが中国。習近平政権は、トランプ政権への牽制(けんせい)カードを手に入れるべく、日本との関係改善に動こうとしている。向こうから秋波を送ってきている今は、普通に考えればチャンスのはずなのだが......。外務省関係者がこう嘆く。

「中国側の意向を受け、安倍首相は10月にも訪中予定。そして、年内あるいは年明け早々に習主席が訪日するプランが検討されていました。ところがその直後、9月17日に安倍官邸は、海上自衛隊の潜水艦が初めて南シナ海で訓練を行なったと公表したのです。

中国は南シナ海問題を核心的利益と位置づけている。習主席も反発せざるをえません。日米同盟を基調とする日本の立場として......という言い分はあるでしょうが、今必要な施策がこれだったとはとても思えない。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので、中国に対する外交メッセージの出し方が支離滅裂です」

対露、対米、そして対中と、打つ手がことごとく裏目に出てしまっているのだ。

ジャーナリストの川村晃司氏もこう言う。

「実は北朝鮮外交もうまく進んでいません。特に拉致問題に関して首相は『安倍内閣の間に解決する』と豪語してきたのに、この5年半ほとんど進展がない。就任以来、数多くの外遊をこなしてはいますが、"外交やってる感"が強いだけで、実際にはさほど成果が上がっていないんです」

まさに出口なしの袋小路。厳しい局面は当分続く......。

『週刊プレイボーイ』41号(9月22日発売)「日本はホントに『安倍一択』しかないんか!『安倍3選』でニッポン大荒れ警報!!」では、安倍首相が早期の改憲発議にこだわる理由や、週刊プレイボーイで「政界斬鉄剣!!!」を連載中の池田和隆氏が、自民党総裁選後の展望についても解説している。