轟-20のネタ元は米空軍の戦略爆撃機B-2。あまりに高価なため21機で生産が打ち切られた虎の子だ

これはパクリか、それとも"インスパイア"か?

〈中国人民解放軍が開発中の、核兵器を搭載可能なステルス戦略長距離爆撃機「轟-20」(H-20)の電子機器などのテストが終わった。近く試験飛行が行なわれる〉

10月10日、中国共産党の機関紙である人民日報の姉妹紙『環球時報』がそう報じた。

轟-20の動向は、ふたつの理由で軍事専門家の間で大いに注目されている。ひとつは、中国にとってICBM(大陸間弾道ミサイル)、SLBM(潜水艦搭載弾道ミサイル)に続く、3番目の核攻撃手段であること。昨年には米国防総省が、「中国が核兵器搭載の戦略爆撃機を開発している」という文書を公開し、警戒感を強めていた。

そして、ふたつ目の理由は"パクリ疑惑"。今年8月に国営テレビ局のCCTV(中国中央電視台)が放映したプロトタイプの映像を見る限り、その形状が米空軍のステルス爆撃機B-2に酷似していたのだ。

「米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35の極秘資料も、中国の諜報(ちょうほう)活動やハッキングなどで盗まれ、数年後にはそっくりなステルス戦闘機『殲-31』が完成した。当然、B-2の技術についても、あらゆる手を使って収集していたはずだ」(米空軍関係者)

B-2は1機当たりの量産コストが約1000億円、開発費を含めれば約2000億円と極めて高額で、グラム単価はゴールド(金)よりも高いとされる。それゆえに、米空軍も21機で生産を打ち切らざるをえなかったほどの"虎の子"の兵器だ。

その特徴は「全翼機」と呼ばれる異様な形状。胴体部の膨らみや尾翼がなく、全体が一枚の主翼であるかのように設計され、敵のレーダーから身を隠すステルス性能を高めている。おそらく轟-20も、その点を狙っているはずだ。

航空評論家の石川潤一氏はこう語る。

「轟-20はまだ公式想像図もないので、細部がどこまで似ているかは不明ですが、既存の機体に似せることでゼロから立ち上げるよりも開発費の抑制、開発期間の短縮が実現できることは間違いない。中国のリバース・エンジニアリング(完成品の構造を分析して技術情報を得ること)はかなり進化しているため、単なる丸パクリにとどまらず、そこに独自の技術を加えてアップデートしている可能性も十分に考えられます」

では、その実力はどんなものになるのか? 航空評論家の嶋田久典氏はこう語る。

「亜音速のマッハ0.8程度で飛行し、航続距離は8000km以上。核を含むミサイル・爆弾を10t以上搭載でき、主武装は巡航ミサイル10発~16発になりそうです。

注目すべきは航続距離の長さ。南シナ海の南沙諸島に造成した航空基地から出発すれば、グアムやサイパンはもちろん、ハワイまで到達できます(復路は空中給油機を使用)。轟-20は、米海軍太平洋艦隊の拠点を叩くための切り札になるのでしょう」

轟-20は遅くとも来年10月までに初公開される見込みだという。その頃には同じく現在開発中の、米本土を狙うSLBM「巨浪(ジュラン)2」(JL-2)も実戦配備されている可能性が高い。太平洋、そして日本を挟んで、米中が核を突きつけ合う時代が迫る......。