2020年1月に発足する見込みの「カジノ管理委員会」は、菅官房長官が取り仕切る内閣官房に設置される

8月22日、神奈川県横浜市が首都圏初となるカジノ誘致方針を電撃表明したことで、自治体の招致レースが過熱している。 

全国で3ヵ所が選ばれる見込みで、現在、招致レースは7自治体ほどまでに絞られているという。カジノ問題に詳しい某シンクタンク研究員が解説する。

「レースに参加しているのは北海道、千葉市、横浜市、愛知県、大阪府・市、和歌山県、長崎県。『IR実施法』ではカジノ誘致の要件として、議会の議決が義務づけられており、横浜市が参戦表明するまでは、首長の賛同に加えてすでに議会の同意もある大阪、和歌山、長崎が一歩リードしている格好でした」

しかし、その状況は一変した。国際カジノ研究所の木曽 崇(たかし)所長が言う。

「世界のカジノ業者は大きな収益が見込める大都市部、それも東京など首都圏での開業を熱望しています。ただ、これまで大都市部で招致体制を整えているのは大阪だけで、首都圏では表立って招致に動く自治体はなかった。そこに横浜市が誘致を公言したことで、一気に有力候補に躍り出たのは間違いありません」

実際、カジノ業者は横浜市の動きに敏感に反応した。米IR大手のラスベガス・サンズと香港のメルコリゾーツは、招致レースのトップを走る大阪での開業を目指し、現地に事務所を開設していたが、横浜市が招致に動くや否や、「大阪での入札には参加せず、首都圏での開業に備える」とぶち上げたのだ。

こうなると、カジノ業者が太鼓判を押す横浜と、前述の2社が撤退したとはいえ2025年万博開催が決まっている大阪は"当確"が濃厚。残る5つの自治体が、最後のイスをめぐって争うという構図になる。

全国紙政治部記者が言う。

「永田町周辺では"菅銘柄"の自治体が勝利するとの声がもっぱらです。カジノ免許の付与や規制を担う『カジノ管理委員会』は、菅 義偉官房長官が取り仕切る内閣官房に設置される。そのため、最終的には菅長官と親しい首長のいる自治体が有利だと目されているんです」

確かに、松井一郎大阪市長と菅長官は昵懇(じっこん)の間柄だし、林 文子(ふみこ)横浜市長も、横浜を自身の選挙区とする菅長官の"子飼いの市長"として知られている。誘致表明にあたり、菅長官が熱心に林市長を後押ししたことは公然の秘密だという。

それでは、3番目の最後のイスをゲットする"菅銘柄"の自治体とは?

「今年4月に就任した鈴木直道知事がいる北海道です。ふたりは法政大学の同窓で、菅長官は以前から鈴木知事をかわいがっており、知事が夕張(ゆうばり)市長だった時代には総務大臣として、破綻した市財政の再建についてアドバイスしたほど。知事選への擁立も菅長官が決めたことで、自民党内では鈴木知事は"菅直系"と見なされています。ふたりの関係を考えれば、招致レースの3番手に北海道が入ったとしてもおかしくありません」(政治部記者)

カジノ立地が決定するのは20年秋から21年初め頃の見込み。永田町の下馬評どおり、3つのイスを"菅銘柄"が独占するのか? それとも、まだどんでん返しがあるのか? 要注目だ。