中国がまたしても、とんでもない兵器を開発しようとしている。

10月10日に開幕した第5回中国天津(てんしん)国際ヘリコプター博覧会で機体がお披露目された「スーパー・グレート・ホワイト・シャーク」。一応、攻撃ヘリのカテゴリーに入れられているようだが、どう見てもUFOそのものだ!

ロボット掃除機「ルンバ」のような機体は直径7.62m、高さ2.85mで、上部の突起部分に2名が搭乗。飛行原理としては、まず機体内部の4.9mのメインローターを回して離陸し、その後は左右の補助ジェットエンジンで水平飛行する。

最高飛行速度は時速650キロ、最大離陸重量6t、最大運用高度6000m、そして航続距離は2950kmに達し、2020年に初飛行が行なわれる予定だという。

"空飛ぶ円盤"の実用化に人類が挑むのは、これが初めてではない。第2次大戦期にナチス・ドイツが開発しようとしたとの噂があり、東西冷戦初期にも、米軍が真剣に開発に取り組んだ記録がある。航空評論家の嶋田久典氏が言う。

「2012年に公開された情報によれば、1950年代に米空軍と陸軍が、アヴロカナダ社と組んで『VZ-9 アヴロカー』という機体を試作しています。今回の中国のものと構造は似ており、機体内部に三角形に配した小型エンジンからの噴流で機体中心部のローターファンを回し、そのローターで吸い込んだ大量の空気を機体周縁部から下方に噴き出して浮揚するという構想でした。

ただし、当時は特定の高度を超えると空気の流れを制御できないという問題を解決できず、開発は中止されました。飛行性能・特性も満足いくものではなかったようです」

過去にアメリカが失敗したコンセプトに、なぜ中国は挑むのか? 嶋田氏が続ける。

「炭素繊維などの複合材による軽量化・小型化と電子機材の進歩によって、より機敏で正確な機体コントロールが可能な現代の技術水準なら、VZ-9の失敗を覆すことができるかもしれないからです。VZ-9は"空飛ぶジープ"として機関銃や無反動砲を搭載することも検討されましたが、今回の中国の機体にはさらに重いミサイルなどを積むとされています」

この"空飛ぶ円盤"が実用化された場合、どんな任務が可能なのか。その点はまだ定かではないという。

「機体に使われる炭素素材は、確かに金属よりは電波反射特性が小さいものの、レーダーによる探知を防ぐほどのステルス性を確保できるかといえば疑問です。また、左右のエンジンは赤外線を発するため、それを探知されて対空ミサイルの餌食となってしまう脆弱(ぜいじゃく)性も懸念されます。

ただ、実際に使ってみることで新たな使い方、新たな戦術が生まれる可能性はあります。民間市場では限られた用途でしか成功していないドローン(無人機)が、今や軍事の陸戦分野では革命ともいえるような潮流を生み出しているわけですから」(嶋田氏)

従来の常識にとらわれず、過去の失敗コンセプトに再度挑む余裕と資金力。それこそが中国の最大のパワーなのかもしれない。大量の円盤が東シナ海を渡って日本にやって来る――想像しただけで怖い。