安心して家にこもれるようにすぐにお金を出さなくては、国民は精神力で耐えることはできません

新型コロナウイルスの感染拡大が続くアメリカで特に事態が深刻な東部のニューヨーク州では、感染者が6万人近くになり、アンドリュー・クオモ州知事が労働者の自宅待機を4月15日まで2週間延ばすと発表した。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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今世界は"戦時下"にあります。昨年「武漢で原因不明の肺炎患者が発生」という一報を見たときには、こんな状況になるとは想像していませんでした。

私の家族はオーストラリアで生活しており、私自身は日本でひとり暮らしの出稼ぎ状態。1月の半ばから、家族とは会っていません。先に感染が広がり始めた日本から、万が一無自覚にウイルスを豪州に持ち込んではいけないと思ったからです。

やがて豪州でも感染が拡大し、3月末の時点で感染者は3000人以上に。特にシドニーやメルボルンで増加しており、すでに市中感染のフェーズに入っています。事実上の国境封鎖に加え、州境の移動が制限され、学校の秋休みは前倒し。そして、食料品や医療品の買い出し、健康維持のための運動、在宅でできない仕事以外は外出禁止。集会は自分を含めてふたりまでです。

私は家族とテレビ電話で連絡を取り合いながら、東京の部屋で日本と英米のニュース番組を見ています。イタリア、スペインでの極めて厳しい状況に加え、アメリカでも急激に感染者が増加。特に感染爆発が著しいのはニューヨーク州。アンドリュー・クオモ州知事の会見は、詳しいデータと簡潔な説明に加え、真剣味の伝わる口調で、非常によく状況がわかります。

ニューヨーク州以上に人が過密な東京に住んでいる身としては、人ごととは思えません。今、日本は欧米の例から学ぶべきことがたくさんあり、わずかですが対応する時間も残されています。

重症者用ベッドの大幅増床、医療者の臨時増員、医療用防護具の確保、人工呼吸器や人工心肺装置の確保、医療従事者の宿泊施設の確保など。アメリカでは軍隊を使って既存の建物を複数の臨時の病院に変え、空いているホテルや寮を軽症者の隔離施設にするなどしてなんとか予想されるピーク時に備えようとしています。

東京では若者が地方に向かう夜行バスで故郷に戻っているという報道がありましたが、イタリアでは若者が家族の元に戻って親や祖父母に感染させる例が多発しました。他国の例を見ていれば何か呼びかけができたはずです。外出自粛を呼びかける自治体も増えてきましたが、きちんと補償して厳しく制限するほかに、人の動きを抑える方法はありません。

今後日本も全国で外出禁止令を出すこともありえるでしょう。安心して家にこもれるようにすぐにお金を出さなくては、国民は精神力で耐えることはできません。

非常時のリーダーには「今どうなっており、次にどうするのか」を具体的に説明する能力が問われます。いいことも悪いことも人々に知らせなくてはなりません。用心深さは勇気です。今は人の命がかかっています。一刻も早く、お金と医療体制の整備を。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。共著『女の七つの大罪』(角川文庫)が好評発売中

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