どんな時代でも、おかれた場所で希望を語るのは大事なことです

菅 義偉内閣の発足を受け、日本経済新聞社とテレビ東京は緊急世論調査を実施。内閣支持率は74%で、政権発足時としては過去3番目の高さだった。閣僚の平均年齢は59.9歳、女性閣僚も少なく「おじいちゃん政治」との指摘もあるが、これも民主主義の答えなのか。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと、最終回です。

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週プレとのご縁はもう10年くらいになり、連載も数年間になりますが、担当編集者のお人柄や編集部の皆さんの熱意に親しく触れる機会があったものの、私にとっては読者はいつもどこか遠い存在でした。読者像なんてものは幻想で、案外みんなバラバラかもしれませんよね。

この10年で、皆さんは考え方や習慣が変わりましたか。年齢や立場の変化に伴って、興味の対象などが変わったかもしれません。私も10年前を振り返ると、今と変わらない部分と、大きく変わった部分があります。一番の変化は諦めが大きくなったということかもしれません。

10年前は、世の中がよりハッピーな場所に変わればいいなという希望が今よりもあったように思います。期待が大きい分、失望も大きかったですし、奮闘して働きかけようという気持ちもありました。

でも10年たって、なるほど、多くの人が現状維持を望んでいるなら、世の中はそれでいいのかもしれないと思うようになりました。民主主義ですから。この社会の多数派が変わらないことを望むのなら、どうぞという心持ちです。

とはいえ、ぼうっと生きているのももったいないので、自分に言えることは言っていこうと思っています。

ジェンダー平等やハラスメントなんかはそうですね。理解する気のない人が多いのもよくわかりましたし、それが経済的にも大きなリスクだとわかっていて改める気がないなら、割を食うのは当人たちですから、まあ仕方ないねという気もします。国力を犠牲にしても弱者切り捨てや男尊女卑やいじめ体質を維持したいという選択なのでしょう。 

ある若手研究者は「教育と淘汰(とうた)ですね」と言い切っていました。ジェンダー平等やハラスメントについて理解しようとしない人たちは生き残れないので、放っておいても早晩いなくなる。その人たちを変えようとコストをかけるのは無駄である。それよりも、教育効果の上がる子供たちにエネルギーを割いたほうがいいと。

その研究者は男性社会の超勝ち組といえる経歴の持ち主ですが、若いエリート層には同様の考えを持った人もいるのかもしれません。だとしたら多少希望が持てます。当面は熟年統治を若者たちが支持するという構図が続くでしょうから、あと30年は変わらない可能性もありますが。

民主主義社会は多数派の意見が通るもの。選挙や世論調査の結果を見る限りでは、老いも若きもこれまでと同じような世の中が続くことを望んでいるようです。それを横目に、一部には人知れず別天地を目指す若者たちもいるでしょう。

完璧なパラダイスなんてありません。どんな時代でも、おかれた場所で希望を語るのは大事なことですね。ではまたどこかで! ありがとうございました。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。『曼荼羅家族「もしかしてVERY失格!?」完結編』(光文社)が好評発売中

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