3月4日に就役した音響測定艦「あき」は全長67m、排水量2900トン、乗員は約40名でヘリ発着甲板も備える。高性能な曳航ソナーの長さは約800m、それをつなぐケーブルは最長2000mにも及ぶ

海上自衛隊では激レアな"双胴船"と呼ばれる形状の新艦「あき」が3月4日、広島・呉基地に配備された。実に29年ぶり、3隻目の音響測定艦の就役だ。

任務はその名のとおり、音響情報の収集。SURTASS(サータス)と呼ばれる特殊な曳航(えいこう)ソナーを艦尾から延ばし、海中に潜む各国の潜水艦が出す「音紋」を集める。音紋は人間の指紋のようなもので、解析すれば今後の作戦に役立つ。

「集められた音紋は、日米の潜水艦や水上艦の作戦行動に大きな影響を与えます。技術の進歩と長年収集したデータにより、今や同型艦でも個々の艦ごとの音紋の違いがわかるほど。

中国、ロシア、北朝鮮のみならず、今後は南シナ海で整備が進む東南アジア諸国の潜水艦部隊の音紋も必要な時代になるでしょう」(元海自潜水艦艦長・山内敏秀氏)

この奇妙な形状も、自艦の出す雑音や波による船体の揺れが集音に影響することを防ぐため。数百㎞先の海中のわずかなスクリュー音でも探知可能とされる「あき」の"水面下"での活躍に期待だ。

喫水線よりも高い位置にあるディーゼルエンジンで発電機を回して電力を生み、モーターで推進する。自艦のエンジン音が水中に響かないようにするための特殊な構造だ