『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、ウイグル族の強制労働問題について語る。

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このまま嵐が過ぎ去るのを待てばいい――もし、企業のトップがそう考えていたのであれば、それは極めて重大な読み違いだったと言わざるをえません。

ユニクロの綿製シャツが、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区の強制労働をめぐるアメリカ政府の輸入禁止措置に違反したとして、今年1月に米当局から輸入を差し止められていたことが判明しました。

中国政府によるウイグル族への人権侵害の実態が明らかになるなか、ユニクロのサプライチェーンでも強制労働になんらかの関わりがあったのではないかとの疑いを受けての措置です。

綿の原材料は生産過程が複雑なこともあり、現段階でその真偽ははっきりしませんが、少なくともユニクロを展開するファーストリテイリング側の「製品の生産過程で強制労働が確認された事実はない」という判で押したような回答で疑惑が払拭(ふっしょく)されたとは言い難い状況です。

国際社会が急速にウイグル問題を「直視」するようになった背景には、2018年頃から欧米メディアが積極的に報道を続けたことがあります。"ジェノサイド(虐殺)"ともいうべき人権侵害の内容が具体的に可視化されるにつれ、「自分の消費行動もその原因のひとつになっている」という視点が、特に若い世代の間で共有されるようになってきました。

こうした視点はウイグル問題のみならず、ほかの地域での人権問題や環境問題にも通じます。そのため今や欧米でビジネスを展開するグローバル企業は、人権問題や環境問題に深く配慮する姿勢を消費者から見られている。人道に反した労働、環境破壊につながる事業に対する忌避感が、大きな批判や不買運動につながるケースも多々あります。

例えばH&Mやナイキ、アディダスといったブランドがウイグル問題に対してはっきりと態度を表明するなか、日本では政府も企業もどこまでも鈍感でした。

日本社会にはいまだに「政治とビジネスは別物」といった風潮がありますが、もはやこの件に関しては「本音と建前を使い分ける」とか、「のらりくらりとやり過ごす」ような態度を続けていると、"ジェノサイド加担企業"の烙印(らくいん)を押され、欧米市場から締め出されるかもしれない―そんなところまで来ているのです。

今の時代、多くの搾取や弾圧、差別はその社会に独立して存在しているわけではありません。先進国の企業は世界中から「できる限り人件費が安く、一定の基準をクリアした労働力」を探し、自国では決して許されない賃金水準と労働条件で製造された商品は世界中で大きな利益を上げる。

仮に強制労働といわれるようなあからさまな人権侵害がなかったとしても、多くの場合そこには先進国と途上国(しばしば独裁国)の"汚れた関係"があり、誰かの人権が損なわれているのです。

グローバル企業に求められるスタンスは急激に変化しています。中国の経済発展にあやかろうと長年、独裁体制に見て見ぬふりをしてきた日本の政財界、そこから生まれたグローバル企業に「広告主だから」と遠慮して切り込まないメディアの報道。それらの積み重ねが「今」なのです。これは"いつかやむ嵐"ではないということを、日本社会がきちんと認識する必要があると思います。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(関テレ)、『所さん!大変ですよ』(NHK総合)ほかメディア出演多数。NHK大河ドラマ『青天を衝け』にマシュー・ペリー役で出演し大きな話題に。

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