『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、日本はアメリカ、韓国、台湾を加えて半導体製造の協力の枠組みをつくることに尽力することを提案する。

(この記事は、5月30日発売の『週刊プレイボーイ24号』に掲載されたものです)

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5月、バイデン米大統領が20日から韓国、22日午後からは日本を訪問した。

同大統領は韓国に到着するとサムスン電子の平沢(ピョンテク)半導体工場に直行。そこで、サムスン製の半導体ウエハー(ICチップの材料になる半導体物質の結晶でできた円形の薄い板)の上に尹 錫悦(ユン・ソギョル)・韓国大統領と共にサインを残した。

サムスンが作る3ナノ(1ナノ=10億分の1m)の半導体は世界最先端とされるもので、アメリカ国内でも5ナノ以下の半導体を作れる工場はない。その製造ラインをサムスンは約170億ドルを投じて米テキサス州に建設する予定で、この日のバイデン訪問はその投資への答礼の意味を持つ。

バイデン大統領は「韓国のように価値を共有するパートナーと半導体のサプライチェーンを協力して構築したい」と、サムスンだけでなく韓国政府をも持ち上げてみせた。

22日には、EV(電気自動車)とバッテリーの新工場建設や自動運転技術への投資で約1.3兆円を米国に投じる予定の現代(ヒョンデ)自動車の鄭 義宣(チョン・ウィソン)会長と会談、「両国の同盟と経済協力をさらに強固とする契機となった」と話した。

バイデン政権は中国に依存しない半導体のサプライチェーン構築に乗り出している。韓国を味方につけることで、アメリカは競争相手の中国を牽制(けんせい)できる。しかも、サムスンや現代の投資によって米国内の経済や雇用も潤う。まさにバイデン大統領にとって、韓国は「売り」がある国だった。

一方の日本はどうか? 残念ながら、日本の半導体の世界シェアは10%以下で技術レベルも二流に甘んじている。EVの出遅れも顕著。これらの先端ビジネスで、バイデン政権への売りとなる企業や先端技術がないのだ。そのため、日本ではサムスンや現代のように派手なパフォーマンスは行なえなかった。

その代わりに岸田文雄政権が示したのは、日本の軍事費の増額や反撃能力(敵基地攻撃能力の言い換え)保有など、アメリカと共に中国包囲網を強化する安全保障メニューだった。

多くのアジア諸国が米中との等距離外交を目指すなか、その前のめりぶりは、アメリカへの売りを見失った挙句、日本国憲法の根幹を成す「平和主義」を差し出しているように見える。これでは米中戦争に日本が巻き込まれるリスクが高まるだけだ。

バイデン大統領は、韓国と価値観を共有し、半導体サプライチェーンを構築する相手として認めた。一方、日本は韓国に対して安全保障上の懸念があるとして輸出規制の軽減を認めるホワイト国から除外している。アメリカの韓国への信頼を真っ向から否定しているのと同じだ。

この際、日本はアメリカの〝圧力〟をチャンスととらえ、韓国をホワイト国に復帰させ、両国関係の改善を図ってはどうか。

その先に、日本が果たすべき役目について、私にはこんなアイデアがある。それはアメリカと韓国、さらには台湾を加えて半導体製造の協力の枠組みをつくることに尽力するのだ。

4ヵ国による協力の枠組みは「クアッド」といわれる。日米韓台の「半導体クアッド」が実現すれば、日本のメリットも大きい。非軍事的に中国の技術覇権を牽制できるだけでなく、国内に辛うじて残る世界トップレベルの半導体関連の素材・製造装置産業のブラッシュアップもできるだろう。半導体クアッド提唱の資格はあるはずだ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中

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