『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、エネルギーや経済を非人道的な国家に依存する日本社会について指摘する。

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極東ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」をめぐり、ロシア政府が新たに設立した運営会社に三井物産、三菱商事が継続して出資参画する方針が決定され、東京電力や中部電力が出資する発電会社も引き続きこの運営会社からLNG(液化天然ガス)を購入する契約を締結したと報じられました。

気になったのは、この件に関してマスメディアの論調があまり割れることなく、おおむね好意的に報じられていることです。また、日本政府も喜々として「これでエネルギーを確保できる」と後押しする姿勢を示しています。

これは国益のためであり、ロシアの侵略を肯定しているわけではないし、ウクライナの平和を願っている。――この言い分は、統一協会との関係は選挙のためであって、教義や思想に共鳴しているわけではない......という自民党のロジックと似通っています。

その結果、自民党というブランドを統一教会に提供する形となっていたことが大きな問題であるのと同様に、今後もロシアのエネルギー産業に協力し続けること、エネルギーの一部をロシアに依存し続けることがもたらす影響に対し、もっと厳しい言及があってもいいのではないでしょうか?

「われわれはロシアとうまくやる」と胸を張る政治家や財界の論理を、報道の名の下で無批判に垂れ流すのは、ユーラシア大陸全体におけるロシア依存の図式が国際的なイシューとなった現在においては、「木を見て森を見ず」どころか「葉っぱ」程度の小さな点しか見ていないという印象です。

また一方で、秋の日中国交正常化50周年を前に、日中友好ムードを演出しようという動きもここにきて目につきます。つい先日、弾道ミサイル5発をEEZ(排他的経済水域)内に撃ち込まれ、大騒ぎになったばかりなのですが。

日本の政治はあくまでも日本経済の利益を第一に考えるべきである、との論に立てば、どんなことがあっても清濁(せいだく)併せ呑んでロシアや中国との関係を良好にしておくことが"現実路線"なのかもしれません。

ただ、その"現実"はグローバル社会を俯瞰(ふかん)した視点から見たものではなく、とても小さな範囲の利害関係と鈍感さによってひどく歪(ゆが)められた"現実"であるように思うのです。

日露友好、日中友好が日本の安全と繁栄を後押しできた時代があったことは否定しません。しかし、その"友好"により生まれた相手国の利益や地政学的な利得が、当該地域を不安定化させる工作や国内での弾圧、不公正な施策に転用されたという側面もおそらくあるでしょう。

国民が主体的に考えるよりも、政治や大資本からの発信に従って動くことが最も合理的で、社会がうまくいく――そんな構造はいよいよ機能不全に陥っています。

自民党がカルトに依存していたように、日本社会がエネルギーや経済を非人道的な国家に依存し、便利なコンビニのように使ってきたこと。そして、個々の国民もそれを考えることを放棄して"お上"に全責任をかぶせる形で依存してきたこと。

それらの事実をまずは認め、依存体質からいかに生まれ変わっていけるかが、これからとても重要だと考えています。ただしもちろん、薬物と同様、依存状態から抜け出すには相応の苦しみが伴うことは言うまでもありません。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト、ミュージシャン。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(カンテレ)ほかメディア出演多数。富山県氷見市「きときと魚大使」。昨年はNHK大河ドラマ『青天を衝け』にも出演

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