『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、米大統領選への出馬を表明したトランプ元大統領について語る。

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アメリカのドナルド・トランプ前大統領(76歳)が先日、フロリダ州に所有する邸宅で2024年大統領選への出馬を表明しましたが、かつての勢いは感じられず精彩を欠いた印象が残りました。

「MAGA(Make America Great Again)」だけで押し切ることができた2016年当時のモメンタムを呼び戻し、かつそれを最後まで維持できるかが今後の鍵になるのでしょうが、状況的にはかなり厳しいと言わざるをえません。

理由のひとつは若年層への支持拡大がうまくいっていないこと。2016年からの"岩盤支持層"が着実に高齢化している一方、全米に約2400万人いる「Z世代」の有権者は投票へのモチベーションが高い上、小難しい話を抜きにしてもトランプ支持層とはあまりにも"ノリ"が違います。

『Y.M.C.A.』(1978年)などで知られるヴィレッジ・ピープルの曲が爆音で流れるスタジアム集会で、Z世代が自分たちの居場所を見つけるのは難しいでしょうし、この世代に選挙を通じてMAGAの世界観が広く浸透していくことはなかなか想像できません。

共和党内にも、トランプが保守層のかなりの部分を事実上乗っ取っていることに辟易している議員は多いと思われます。例えば、かつてトランプを熱烈に支持し、2020年大統領選を"不正選挙"だと主張する急先鋒のひとりだったモー・ブルックス下院議員は、2024年大統領選でのトランプ擁立に明確に反対。

「トランプは多くの無党派層や共和党員を遠ざける人物であると自ら証明してきた」とまで語っています。どの口が言うんだというツッコミはおいておくとして、自民党が批判を避けるために統一教会を切り捨てつつあるのと同様に、「賞味期限切れ」という判断なのでしょう。

今までトランプ人気をあおり、便乗してきた保守系メディアの変化も見過ごせません。今年11月の中間選挙前には『ウォール・ストリート・ジャーナル』や『ニューヨーク・ポスト』など、メディア王ルパート・マードック氏傘下の複数のメディアがトランプ批判を展開。

トランプ応援団の代表格だった『フォックス・ニュース』は全体としてはまだ様子見ですが、世代交代を呼びかけるコメンテーターも出始めています。「思想的にはトランプに近いが、より若くイメージのいい候補」を待望する意識は共和党内にも、保守系メディアにも根強くあるようです。

現時点でその有力候補のひとりとみられているのは、フロリダ州のロン・デサンティス知事(44歳)。

攻撃的な言動も目立つ一方、党内穏健派とも良好な関係を保ち、新型コロナ対策や移民対応の問題をめぐってはバイデン政権と舌戦を繰り広げるなど、共和党の新星として期待されている人物です。

仮に立候補した場合は、イェール大学とハーバード大学法科大学院で培ったディベート能力をフル活用し、共和党内の候補者選びの段階で若い有権者たちにアピールするべく、トランプの"老害性"を強調するでしょう。

ただし、共和党がこのまますんなりトランプをお払い箱にできる保証はなく、トランプ支持派と"離脱派"とで党や支持層が分裂するリスクもあります。トランプがどう動くのか、共和党が何をどう判断するのか。まだまだ不確定要素は多く、引き続き注視する必要がありそうです。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト、ミュージシャン。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(カンテレ)ほかメディア出演多数。富山県氷見市「きときと魚大使」。昨年はNHK大河ドラマ『青天を衝け』にも出演

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