8月12日、中国・天津(てんしん)市の港湾地区にある化学物質倉庫で、信じられないような大爆発事故が発生した。
当時の映像や証言を総合すると、爆発は2分間に4回続き、巨大な火柱とともにまるで核爆発のような“キノコ雲”が立ち上った。爆風は、付近に積み上げられた長さ約12mのコンテナを軽々と舞い上げ、1万台以上のクルマを焼き尽くし、なんと3㎞以上離れたマンションの窓や壁も吹き飛ばしたという。
“爆心地”に残った直径100m以上の巨大クレーターのような穴を見る限り、戦争による空爆などを含めても、史上まれに見るレベルの大爆発だった可能性もある。
爆発に至るまでの経緯は今も不明だが、その“エネルギー源”はだんだんわかってきたという。現地の事情に詳しいジャーナリストの程健軍(チェンジェンジュン)氏はこう語る。
「爆発した倉庫には、24tしか保管が許可されていないはずの猛毒のシアン化ナトリウム(青酸ソーダ)が700t、爆薬の材料ともなる硝酸アンモニウムが800t、ロケットの燃料となる硝酸カリウムが500t…など毒物や危険物が約40種、合計3千tも保管されていたといいます。一説には中国人民解放軍の化学兵器用毒物倉庫だったという情報もありますが、そのあたりの詳細は明らかではありません」
深刻な環境汚染を懸念する声が上がる中、中国政府と国営メディアはカゴに入ったウサギやニワトリを事故現場に持ち込み、「2時間放置しても問題なかった」と安全をアピールしたが、こんな茶番で安心できるわけがない。実際、爆心地から6㎞離れた川の水面が死んだ魚で埋め尽くされるなど、マトモに考えれば「安全」とは口が裂けても言えない状況だ。
中国人の反応は「ああ、またか」
そして、この「天津大爆発」がようやく鎮火しようとしていた22日20時50分、今度は山東省博市(さんとんしょうはくし)の化学工場で、またも巨大な爆発が起こった。周囲1㎞圏内の住宅の窓ガラスは割れ、約5㎞離れた建物でも揺れを感じたというから、こちらも相当な規模だ。
中国国営メディアによると、工場にはナイロンの原料となる有機化合物のアジポニトリルが大量にあったというが、ここで何を生産していたかは明らかでない。
こんな規模の爆発が相次ぐと、さすがに中国の人民たちも怒りと不安に震えているのでは?
「いえ…正直言って、周辺住民以外にとっては『ああ、またか』という感じでしょう。実は、今年4月にも福建省ショウ州市のパラキシレン(PX)工場で大きな爆発がありました。40㎞離れた場所からも爆発の炎が見え、50㎞離れた場所でも揺れを感じたといいますから、これも相当な規模の爆発です」(程氏)
50㎞というと、ざっくり東京・大手町から神奈川・江ノ島辺り…す、すごすぎる!
「パラキシレンはペットボトルや化学繊維の生産に必要なポリエステルの原料で、この工場は年間生産量80万tという世界最大級の工場でした。パラキシレンの爆発が、中間貯蔵用タンクに引火してあれだけの大爆発となったわけですが、同時に天文学的な量の有害物質が周囲にまき散らされています。
この工場はわずか2年前の7月にも同様の事故を起こしたばかりだったのですが…」
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■「週刊プレイボーイ」37号(8月31日発売)「チャイナボカン 中国ヤバすぎ猛毒施設最新リスト」より
(取材・文/近兼拓史)