「出たよポリコレ!」とうんざりの人もいるでしょう

東京藝大の学園祭実委が、女性を容姿で審査する"裏ミスコン"の中止を発表。アメリカのミスコンテストでも水着審査が廃止されるなど、女性を容姿で審査するコンテストの多くが見直されている。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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東京藝術大学の学園祭、藝祭。学園祭につきもののミスキャンパスコンテストはかわいい女子学生のコンテストではなく、お題に沿ってチームで「ミス藝大」という作品を作って出場するもの。登壇するのは男女どちらでも、人間でなくてもいいとか。

一方、やっぱり普通のミスコン見たいよね、という声を受けて企画されたのが「裏ミス藝大コンテスト」。しかし今どき女性を見た目で品評するコンテストはないだろうという批判を受けて中止が決定、藝祭実行委員会は反省の意を表明しました。

同様の批判を受けてアメリカの「ミス・アメリカ」コンテストも水着審査をやめると発表するなど、今や女性を画一的な美の基準で評価するのはやめよう、という流れになっていますね。

「出たよポリコレ!」とうんざりの人もいるでしょう。「インスタには水着の自撮りを上げまくってる女がいるし、みんな着飾ったり化粧したり美しさを競っているじゃないか」と納得がいかないかも。

あんなに人目を気にして褒められたがっている女たちを、しかも自分からコンテストに出ようなんていう目立ちたがりの女を見た目で評価して何が悪いの? 出場者も、注目されて女子アナになったりタレントになったりするんだからオイシイじゃんか。「中止しろ」なんてブスのやっかみだろ? 意識高い系の言いがかりじゃねえの? ...と、わざわざコメントを書き込まないまでも、ひそかに思っている男性は多そうです。

私がアナウンサーをしていた頃の同期はふたりともミスコン経験者でした。「こんな鋼(はがね)の自意識を持った人たちには絶対にかなわない」と思ったものです。ミスコンに出るには、よほど容姿と人気に自信があるか、お遊び気分で参加できる気持ちの余裕があるか、単におだてられやすい性格か、いずれにしても他人の評価を真に受けて振り回されたりしない精神力の持ち主でないと無理でしょう。

だから「出たいコが出るんだから別にいいんじゃねえの」には一理ある。一理あるけど、「いろんなコを比べて誰が一番かわいいか決めるの楽しいじゃん」というまなざしなのですよ問題は。

コンテストに出る女性はごく一部なのに「女は男に評価されたがってる」と勘違いする男のまあ多いこと。そんな欲望を上手にマネタイズしたアイドルビジネスも盛況のようだけど、すべての女が格付けされたがっているわけじゃないんですねえ。インスタに水着の自撮りを上げるのは個人の自由だし、どんな体形で生きるか何を着るか、化粧するかしないかも自由。なのに頼まれてもいないのに、自分がすべての女性の審査員のつもりでいるやからがいるのは困りものです。

まあそんなわけで私は「裏ミス藝大」の中止には、大きな拍手を送ります。

●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など