山陰線貨物列車が復活なら再登板が予想されるDD51形ディーゼル機関車。一番新しい車両でも車齢40年!

西日本豪雨の土砂災害で寸断されたJR西日本・山陽線。全線復旧は11月頃の見込みで、今のところ旅客は被害のなかった山陽新幹線による振り替え輸送が行なわれているが、もうひとつ問題となっているのが貨物輸送だ。

「山陽線はJR貨物の全輸送量の約3割が通過する大動脈。この区間の不通で、東名阪と九州を結ぶ物流が滞っています。現在はトラックや船を使って代行輸送をしていますが、貨物列車の運休分をカバーするには至っていません」(物流誌記者)

そんな緊急事態のなか、一部で復活を期待する声が高まっているのが日本海側を走る山陰線の迂回(うかい)ルートだ。風光明媚(めいび)な路線だが、単線で電化されておらず時間もかかることから、現在は貨物列車が走っていない。

JR貨物はこの路線で列車を走らせる免許を持っていないなど、いくつもの障害はあるものの、鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は復活の可能性をこう語る。

「山陰線は1995年の阪神・淡路大震災で東海道線が不通になった際にも、貨物列車の迂回ルートとして使われた実績があります。免許の問題についても、前回は特例で発行された経緯があるので、今回も可能だと思います。今回走らせるとすれば、福知山線-山陰線-山口線のルートが有力でしょう」

ただ、海岸沿いを走る山陰線は、急なカーブや小さなトンネルも多いが......。

「山陰線の多くの区間では、2000年代まで貨物列車が走っていました。出雲(いずも)市-江津(ごうつ)間は30年以上貨物が走っていませんが、ここもなんとかなると思います。線路の再点検や運転士の訓練をすることを考えると、復活が決まってから走りだすまでに必要な期間は2、3週間というところでしょう。

ただ、問題は今、山陰線で貨物を牽引(けんいん)できるディーゼル機関車がほとんどないこと。貨物列車の運行がなくなったことで、多くは廃車になってしまったのです。JR貨物の愛知機関区やJR西日本の網干(あぼし)総合車両所宮原支所から車両をかき集めるとして、DD51形が10両といったところでしょうか」(梅原氏)

とはいえ10両もあれば、かなりの本数の貨物列車を走らせられそうにも思えるが、梅原氏は迂回区間の距離の長さを指摘する。

「迂回ルートとなる兵庫県尼崎(あまがさき)から新山口まで600km以上の距離を、古い機関車が故障なく走れるか。また、山口線は勾配がきついため、機関車が2両必要です。列車のすれ違いも考慮すると、一日に走らせられるのは貨車10両の列車が1往復。うまくやりくりしても2往復が限度だと思います。最大26両の貨物列車が行き交う山陽線とは比べものになりません」

山陰線に貨物列車を走らせることは可能だが、山陽線と同じ働きは不可能。やはり"大動脈"の一刻も早い復旧が望まれる。