いろいろな文化を取り入れながら自分のものにしてきた歴史を大切にしたいですね

新元号は「令和」に。4月1日、首相官邸に姿を現した「元号に関する懇談会」の有識者メンバーのひとり、千葉商科大学教授の宮崎 緑氏の奇抜ないでたちが話題になった。ネットでは「卑弥呼」などの声も。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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新元号の令和。いろんな意見はあるけど、6割から7割の人が好感を持っているとのこと。今回は初めて『万葉集』から取った元号であることが注目されています。しかし発表後に漢籍にも由来が見いだせることが判明。日本文化で、中国の影響が一切ないものを探すのは難しいでしょう。いろいろな文化を取り入れながら自分のものにしてきた歴史を大切にしたいですね。

それにしても印象的だったのは、新元号の有識者懇談会のメンバーである宮崎 緑さんのお姿。斬新すぎる着物姿で、ネットでは「卑弥呼様」との異名が......。

私も個性的な装いに度肝を抜かれ、思わずネットを検索してしまいましたが、着物に詳しい方々はネットを使う習慣がないのか、あるいはもはや着物とは別のものだと判断してスルーしているのか、専門的な分析は見つかりませんでした。

宮崎さんの着物の装いを見て、故羽田 孜(つとむ)総理大臣が愛用していた省エネルックを思い出しました。羽田首相は省エネ時代にかなうビジネススタイルを実現しようと、半袖のジャケットを採用。膝下までの短いズボンを合わせた画像もあります。

伝統を重んじつつ、省エネを推進したいという強い思いが感じられるものの、デザインが強烈すぎて一般には広まらず、唯一無二のスタイルとして定着してしまいました。

宮崎 緑さんは奄美大島特産の伝統的な織物である大島紬(つむぎ)の普及に努めていることから、今回も白大島という高級な生地で仕立てた着物を着用したようです。

斬新さのポイントは5つ。まず、高級品でありながら格は普段着とされている紬を、公式な場で着たこと。次に、帯を締めていないこと。そして着物の袖口に色の違う生地をあしらっていること。さらに、袖なしの膝丈の羽織。そこに昔はやって最近また見るようになったフェイラーのバッグを合わせていること。

あえてスーツにたとえて説明すると、白大島で公式の場に、というのはホワイトデニム地のスーツで登場した感じ。でもこれは、大島紬が超高級品であることから最近ではアリとされつつあります。

しかし帯なしの着物に袖なし膝丈の羽織という組み合わせはかなり鮮烈で、たとえるなら上下一体化したホワイトデニムのスーツに黒い縦縞柄の袖なしトレンチコートを合わせたような個性的な装いです。そしてホワイトデニムスーツの袖口には、ブルーデニムの生地を継ぎ足してアクセントに。それに復刻版のマジソンスクエアガーデンのボストンバッグを持つ感じでしょうか。

宮崎 緑さんがキャスターだった昭和のそこはかとない残り香を漂わせつつ、伝統を自由に読み替えた次世代の着こなしに、新時代の到来を感じたのでした。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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